賑やかに笑うバレー部員たちを眺めながら、俺こと直井学は酒に酔って頭がぼうっとし始めたのを自覚した。
 今日は引退する三年生たちの送別会だ。俺が母校である音駒高校のバレー部コーチに就任したのが三年前。ちょうど今の三年生たちが入部するのと同じタイミングで俺も指導の一端を預かることになり、だからこそ引退する彼らには思い入れが強かった。一から――といっても三人とも経験者ではあったけど――面倒を看てきた彼らが部からいなくなってしまうことを、こうしてひっそりと一人寂しく感じている。

「――コーチ」

 賑やかな輪の中から一人が抜け出してきて、俺に声をかけてくる。坊主頭に精悍で人のよさが窺える顔立ち――引退する三年生のうちの一人、海信行だ。

「もう結構酔ってる顔してますね」

 海は苦笑しながら俺の隣に座った。

「飲ます人がいるからな。頭クラクラして堪らん……」
「まったく、監督は……」

 その俺に酒を飲ませた張本人――監督の猫又さんは向こうのほうでまだ楽しそうに酒を飲んでいる。手元のそれはたぶん日本酒だ。

「これもすっかり見慣れた光景ですけど、見られるのも今日が最後なんですね。そう思うと少し寂しい気がします」

 海がクリっとした瞳に少しだけ寂しげな色を浮かべながらそう言った。引退していく三年生たちにとっては確かにこれがこのバレー部での最後の宴となる。そう思うと俺もしんみりしちまうな〜。

「海は大学に行くんだったよな?」
「はい。一応試験には合格しているので、あとは高校を卒業して入学式を待つだけになります」
「バレーはもうやらないんだっけか?」
「サークルレベルでならやるかもしれませんが、本格的に打ち込むことはもうない予定です」
「そうか……。少しもったいないな〜」

 海は特別目立つ選手じゃなかったが、一つのステータスにパラメーターが偏りがちな音駒バレー部員の中では珍しく攻守のバランスが取れた選手だった。冷静な判断力と安定感を持ち、春高でもこいつのそれに救われた場面は決して少なくなかった。

「コーチはこれからもここのコーチなんですよね?」
「そうだな。転勤でもない限りは続けていくつもりだ」
「ちなみに結婚の予定は?」

 いきなり出てきたパワーワードに俺は飲みかけのチューハイを噴き出しそうになる。

「い、いきなりなんだよ、結婚って……」
「そういう話、全然聞いたことないな〜と思って」

 確かに海とそういう話はしたことがない。他の三年生二人はそういうプライベートな部分も根掘り葉掘り訊いてくるが、海とはバレーに関すること以外の雑談をした記憶がなかった。こうして二人きりになるのでさえ、もしかしたら初めてのことかもしれない。

「……結婚の予定なんかねえよ。そもそも今は付き合ってる相手もいないしな」
「えっ、そうなんですか? 意外だな〜。コーチってカッコイイからモテそうなのに」
「そ、そうか?」

 そういう褒められ方をすることなんて滅多にないから、たとえ相手が同じ男でもちょっと嬉しい。

「そういう海はどうなんだ? 実は彼女がいたりしないのか?」

 海は全体的に地味だが顔立ち自体は整っているし、性格も優しくて頼りになるからこいつを好きになる女がいても不思議じゃない。

「残念ながら俺もいませんね。でも実は、こう見えて女の子に告白されたことはあるんですよ」
「そうなのか!?」
「はい。高校に上がってから三人ほど」
「三人も!?」

 俺が高校生の頃なんか一人も告白して来てくれなかったぞ。俺が告白してフラれるパターンはあったけど。

「まあ全部断っちゃったんですけどね。相手を選べるような立場じゃないかもしれないけど、全然タイプじゃなかったし、部活で忙しかったから」
「もったいねえな〜。一人くらい付き合って、童貞卒業させてもらえばよかったのに」

 酒のせいか、普段なら海に言えないような言葉も今はスルッと出てくる。

「お前も男なんだし、そういうことにも興味あるだろ?」
「そりゃあもちろん。オナニーだってしますし」
「……爽やかな顔でオナニーとか言ってんじゃねえよ」

 海だって男子高校生だからしてて当然だが、この人畜無害そうな顔からはどうもそういう行為をしているのが想像できない。

「コーチだってするでしょう?」
「そりゃするが、さすがに毎日ってことはなくなったな。海でもやっぱり猿みたいに毎日してるのか?」
「そうですね。たまに一日一回じゃ収まりつかないときもあって、五回しちゃった日もあります」
「意外と性欲強いんだな、お前……」

 今まで知らなかった海の一面が次々と明らかになっていくな。でもまあ、高校生らしいといえばらしいのかもしれない。

「コーチが童貞を卒業したのっていつなんですか?」
「大学入って最初の夏休みのときだったぞ。生まれて初めて彼女ができてすげえ浮かれてたんだけど、そんな中どうしたらエッチに持ち込めるんだろうって一人悩んでて……そうしたら彼女のほうから誘ってくれたんだ」

 初体験のときのことは今もよく憶えてる。すげえ緊張してたけど彼女がリードしてくれたおかげで最後まで上手くできて、最高に幸せで気持ちいい夜を過ごしたんだった。

「俺、聞きたいです。女の人とするときどう気持ちよかったのかとか、どういう感触がするのかとか」
「今日の海は下のほうでえらく積極的じゃねえか」
「人に訊く機会なんてなかなかなかったもので。他に訊ける人もいませんから」
「よし、じゃあ童貞のお前にじっくり聞かせてやるよ。女の身体がどんなものかっていうのをな」

 素面じゃこんな話絶対にできないが、今は酒が回ってて最高に気分がいいし、こうして海とゆっくり話すのも最後になるかもしれないと思うと、いろいろ話してやりたかった。
 勢いをつけるためにまた一口酒を飲んで、俺は過去の経験を語り始めた。



 それから何がどうなったのかよく憶えてねえ。先輩風吹かせて海に下のことをいろいろ話したのは断片的に思い出せるが、話しながらあの酒に酔ったとき独特のフワッとした感覚に意識を蝕まれていって、最後には寝ちまったような気がする。
 今もまだ眠りの中にいて、俺は久々に初めて付き合った彼女のことを夢に見ていた。それも初めてセックスをしたときのことを。たぶん海にそのことをじっくり話したからだろうな〜。
夢の中ではドキドキしながらおっぱいを揉んだときの感触とか、なかなか上手く挿入できなくて焦ったときの心境とかまでもがリアルに再現されていた。そうそう、見兼ねた彼女が上になってくれて、それで無事に挿入できたんだった。全部入り切ったときの達成感と腰を動かしたときの快感はすごかったっけな〜。
ああ、やべえ。このままだと夢精しちまいそうだ。まあいいけどな。夢でもこんなに気持ちいいなら最後までさせてくれ。朝起きたら下着ん中が大変なことになってたって構わん。
 そう思っていたが、与えられる快感があまりにも強すぎて俺は徐々に夢から覚めていった。俺の上に跨った彼女の姿がゆっくりと消えていったかと思うと目の前が真っ暗になり、それが目を閉じているせいだと何となく理解する。
 あれ? 眠りから覚めたはずなのにまだあの快感が続いてるぞ? 俺のチンポは柔らかくて熱い何かに包まれていて、それが規則的に動いて俺に快感を与えてくれている。いったい俺の身に何が起こってるんだ? もしかして酔った勢いで行きつけのピンサロにでも来てるのか? ま、まさか海を連れて来たりしてねえよな!? そんなことになっていたら大事だ。
 俺はおそるおそる目を開いていく。辺りは薄暗かったが、天井を見ただけで俺の部屋じゃないっていうのはすぐにわかった。ピンサロでもなさそうだな。もしそうならもっと天井高いだろうし。
それから自分がベッドの上に仰向けになっていて、寝転がった俺の腰に誰かが跨っているのが目に映った。そいつは俺の勃起したチンポを自分の中に受入れ、いやらしく腰をグラインドさせている。繋がった部分の上のほうでは腰の動きに合わせてもう一本のチンポが揺れていて、先端からは涎みたいに我慢汁を垂れさせていた。

いや、ちょっと待て! もう一本のチンポってどういうことだ!? 俺の以外にこの場にチンポがあるわけねえだろ!
 
 だけど改めて股間の辺りを確かめてみても、やっぱり俺のチンポはそいつの中に入っていて、つまり目の前で揺れているそれが別人のもの……っつーか、俺の上で腰を振っているやつのものってことになる。
 俺はゆっくりと視線を上に動かしていく。揺れるチンポの上には少し割れた腹筋、その更に上に女にあるはずの、男の夢が詰まった膨らみは……ない。そりゃつるぺったんな女だっているだろうけど、この逞しささえも感じる厚い胸板は、明らかに女のものじゃなかった。
 変な焦りを覚えつつ、俺は思い切ってそいつの顔を確認する。最初に目に入ったのは綺麗に刈り揃えられた坊主頭だ。眉はやや太めだが形は綺麗に整えられている。その下の瞳はクリっとしていて、筋の通った鼻梁を辿っていくと厚い唇に行き着いた。顔立ちは堀が深く、坊主なのも相まって全体的に男らしく仕上がっている。

「海っ、お前っ、何してんだよっ!?」

 動揺のあまり声が裏返りそうになりながら、俺は自分の股間に跨り、淫らに腰を振る男――海信行に呼びかける。

「あ、起きたんですね、コーチ」

 目が合った海は笑った。いつもの爽やかで優しげなそれとは違って、挑戦的でどこか色気を感じさせる笑顔だった。

「見てのとおり、コーチのチンポを味見させてもらってるんです」
「何当たり前のこと訊いてんだ、みたいな調子で言うんじゃねえ!」

 俺は海を退かせるために手を動かそうとしたが、自分の顔の辺りまで持ってきたところでそれ以上動かせなかった。見れば、それぞれの手首が紐のようなもので拘束されている。足も同じような状態で、軽く曲げることはできるがそれだけだった。

「おいっ、どけよ海っ」
「嫌ですよ。コーチのチンポ、すごくいいところに当たるから放したくありません……あっ」

 腰を振りながら海は甘さを孕んだ声を上げる。そんな声も、そして声を上げるときに見せる切なげな表情も、普段の海とはまるで別人みたいだった。

「コーチだって気持ちいいでしょう? こんなに硬くして……俺のケツはそんなにいいですか?」
「う、うるせえよっ! とりあえず一回腰止めろよっ」

 騎乗位くらい女にいくらでもしてもらったことあるし、初めて挿入したときだってこの体位だったけど、過去のそれが霞んでしまうくらい、海は腰の動かし方が上手かった。気を抜いたらすぐにイっちまいそうだ。
 海は俺の指示したとおりに一度腰を上下するのを止めてくれる。どうやらこっちの話を聞く気はあるようだ。

「お前……なんでこんなことを? つーかここどこだ?」
「ここは市内のラブホですよ。どうしてこういうことになっているかというと、単純に俺がコーチのチンポ欲しくて我慢できなかったからです」
「チンポが欲しいって……お前ゲイだったのか!?」
「まあ、そういうことですね」

 海は笑う。さっきまでの妙な色気は引っ込み、いつものこいつらしい笑顔だった。

「コーチのことは合宿の風呂で裸を見て以来ずっと狙ってたんですよね。いいチンポ持ってるし、身体も筋肉質でエロかったし、顔も俺のタイプでしたから」
「いや、だからってなんでこんなっ」
「こうでもしないとコーチとセックスなんてできないでしょう? それともコーチは俺が言葉で誘ったら乗ってきてくれたんですか?」
「それはなかっただろうけど……」

 相手が女ならまだしも、こいつは同じ男でしかも高校生で俺がコーチをしているバレー部の教え子だ。拒否する理由しかない。

「でもだからって、こんなの逆レイプだろ……。俺の気持ちは無視か?」
「大丈夫です。コーチのこと、今まで相手にしてきた女の人たちよりもずっと気持ちよくしますから」
「そういうこと言ってんじゃねえよ! 俺はホモじゃねえから男となんてしたくねえ!」
「そう言いながらもチンポはビンビンなままじゃないですか」
「それは物理的な刺激でそうなってるんであって、お前に興奮してるわけじゃねえ!」

 俺がそう怒鳴ると海は一瞬だけ傷付いたような顔をしたが、またすぐに笑顔に戻った。

「別に俺に興奮してくれなくていいですよ。ただコーチはチンポ勃たせてくれればいいんです。それに、気持ちいいのは気持ちいいんでしょう?」
「た、確かにそうだが……」
「じゃあそれでいいじゃないですか。俺も気持ちいいし、コーチも気持ちいい。何の問題があると?」
「お前なっ……」

 本当に今目の前にいるのはあの海なんだろうか? 穏やかで行儀がよくて、真面目でエロいことなんて何も知らない、興味もなさそう――そんないつもの海からは想像もできなかったような言葉が、さっきからその厚い唇から放たれている。

「セックスに愛情なんてなくてもいいんですよ。お互いが気持ちよければそれでいいんです。コーチがピンサロで処理してるのと同じですね」
「あれはある意味合意の上だろ! 俺は男となんかしたくねえよ!」
「往生際が悪いな〜。ほら、もうこうして根元まで俺の中に入っちゃってるんだから、ここでやめようが続けようが変わらないでしょう? なら最後までしたほうがスッキリできてお得だと思うんです」
「お前は得かもしれねえが、俺には何も得なんかねえよ!」
「あーもううるさいな〜。どうせコーチは拘束されてて抵抗できないんだし、話はこの辺で終わりにして続きをしましょう。大人しく俺の中で気持ちよくなっててください」

 止まっていた腰のピストンがまたゆっくりと再開された。熱を持った襞に先端の気持ちいい部分が擦れ、強い快感を覚えるそれが一定のリズムで繰り返される。

「おい、海っ」
「あっ…やっぱコーチのチンポ気持ちいいっ」

 深く入ると中がギュッと締まり、浅い部分まで引き抜かれると少し緩くなる。海が意図的にそうしているのか、それとも自然とそうなるのかはわからないが、その強弱を織り交ぜたピストンは俺まで喘ぎそうになってしまうくらい気持ちいい。
絶対に男の尻で気持ちよくなりたくない。ましてやイかされるなんてとんでもない。そう思いながら歯を食いしばって快感の波をやり過ごそうとするのに、海のケツはそれを許してはくれなかった。精のすべてをよこせと言わんばかりに強く吸い付き、絶妙な腰つきで俺を追い詰めてくる。

「ああっ…あんっ……あっ、あっ」

 今までの女ならある程度腰を振れば疲れて俺に主導権を返してくれるところだが、海は違った。リズムを落とすことなく腰を動かし続け、気持ちよさそうに喘いでいる。

「あっ……コーチっ」

 俺のもそうだが、海のチンポもさっきからずっと勃ちっ放しだ。腰の動きに合わせて上下に揺れ、我慢汁を俺の腹に散らしている。
うっとりとした表情も、厚い唇の隙間から放たれる声も、同じ男なのに妙な色気があった。女のそれとは明らかに違うが、それでも確かに性的な興奮を呷るものが海からは感じられる。

「コーチっ……気持ちいいっ、ああっ」

 海が腰の動きを速くする。まだそんな余裕があったのかと驚きつつ、与えられる快感も増して俺は更に追い詰められていくのを感じた。
 このままだとこいつにイかされてしまう。男としてのプライドがそれを躊躇わせる半面で、このままぶっ放して楽になりたいという気持ちも俺の中に湧いてきていた。きっとこいつの中で射精するのはさぞ気持ちいいんだろう。俺のことを締め付けて放さないケツの穴をもっと激しく犯し、中を俺の精子で満たしてやりたい。
 一度そう思い始めるともう駄目だった。理性や我慢は一瞬にして吹き飛び、ただただ射精したくて堪らなくなる。
 少しだけ動かせそうな足を動かして膝を曲げ、手でベッドの縁を強く掴んで下半身に力を入れる。そうすると腰が動かせるようになり、海のピストンよりも速いスピードで後ろを突き始めた。

「あっ! すごっ……ああっ、あっ!」

 海の喘ぎ声が大きくなる。どうやら自分で動くよりも気持ちいいみたいだ。その反応に俺も気をよくして、更に激しく突き上げてやる。

「あっ、あっ、あっ…!」

 海は俺の上に身体を重ねてくる。手がぎりぎり海の肩まで届きそうだったから、俺は両方のそれを掴んで膝に力を入れ、海のケツに腰を叩き付けた。

「このままイっていいのか?」
「はいっ……あっ、中、出してくださいっ」

 懇願するようにそう言われ、俺は遠慮なく奥に射し入れたまま射精した。
中に出したという行為に、俺は妙な達成感と満足感を覚えていた。女相手には許されなかったそれも、男相手だと妊娠のリスクがないから許されるのか。いや、もちろん病気のリスクもあるだろうが、そこに目を瞑るならいくらでも生で中に出していいのかと思うと、男同士ってのはちょっと得なのかもしれない。
って、いやいやいや! 得ってなんだ! ゲイじゃない俺が男とヤったって得なんてするわけねえだろ! そりゃ海のケツは気持ちよかったけど……。
さっきまで出したい欲求でいっぱいだった頭が、一発出して徐々に冷静になってくる。俺、男と何やってんだよ。しかも高校生相手とか……海が強引に始めたとは言え、俺のほうが普通に犯罪じゃねえか……。

「少し休憩しましょうか」

 海はそう言ったが、繋がりを解こうとはしなかった。

「休憩って……まだやるつもりなのか!? 俺イったんだぞ!?」
「俺はまだイってないし、全然物足りないので。今のはちょっと味見しただけですよ」
「もう勃たねえっての!」

 さっきは寝てる間に海に勃たされて跨られていたわけだが、勃起が一回収まってしまえば、相手を男だと認識している以上もう一度勃たつことはないだろう。

「ああ、大丈夫ですよ。寝る前にコーチには勃起薬飲ませておいたんで」
「なんだって!?」
「ほら、現に今だってイったばかりなのにまだビンビンですよ?」

 確かに海の中に入った俺のチンポは萎えずに硬くなったままだ。抜かずの二回戦も余裕でできてしまいそうな感じだった。

「一回挿れて中に出しちゃったんだから、もう何回やっても一緒でしょう? それにコーチだって騎乗位以外の体位を試してみたいんじゃないですか?」
「別に試したくねえよ! 何だって男で試さなくちゃいけねえんだ!」
「あ、もしかして」

 海は意地の悪い笑みを浮かべる。今日のこいつはホント、今まで全然見せたことのなかった表情を見せやがるな。

「自分のテクニックに自信がないんですか?」
「……何だと?」

 聞き捨てならない台詞に、俺は俄かに苛立ちを感じた。

「口ではあれだけ相手を何度もイかせられるとか、いいとこに当てられるとか言ってたけど、あれは嘘だったんですね? だからこの続きはしたくないと?」
「そういうことじゃねえよっ」
「でも俺をイかせられる自信はないんでしょう? つまりこの勝負、コーチの負けってことですね。いや、不戦敗?」

 いや、いつから勝負の話になったんだよ……。だけど俺の心は海の口から放たれる“負け”という言葉にひどく反応していた。年下の、しかもまだ高校生のガキに馬鹿にされたみたいで腹が立つ。俺がやってるの見たことあるわけでもねえのに勝手に俺の負けを決めてんじゃねえ。

「……わかった。その喧嘩、買ってやるよ」

 相手は男だが、ここで逃げれば負けを認めるみたいで嫌だった。それに海がさっき言ったとおり、一回やっちまったならもう何回やったって同じだ。そこに拘るのはもうやめにした。

「その代わり、途中でやめてくださいって泣いてもやめねえからな?」
「俺にそう言わせられるだけのテクがあると信じたいですね」
「生意気言ってんじゃねえ。とりあえずこの紐解けよ。そうしたらお前の望みどおり、ガンガン突いて気持ちよくしてやる」
「それは楽しみだな〜」

 海は自分のバッグから鋏を取り出し、俺の手足を拘束していた紐をすべて切る。これで晴れて自由の身だが、さっき宣言したように逃げるつもりはねえ。こいつには俺のテクと大人の男のセックスがどんなもんかわからせてやらねえといけねえからな。
 俺が何か指示する前に、海は自ら四つん這いになっていた。そして片手で片側のケツを広げ、さっきまで俺のチンポが入っていた場所を見せつけてくる。

「あっ、コーチの精子が……」

 ぱっくりと開いていた穴から白い液体がじわっと染み出て来て、そのままベッドに垂れ落ちる。中出しもののAVだと必ずと言っていいくらいお目にかかれる絵面だが、実際に見たそれはAVで観たのより何倍もエロくて、そして強く興奮を掻き立てられた。男のケツだとわかっていても、そこにぶち込みたくて堪らなくなる。
 両手で掴んだ腰は男らしくがっしりしていた。ケツはやや大きめだがプリッとしていて形がよく、毛も全然生えてない。俺はその谷間で開かれた口にチンポを当て、そのまま一気に根元まで中に押し込んだ。

「あっ!」

 俺のを受け入れた途端に海の中はギューッと締まり、まるで喜んでいるみたいだった。その締め付けられる感触に気持ちよくなりながら、俺はゆっくりと腰を動かし始める。

「あっ……コーチのやっぱ、いいとこ当たるっ」
「いいとこってのはここか? それともここか?」

 少しずつ角度を変えながら出し入れを繰り返したが、海はどの角度で突いても気持ちよさそうに喘いだ。

「全部っ……気持ちいいっ」
「全部感じるなんていやらしい身体だな。いったい誰に開発されたんだよ?」
「わっからないっ……あんっ……」
「俺が初めてってわけじゃねえんだろ? 今までどれだけのチンポを咥えてきたんだ、このケツは?」
「覚えてないっ……あっ!」

 覚えられないほど相手にしてきたっつーのか? 相当なヤリマンじゃねえか。高校生の分際でそれほどとは恐れ入るぜ。

「まさか部員たちにも手出してきたんじゃねえだろうな?」
「部員とはっ、したことないっ……ガキっぽいやつ相手じゃ興奮しないからっ」

 確かに他の部員たちはみんな高校生らしくガキくさい感じだな。背ばっかり伸びて、中身はお子さまのままなやつが多い。そんな中で海だけは高校生らしからぬ落ち着きと余裕を持っていて、相対的にも大人っぽく見えていた。けどまさかこっちのほうまで大人だとは思わなかったな。おまけにビッチとは恐れ入る。
 俺は徐々に腰を振るスピードを上げていき、パンパンと音がなるくらい激しく打ち付ける。それに比例して海の喘ぎ声も大きくなり、妙な甘さを含んだそれが鼓膜を刺激した。

「可愛い声出すじゃねえか。そんなに俺のチンポが気持ちいいのか?」
「気持ちいいっ……コーチのチンポっ、俺の好きなとこ擦れてっ、感じるっ」

 そんだけ感じてもらえりゃこっちも掘り甲斐があるってもんだ。

「コーチはっ、気持ちいいですかっ……?」
「ああ、すげえいいぞ。こんなに具合のいいマンコは初めてだ」
「あっ……嬉しいっ」

 ケツの構造自体は単純そうなのに、俺が奥を貫くたびに起きる収縮は複雑で力強い。海が滅茶苦茶感じてるのと同じように俺も滅茶苦茶気持ちよくて、腹の下がズンと重くなるような感覚がしてくる。
 そのまま海をうつ伏せに寝かせ、男らしい背中にぴったりと身体を重ねて尻の中を撹拌するような形に腰を動かした。

「ああっ! すごっ……あっ、あんっ……あっ、あっ……」

 どうやら普通のバックより寝バックのほうが感じるらしく、さっきよりも締付けがきつくなる。気を抜けば俺もうっかりイっちまいそうになるほどの快感を、歯を食いしばってやり過ごしながら中を抉り、先っぽを奥に擦り付け、このいやらしいマンコを思う存分に味わう。
 女相手のときは相手の身体が壊れてしまいそうでピストンにも無意識のうちに遠慮が入ってしまっていたけど、男の海相手ならそういった心配は必要なさそうだった。それなりに鍛えられた身体はどんな激しいセックスにも耐えられそうだったし、ケツも使い込まれているのかなかなかタフだ。
 途中で身体を横に向かせ、ある程度したら今度はそのまま海を上に乗せて下から激しく突き上げる。さすがに女と違って体重をかけられると重かったが、マンコの位置が後ろのほうだからかチンポが抜けにくくて掘り易かった。
 俺が少し前後運動に疲れてくると海が代わりに動いてくれる。こいつの腰つきはホント、女よりもいやらしいな。それに擦り方も上手い。どうすれば気持ちいいかを熟知しているみたいだった。

「コーチっ……あっ、気持ちいいっ……」
「そんなに俺のチンポが好きか?」
「好きっ……コーチのチンポっ、すごく好きっ」
「お前のケツマンコはチンポなら誰のだって感じるんだろ?」
「感じるっ、けどっ……コーチのが一番いいっ……あっ!」

 一番いいってのはお世辞だとしても言われて悪い気はしない。
 俺は海の腰を止めると一度結合を解き、海を仰向けに寝かせた。両脚をグイっと持ち上げ、散々掻き回した場所を目で確かめると、パックリと開いた穴から泡立ったローションなのか、それともさっき出したザーメンなのかよくわからない液体が涎を垂らしているみたいに漏れ出ている。入口は赤くはなっているが、血が出たりはしてないみたいだった。

「いい眺めだな。お前のケツマンコが中までよく見えるぞ」
「は、恥ずかしいからあんまり見ないでくださいっ」

 海は上気した顔を困ったように歪める。ちょっと可愛い。

「何今更カマトトぶってんだよ? 俺のチンポ咥え込んで悦んでたのはこのケツマンコだろ?」

 言いながら指を挿れると海は小さく喘いだ。

「完全に俺のチンポの形に広がっちまってるな。中もトロトロにしやがって、顔に似合わずホントいやらしいマンコしてるな、お前」

 挿れた指を動かすと、ビンビンになったチンポがビクビクと震える。

「指でも感じるんだな。じゃあ今日はもう指で終わりにするか?」
「嫌っ……コーチのチンポ欲しいっ」
「どこに欲しいんだよ?」
「俺のケツに挿れてっ」
「ただのケツじゃなくてケツマンコだろ? ほら、もう一回言ってみろ」
「お、俺のケツマンコにコーチのチンポ挿れて、くださいっ」

 セックス自体はそれなりにこなしているはずなのに、こういう言葉責めみたいなのには慣れてないのか、海はかなり恥ずかしそうだった。それともそれすら演技なのか? だとしたら大した役者だな。まあどっちでもいいけどよ。
 俺は海の望みどおり、いやらしいケツマンコに再びチンポをぶち込んでやった。もう何も遠慮する必要なんかないくらい蕩けてるから、最初から一気にガンガン突いていく。

「ああっ! そこっ、気持ちいいっ……んんっ…ああっ」

 海は辛そうな、それでいて堪らなく気持ちよさそうな顔をする。俺の背中を掴んだ手にも力が入っていて、本当にもうどうしようもなく感じているんだと伝わってくる。

「あっ……駄目っ、そんなに強くしたら出ちゃうっ」
「出そうなら我慢せず出せよ。よく見といてやるから」
「あっ、あっ……駄目っ、出るっ……ああっ」

 俺はてっきり射精しそうなのかと思ったが、海のチンポからプシュッと音がしそうなほどの勢いで出たのは透明な液体だった。一度出始めるとそれは断続的に放出され続け、海の割れた腹筋の溝をいっぱいにしていく。

「もしかして潮吹いたのか?」
「そ、うですっ……ごめんなさいっ」
「謝んなよ。俺ので感じてくれたってことだろ?」
「はいっ……コーチのチンポ気持ちいいとこすごく当ててくるからっ、我慢できなくてっ……ホントすごく気持ちいいですっ」

 潮は止まらなかった。奥を擦るたびに溢れさせ、ついには海の腹じゃ受けきれなくなって下に敷いたタオルを濡らしていく。それでも俺はやめなかった。やめたくなかった。こんな最高に気持ちよくていやらしいセックスを中断するなんてもう考えられない。
 腰の動きが無意識のうちに速くなる。足を軽く持ち上げて尻を少し浮かせ、下から突き上げるようにすると海の声が更に艶を増したように感じられた。

「ああっ! 駄目っ、あっ! あっ!」
「駄目じゃなくていいんだろ? 嘘つくならやめちまうぞ?」
「あっ、やめないでっ……コーチのチンポっ、気持ちいいからやめてないでっ…いっぱい突いてっ」

 涙に濡れた瞳で見上げられて、俺はぞくっとした。ホントなんなんだこの高校生らしからぬ色気は。女のそれとは明らかに違うのに、俺の興奮を強く煽るものがある。こいつを滅茶苦茶にしてしまいたいと、凶暴な本能が刺激されて自分が制御できなくなってしまいそうになる。
 俺は余力もすべて腰を振ることに注いだ。中を抉り、貫き、擦り上げ、撹拌する。そうしているうちに射精感が込み上げて来て、こいつの中に精のすべてをぶっ放したく堪らなくなる。

「海っ……もうちょいでイきそうだ」
「俺もイきそうだからっ、中に出してっ……コーチの精子全部俺の中っ、出してっ」
「じゃあ先にイけっ……そしたら中に全部ぶち込んでやるっ」

 そこから先はもう言葉はなかった。女の身体なら壊れてるんじゃないかというくらいに激しく堀り上げ、出し入れする湿った音を部屋中に響かせながら、絶頂まで駆け抜ける。

「ああっ、イくっ……コーチっ、俺イくっ」
「イけよ海っ……出すとこしっかり見ててやるからなっ」
「あっ、もう駄目っ……イくっ、イくっ……!」

 次の瞬間、海の中を犯していた俺のチンポが今までにないくらいの凄まじい収縮に襲われた。一瞬遅れて海のチンポから精液が飛び出し、胸や腹を汚していく。

「俺もイくぞっ」
「イってっ……俺の中に精子出してっ」
「ああ、全部出してやるよっ…しっかり受け取れよっ」

 最奥を強く突き上げた瞬間、チンポが溶けてなくなってしまうんじゃないかと錯覚するような快感を覚えると同時に、俺は海の中に精子を放った。

「あっ……コーチの精子俺の中出てる……熱い」

 強い快感が徐々に収まっていく。その余韻を感じながら、俺はドクドクと脈打つ自分のチンポを眺めていた。射精が落ち着くとゆっくりとそれを引き抜く。すると栓をなくした海のケツマンコから出したばかりの俺の精子が漏れ出てきた。こいつが女だったら普通に妊娠してたかもしれねえな。
 俺も海もしばらく何も喋らなかった。上がった息が落ち着くと俺は海の身体をティッシュで拭いてやり、自分のチンポも綺麗にして隣に寝転がる。
 認めるのは悔しいが、まず間違いなくこれまでしてきた中で一番気持ちいいセックスだった。ゴムを着けずにしたからってのもあるのかもしれないけど、それ以上に身体の相性のよさみたいなものを感じてしまった。何から何まで上手く噛み合って、本当に一つになって快感を共有しているっていうような感覚が、やっている間ずっとしていた。

「ケツは痛くねえか?」

 結構無茶なことしたから心配で訊ねる。

「念入りに解したから全然大丈夫ですよ」

 海はこっちを向いて少し笑った。いつものこいつらしい笑顔だ。

「だから少し休憩したら第三ラウンドと行きましょうか」
「……はい?」

 第三ラウンド……だと?

「おい、俺はもう二発もイってんだぞっ」
「まだ二発、でしょう? まだまだ大丈夫ですよ、きっと」
「さすがにもう勃たねえって……」

 勃起薬を仕込んだとは言っていたが、さすがにもう復活する気はしなかった。

「俺が意地でも勃たせるんで大丈夫です。夜はまだこれからなんですから、ゆっくりじっくりやりましょうね? ほら、俺のケツマンコも早くコーチのハメられたくてもう疼いちゃってますよ?」

 そう言って海は脚を持ち上げ、両手でケツを開いてさっき俺が散々犯したそこを見せつけてくる。俺の精子に濡れたそこは物欲しそうに口を開いていた。



 結論から言うと、俺はその後更に二回海の中で射精した。海も同じ数だけイって満足したのか、ようやく風呂に入ることを許されて今上がったところだ。
 海も入れ違いでバスルームに向かい、出てくるとすぐにベッドに横になって寝息を立て始める。こいつもこいつで疲れてたんだな。受け入れる側も結構大変なのかもしれない。
 無防備に晒された寝顔はまさに真面目な好青年のそれだ。この男がケツにチンポを突っ込まれて悦ぶような淫乱なやつだとは誰も思わないだろう。バレー部関係者の中でも知ってるのは俺だけだろうな〜。
 俺は海の坊主頭を撫でた。セックスの間も何度か触ったが、やっぱジョリジョリしてて触り心地がいい。
 海はゲイらしいが、別に俺に対して恋愛感情を持っているわけじゃあないんだろう。やってる間もそういう感情の片鱗みたいなのは見えなかったし、本当にただ俺としてみたかったってだけで、それ以上のものは感じられなかった。まあ恋愛感情を持たれても困るんだけどな。こうして男と乱れまくったわけだが、それでも自分自身がそっちの道に転がっていくとは思えなかった。海とやれたのはこいつが強引だったのと、勃起薬のおかげなんだろう。あとはまあこいつのケツの具合が最高によかったってのもある。
 俺は海に背を向けて目を閉じた。しばらくすると海が俺の背中にくっついてきて、腹に手を回してくる。鬱陶しかったが、それでも海の好きにさせていた。海に対して恋愛感情を抱くようなことはまずないだろうが、それでもくっついて寝ることを許してやる程度の情を、俺はこの淫乱坊主に対して抱き始めているのだった。



おしまい




inserted by FC2 system