終章 愛しい人の行方 さっきまで海たちを乗せていた巨大な客船は、もうあんなに遠くまで行ってしまっている。けれどそれ以上離れていく様子はなく、きっと鎌先や春樹が船員に掛け合ってくれたであろうことは想像がついた。そのうち助けが来てくれるだろう。 海は疲れ切った様子の研磨を自分の身体に引き寄せる。大海原に主人公とヒロインが二人きり。映画やドラマではありがちなシチュエーションだが、まさか現実でそれを自分が体験することになるなんて思いもしなかった。 「信行くん、なんで……?」 いまにも消え入りそうな弱々しい声に対し、海は優しく微笑んでみせた。 「目の前で飛び込まれたのを、そのまま見捨てるなんてことはできないよ。大事な友達なら尚更ね。それに幸いにも俺は泳ぎが得意だから」 「あんなことをしたのに、おれのこと友達って言ってくれるの?」 「あれは研磨くんの意思じゃなかったんだろう? 悪いのは全部ハルモニアの闇とかいうやつだよ。研磨くんが人を撃ったのも、こうして海に飛び込むことになったのも、全部ね。だから研磨くんは何も気にしなくていいんだよ」 「信行くん……ありがとう」 研磨は単に運が悪かっただけだ。ハルモニアの闇は弱い心に住み着くと鎌先が言っていたけれど、弱い心を持っていること自体が悪いなんてことはないし、そんなものは人間誰だって持っている。 救命ボートのようなものはまだ見えない。幸いにも黒海の水は少し温かいくらいの温度で、浮いているだけで体力がすり減っていくようなことはなかった。それでもこんな海のど真ん中に放置され続けるのは気味が悪い。早く助けが来てくれないだろうか。 「この辺ってサメとかいないのかな?」 海の脅威といえば、一番に浮かんでくるのはサメである。いまのところ周囲にそれらしき影は見当たらないが、やつらがいつ襲ってくるかわからない。 「いるのはいるだろうけど、サメって基本的にはこっちから何もしなければ襲われることはないって聞くけど……」 「そうならいいんだけど、俺たちを魚か何かと間違えて襲ってきたりしないかな?」 「う〜ん……絶対ないとは言い切れないけど、じっとしているほうがたぶん安全だと思う」 それなら自分から船に向かって泳いでいくのはやめておこう。救助は必ず来てくれるだろうし、ならばわざわざ危ない橋を渡る必要もない。 そう決めた直後だった。 何かの気配を感じて海は船がいるほうとは反対側に顔を向けた。すると島も何もない景色の中に、黒い大きな影が浮かんでいるのを捉える。最初は鳥かと思ったけど、徐々にこちらに近づいてきているそれは、そんな可愛いサイズの生き物ではなかった。 「研磨くん、あれが何かわかる?」 海が指を指したほうに研磨も視線を向けて、その影が何であるか検分するようにじっと目を細める。 「もしかして、ドラゴン……?」 ◆◆◆ 「おい! さっさと助けに行けよ! 信たちが溺れちまうだろうが!」 船員たちの救命ボートを準備するスピードは決して遅くはなかった。むしろ手際よく進めているように見えたが、それでも鎌先は声を荒げる。焦りや不安、そして海に飛び込んでいった海と研磨に何もしてやれない自分の無力さに対する苛立ちが、そうさせていた。 鎌先は魔法を使えるが、あの二人を助けられるような都合のいい魔法は持ち合わせていなかった。一連の流れを本当にただ見ていることしかできなかったし、救助に関しても、こうして船員たちに任せるしかない。 (一喜の話、研磨が起きてるときにするべきじゃなかったか……) 研磨が海に飛び込んだのは、きっと一喜が自殺することでハルモニアの闇の声から逃げようとしたことを話したからだ。こうなった責任は自分にある。もしも海と研磨が無事じゃなかったら……悔しさがせり上げてきて思わず壁に拳を叩きつける。 「靖志!」 そんな鎌先の元に駆けてきたのは、海や研磨と親しい春樹だった。 「春樹、マジでごめんな。オレのせいでこんなことになっちまって……」 「別に靖志のせいじゃねえだろ。悪いのは全部ハルモニアの闇だ。つーか、そんなことはいまはいいんだよ。それより、甲板に来て。なんか黒い影みてえなのがこっちに近づいてきてるんだ」 「黒い影?」 「ああ。その上に人が乗ってるのが見える。顔はわかんねえけど、もしかしたら信と研磨かもしれないよ! 二人が流されていったほうから来てるから」 黒い影ってなんだ? ここでその正体を考えるよりも実物を見たほうが早いと思って、鎌先は甲板に駆けていく。 「ほら、あそこ!」 春樹が親切に指を差して教えてくれたが、そうせずともすぐに見つけられるほどに、その黒い影ははっきりと見て取れた。青い空に、海の暗さに負けないほどの暗い影がぽつりと浮かんでいる。もう船からずいぶんと近い。姿かたちをはっきりと確かめることができるほどだった。 艶のある黒色をした翼に、同じ色をしたたくましい躰。短い脚と鉤爪のついた太い腕、そして長い首の先には恐竜のような顔がある。こちらを見下ろす瞳は鮮血を彷彿とさせる赤色だ。 「黒竜……」 そうして鎌先は呆然となりながら、近づいてきていた黒い影の正体を呟いた。 黒竜の背には三人の人間が乗っており、そのうちの二人は海と春樹だ。もう一人は二人とそう歳が変わらなさそうな青年で、どうやら彼が黒竜を操っているようだった。 黒竜の姿にも、そしてそれを操る青年の顔にも鎌先は見覚えがあった。遠い昔、子供の頃に彼と時々遊んでいたときのことをふと思い出す。いつも強気で、頭もよく、同世代の他の友人たちに比べてどこか達観したところのあった彼。そして、この世に二人しか存在しない召喚士の片割れ。 「一……岩泉一」 懐かしいその名前を鎌先は静かに口ずさんだ。 甲板の広い部分で再会を喜ぶ海、春樹、研磨の輪から離れ、鎌先は船に降り立った黒竜とその主に歩み寄る。近づいてくる気配に気づいたのか、黒竜の主はこちらを振り返り、目が合うと心底驚いたような顔をした。 「一……だよな?」 「お前……ひょっとして靖志か!?」 「おう。すげえ久しぶりだな」 目の前に立つ旧友は、最後に見たときよりもずいぶんと大人になっている。当たり前だ。だってあれからもう六年も歳月が過ぎている。大人になるには十分すぎるほどの時間だ。 「すっかり大人の男だな。つーか、ますます親父さんに似てきたな、お前」 意地悪げなニュアンスではなく、むしろ感心したような声で岩泉はそう言った。確かに元々父親似の顔立ちだと言われていたし、鏡を見ながら自分でも似ていると思うことがしばしばある。 「親父……つーか、オレの家族たちは元気してんのか?」 「おう。みんな至って健康だぜ。けどお袋さんと妹はいつもお前のこと心配してた。お前が出て行った日なんかお袋さんはパニクってたし、妹は泣きじゃくってて大変だったんだぞ」 書置きだけを残して家を出たあの日。鎌先は出発直前になんだか名残惜しくなって、用もないのに母親と妹とそれぞれ会話をした。その内容はもう思い出せないけれど、きっと忘れてしまう程度の他愛のない会話だったのだろう。 父親とは何も話さないで別れたが、決して嫌いだったわけじゃない。むしろ鎌先は自分の家族が好きだったし、家を飛び出したのも家庭内での不和などが原因ではなかった。 「この六年間いったいどこにいたんだ? 全然情報が入ってこなかったぞ」 「ずっと蘭華のアカシア村ってとこにいたぜ? 鉄鋼場で働きながら細々と暮らしてた」 「連絡の一つくらい寄こせよな。結局、お前の親父さんが、可愛い息子には旅をさせろっつって事態を収めたけど、そうじゃなけりゃあ国際的に捜索隊を組んで捜させてたと思うぜ」 辺境の地にいたとはいえ、鎌先を見つける手段はいくらでもあったはずだ。それでも誰も捜しに来なかったのは、やはり父親の意思があったからのようだ。元々父親は鎌先に何事も自由にさせることが多かった。それは決して放任主義なのではなく、自分で考えて選択することの大切さを教えていたのだと、少し大人になったいまなら理解できる。 「さっき海で拾ったやつらに聞いたけど、この船って聖彼行きなんだろ? これに乗ってるってことは、お前もついに聖彼に帰る気になったのか?」 「……聖彼には帰るし、そこで暮らすつもりでいる。けど実家には帰らねえよ」 「少しくらい家族に顔見せてやれよ。いい加減お袋さんや妹を安心させてやれよな。親父さんだって、お前をとっ捕まえて家に閉じ込めておこうなんて考えてねえだろうし」 「……考えとく」 本音を言えば、鎌先だって家族の顔を見たかった。尊敬する父、優しくて、でもときには厳しい母、そして兄想いの元気な妹。一緒にいるときはそれほど感じなかったけれど、離れてみるとその大切さや温かさに気づかされた。 「つーか、なんで今更聖彼に帰る気になったんだ? やっぱ家族が恋しいとか?」 「はずれじゃねえけど、でもそこが根本的な理由ってわけじゃねえ。実は家の近くでイクシオン人を拾ってよ、そいつを聖彼に届けるところなんだ。ほら、お前がさっき海で拾ったうちの、坊主頭のほうだよ」 「ああ、あいつか。それにしても奇遇だな。実は俺もイクシオン人絡みで動いてたんだよ」 「そうなのか? そういえばお前っていま聖彼の大使だったよな? お……聖彼王の命令なのか?」 「そういうことになる。こっちにやって来たイクシオン人が、実は聖彼王の大事な客人なんだよ。魔物の森に落ちたのを迎えに行ってたところだ」 「イクシオン人の知り合いなんていたんだな……。まあ、あいつならあり得そうだけどよ。で、その客人とやらはどうしたんだ? もう聖彼に送って来たのか?」 「いや、途中で落っことした」 「はあ!?」 澄ました顔でとんでもないことを口走った岩泉に、鎌先はオーバーリアクションと言われそうなほどの勢いで驚いた。 「いろいろトラブルに巻き込まれてよ。そいつも俺も賢太郎も、みんなまとめて空から落ちた」 「そいつ、死んじまったのか?」 「いや、生きてる。そいつ、ちょっと特殊な人間でよ。俺はそいつのいる場所を感じ取ることができるんだ。どうやら自力で聖彼に着いたみてえだ」 「そいつもお前もすげえ生命力だな……。まあ、お前は召喚士だから無事で済んだんだろうけど」 「俺は決して無事ってわけじゃなかったけどな。さすがに怪我がひどくて、こうして動けるようになるまで一週間くらいかかっちまった」 「普通の人間は空から落ちたら即死だぜ」 召喚士の身体は普通の人間とは違い、即死レベルの怪我を負っても治癒することができるのだと、昔岩泉本人から聞いた覚えがある。だから彼がこうしてピンピンしていることは納得だが、一緒に空から落ちたというイクシオン人が生きているというのは衝撃的だ。ひょっとしてそういう意味においての“特殊な人間”ということなのだろうか? 「そのイクシオン人、いったい何者なんだ? どういう理由で聖彼王に呼ばれてるんだよ?」 「それは教えられねえな。一応シークレットオーダーってやつだから。あ、なかなかいい男だったぜ? 歳は俺らと同じくらいで、短髪でいかにも硬派で初心そうな感じだった」 「同じくらいの歳……」 いまの岩泉の言葉に何か引っかかるものを感じて、鎌先はそれが何なのか突き止めるために自分の記憶を探る。硬派で初心そう……違う、これは関係ない。同じくらいの歳、短髪のイクシオン人……岩泉が最近迎えに行ったということは、そのイクシオン人がハルモニアに来たのもおそらく最近のこと……。 ふと向こうのほうで話している海を見る。海も鎌先たちと同い歳で、最近ハルモニアに来たイクシオン人だ。海を家の近くで拾った日、彼は言ってなかっただろうか? 『俺と一緒に、青年が倒れてませんでしたか? 歳は俺と同じくらいで、短髪です』 答えとなるフレーズを、鎌先は記憶の中から引き当てた。海の捜すその人物の名前は確か…… 「大地……そうだ、大地だ。一、お前が拾ったイクシオン人の名前、大地じゃなかったか?」 「なんでお前が大地を知ってるんだよ? って、まさか!?」 岩泉はハッとしたように海のほうに視線を転じた。 「海! 大地が、一緒に時空の狭間に巻き込まれたクラスメイトがいるっつってた。それがあいつなのか!?」 「どうやらそうみてえだ。すげえ偶然だな」 自分がイクシオン人を拾ったと思ったら、かつての友人もまた離れた地でイクシオン人を拾っていた。そのイクシオン人たちには繋がりがあり、そして拾った側にもまた繋がりがあり、こうして船の上で偶然の再会を果たす。あまりの偶然の連続に、もはや奇跡のようだと鎌先は思った。 「その大地ってやつ、生きてて聖彼にいるっつったよな?」 「ああ。方角的にも距離感的にも間違いねえと思う」 「なら信に教えてやらねえと。あいつ、大地のことすげえ心配してたからさ」 「空から落ちたっつーのは内緒にしとけよ」 「んなこと言えるかよ馬鹿」 無事でいて、聖彼に行けば逢えるということを教えてやれば海はとても喜ぶだろう。海にとって大地という男が特別な存在だということは、彼の言葉尻や話すときの表情でなんとなくわかった。口にこそ出すことはなかったが、きっと毎日想い人のことを心配していたことだろう。 「あ、ちょっと待てよ」 海のところに戻ろうとしていた鎌先を、岩泉が腕を掴んで引き留める。 「海たちを拾ってからここに着くまでに聞いたんだけど、あのプリン頭のやつ、ハルモニアの闇に憑りつかれてたんだろ?」 「ああ。二人から聞いたのか?」 「まあ、な。二人には言ったけど、プリン頭にはもうハルモニアの闇は憑いてねえから安心しろよ。お前なら知ってると思うけど、ハルモニアの闇は一度入ったことのある人間には二度と入れねえ。だからプリン頭のことはとりあえず安心していいだろうよ」 「そっか。とりあえずの心配事は一つ減ったわ。サンキュー」 「それと……一喜のことだけどさ」 いきなり飛び出した昔の友人――いや、かつてひっそりと恋していた相手の名前に、鎌先の胸はにわかにざわついた。それが表情に出ないよう気をつけながら、「あいつがどうかしたのか?」と訊ねる。 「あいつ、来年結婚するらしいぜ」 「はっ!?」 「びっくりだよな。まだ俺らと同じ十八だっつーのに、気の早いこった。式にお前を呼びたいらしいけど、お前がどこにいるのかわかんねえから困ってるってこの間言われたんだよ。お前、聖彼に帰るなら一喜にも会ってやれよ。あいつだってお前のこと心配してたんだからな」 「あ、うん……考えとく」 「考えとくじゃなくて、絶対会え。お前が思ってる以上に、お前のこと心配してた人間はたくさんいるんだよ。まったく、人騒がせなやつだ」 「申し訳ありません……」 「急にしおらしくなるなよ!」 ひっそりと恋をして、そしていまひっそりとその恋を失った。叶う恋だとは思っていなかったし、その恋心も時間に薄められてずいぶんと希薄なものになっていたから、それほどショックではなかった。嬉しいような、それでいてどこか寂しいような複雑な気持ちを抱きながら、鎌先は船の進む先をじっと見据える。 聖彼王国――鎌先の祖国であり、大切な存在や思い出を置きっ放しにしてきた地に、鎌先は六年ぶりに足を踏み入れる。 ◆◆◆ 自室に帰ってすぐに、海はベッドの上にうつ伏せで倒れ込んだ。次に息を吐き出した瞬間に、閉じた瞳から涙が溢れ出る。それは決して悲しいから流れる涙ではない。嬉しさと安心からくる、温かい涙だ。 (よかった……澤村くん、生きてた) 黒海のど真ん中に取り残された海と研磨を助けてくれた岩泉が、大地の所在を知っていた。イクシオン人は聖彼王国を目指す、という鎌先の予想は当たっていたのだ。つまりこの船に乗ったことも間違いではなった。 澤村が無事でいると信じていた反面で、もしかしたら何か危険な目に遭っているかもしれないと、心配する気持ちも常にまとわりついていた。だから無事だと聞いて心底安心したし、聖彼で再会できるとわかって嬉しくなった。 (早く逢いたいな……) そう思っているうちに、海は眠りの世界に堕ちていた。 『海くん』 もう二週間以上も聞いていない声が――いま誰の声よりも聴きたいその声が、海を呼んでいた。声に導かれるようにして覚醒すると、眩い光が開いた目を刺激する。 「澤村くん……?」 そこは文字どおり、光の世界だった。どこを見渡しても白い輝きに包まれていて、どこか温かいような、安心するような優しい微風が吹いている。 人の気配を感じて振り返ると、そこには海が毎日のように頭の中に思い描いていた青年の姿があった。顔立ちは上品だが中性的な要素はなく、純和風美男という言葉がしっくりくる。短く切りそろえられた髪型は、誠実で頼もしい印象のその顔によく似合っていた。 「やっぱり澤村くんだ」 『うん、俺だよ。すごく久しぶりだね』 「そうだね。もう何年も逢ってないような気がするよ」 顔を見ただけで、声を聞いただけで、こんなにも温かな気持ちになる相手を海は他に知らない。生まれて初めて出逢った、心の底から恋をした相手だ。 『でも、もうすぐ逢えるよ。聖彼に来れば絶対逢える』 聖彼王国だけが、海にとってこの異世界で見つけたたった一つの希望だった。その希望を与えてくれた鎌先や岩泉には本当に感謝している。 『俺はもう聖彼に着いてるから、海くんが来るのを待ってるね』 「うん。必ず逢いに行くから待ってて。あ、そうだ。逢ったら澤村くんに渡したいものがあるんだ。気に入ってもらえるかどうかわからないけど、受け取ってほしい」 『なんだろう? いま見せてもらっちゃ駄目なのか?』 「いま手元にないんだ。それに、夢の中じゃなくてちゃんと直接渡したい。だからそのときまでのお楽しみってことで」 『わかった。すごく楽しみだな〜』 優しく微笑む顔は、海が彼の持ついろんな表情の中で一番好きなそれだ。目にするたびにドキッと胸が高鳴って、まるで虜にされたようにいつも釘づけになった。 『じゃあそろそろ行くね。よい船旅を』 「ありがとう。澤村くんも俺が行くまでのんびりしててね」 彼が踵を返し、光の中に歩き去っていく。もうこの空間のどこにも彼の気配を感じなかったが、海はそれを寂しいとは感じなかった。だってもうすぐ彼に逢える。ここじゃなくて、現実世界で再会できると確信しているからだ。 大切な絆が一気に手繰り寄せられていくのを、海はしっかりと感じていた。 |