後編 高校生活最後の一年が幕を開けた。そして大地くんも同じように、大学生としての生活を本格的にスタートさせたわけである。 大学のほうはそんなに忙しくないみたいだし、バイトもしてないから大地くんは案外時間を持て余していると言っていた。だけどオレのほうは部活が忙しくて、大地くんと一緒に過ごせるのも夜ほんの少しだけって感じになっていた。 学校始まってから一緒に寝ることもなくなっちゃったな〜。起きる時間が違うから仕方ないし、何よりやっぱり二人でシングルベッドに一緒に寝ると、疲れがあんま取れなかったりする。だから次の週末までそれはお預けだ。 そして待ちに待った週末。 明日の部活は昼からだから、午前中はだらだらしてても大丈夫だ。大地くんも特に予定ないって言ってたし、久しぶりに(つっても一週間しか経ってないけど)大地くんと一緒に寝られる。 飯と風呂を済ませたあと、少しだけ自分の部屋で寛いでから、枕を持ってウキウキしながら大地くんの部屋に向かう。 だけどそのウキウキした気持ちは、ドアを開けた瞬間に凍り付いてしまった。 なぜならベッドの上に、大地くんが下半身を惜しげもなくすべて曝け出した状態でいたからだ。たまにオレの頭を優しく撫でてくれる無骨な手には、勃起したチンポが握られている。同じ男なら何をしていたか瞬時に理解できるだろう。 驚いた顔でこっちを振り返った大地くん。オレも同じような顔をしてるんだろうけど、お互いに顔を見合わせたまま、しばらく時間が止まったかのように固まっていた。 「ご、ごめん大地くん!」 オレの謝る声に大地くんは我に返ったみたいで、慌てて端に寄せていた掛布団で下半身を隠す。 「い、いや、俺のほうこそごめん! 今日はもう来ないのかと思って完全に油断してた」 「別に大地くんが謝る必要ないと思うけど……。ノックせずに入ったのオレだし」 オナニーなんて十代の男なら普通にすることだしな。真面目な大地くんだって例外じゃないんだ。 「お、お詫びにオレ手伝うよ?」 ……って、何言い出してんのオレ!? もう一回ごめんって言って部屋を出るつもりだったのに! びっくりしたのと興奮したのとで、ちょっと思考がおかしくなっちゃったみたいだ。 「て、手伝う?」 「うん。オレが大地くんのこと気持ちよくしてあげる」 言い出したもんはもうしょうがない。いや、むしろもう一度勃起チンポを拝ませてくださいっつーか、触らせてください! オレはドキドキしながらベッドのそばに歩み寄ると、膝を突いて大地くんの下半身を隠した布団に手をかける。さっきより少し萎えちゃったみたいだけど、それでも十分デカいチンポと再びご対面だ。亀頭が我慢汁らしきもので濡れてる。すんげえエロい。オレは遠慮も躊躇いもなく、そのチンポに手を触れた。 「お、おいっ」 大地くんが焦ったような声を出したけど、構わず握ったそれを上下に扱き始める。 人のチンポってこんな感触なんだな。すげえ熱くて、ビクッて反応するのがすげえ生々しい。最初は弾力があったそれは、段々と硬くなってくる。オレの手で気持ちよくなってくれてることに嬉しくなりながら、オレは自分のチンポも興奮して同じように勃起していくのを感じた。 さっき初めて見たときも思ったけど、大地くんのチンポって立派だな〜。ひょっとしてオレのが小さいんだろうか? いや、そんなことない! だってこの間ものさしで測ったら日本人の平均サイズよりちょっとデカかったし! やっぱ大地くんのがデカいだけだよ。 にしてもこのチンポ、なんか美味そうだ。普通にフェラだってできちゃいそうな気がする。そこまでしたら大地くんは引いちゃうだろうか? う〜ん……でもこの機会を逃すと二度とできないかもしれない。ここは勇気を出して(?)一歩踏み出しちゃうべきだろう。棒アイスでも舐めるような感覚で、オレは目の前のご立派なチンポに舌を付けた。 「ゆ、遊児っ!? そんなとこ、舐めたら汚いって!」 んなわけないだろ。大地くんの身体に汚いところなんてねえよ。 大地くんのチンポはちょっとしょっぱいような味がした。でも別に不快じゃないし、臭いも全然しないから余裕で舐め続けることができた。 「遊児っ……駄目だって」 駄目って言いながらも、オレの頭を押し戻そうとする大地くんの手には全然力が入ってなかった。男前な顔は気持ちよさそうに歪んで、色っぽく息を吐く。 亀頭がオレの唾液でぐしょぐしょになったところで、今度は口の中に入れてみた。どうすりゃいいのかよくわかんねえけど、そこはエロ動画の見様見真似だ。軽く吸いつきながら、唇で扱くみたいにしてみる。 「うあっ……」 大地くんの感じている様子に、責めているオレも大興奮だった。さっきからチンポは触ってもないのに勃起しっ放しだ。どうせなら大地くんにそれを触ってほしかったけど、そんなのは贅沢ってもんだろう。フェラさせてもらってるだけでもありがたいって思わねえと。 口の中のしょっぱい味が段々と濃くなってきてる気がする。ひょっとしてそろそろイきそうなんだろうか。そんな気がして、オレは更に強く吸いついた。 「やべっ……イきそうっ……うっ」 口の中に何かが思いっきり飛び出てくる感覚がした。同時に強烈な苦みが広がって来て、オレは思わず咽てしまう。 「わ、悪い遊児! 口ん中に思いっきり出しちゃった……」 見兼ねた大地くんが慌てた様子で、枕元からティッシュを何枚か取って渡してくれた。結構量出たっぽいそれをティッシュの中に吐き出す。 「うげえ、口の中変な味が充満してる……」 「マジで悪かったよ」 「大地くんが謝ることないよ。出るってわかってて離さなかったのオレだし」 せっかくだから口の中でイってほしいと思って最後まで吸いついたけど、今はちょっと後悔……。だってこんなに不味いって知らなかったし! いくら大好きな大地くんのものとは言え、愛情でカバーできないほどにそれは強烈なお味だった。 「つーかオレのほうこそいきなりこんなことしてごめん。ちょっと混乱してたわ」 実際別に混乱なんかしてなかったけどな。ただやりたかっただけだ。 「気にすんなよ。ちょっと恥ずかしかったけど、気持ちよかったし。よし、じゃあ次は遊児の番だな?」 「へっ?」 「今度は俺がしてやるから、ベッド上がって下脱げよ」 言うや否や、大地くんはオレの身体をベッドに引き上げる。 「えっ……マジでしてくれんの?」 「ああ。俺だけやられるのはなんか悔しいしな。……って遊児、もう勃ってんじゃん!」 「そりゃあ、大地くんの舐めてたから……」 大地くんの手がオレのスエットに張ったテントに触れてきた。まさかお返しが来るなんて夢にも思わなかったけど、これは嬉しい誤算って言うか、むしろどんと来いって感じだ。 「む、無理しなくていいからね」 「無理じゃないよ。俺は遊児のだったら平気だ」 オレだけ特別ってこと? もし本当にそう想ってくれてるんだったらめっちゃ嬉しいな。だってオレは大地くんのことずっと特別に想ってたし。兄弟だってわかってても、大地くんのこと好きになっていく自分を止めることはできなかった。そばにいればいるほど、話せば話すほど大地くんのことを好きになっていた。 「ほら、脱いで」 「うん」 腰を浮かせ、スエットとボクサーを脱ぎ捨てる。見るのはいいけど、やっぱ見られるのは恥ずかしい。しかも大地くん結構無遠慮に見るし! 「大地くん、見すぎ!」 「遊児だってさっき散々俺のを見たじゃないか」 「そうだけど……」 それ言われたら何も言い返せませんわ……。 「なんかもう我慢汁が出てるぞ。エロいな」 「そんなの言わなくていいよっ」 大地くんの手が、今度は直に俺のチンポに触れる。ゴツゴツしてるけど触り方は丁寧で、程よい握り加減で上下に扱き始めた。 「うわあっ……」 自分でやるのとは違って、なんか生々しい人肌の感触に敏感になってしまう。大地くんは少しの間そうしたあと、指に付いたオレの我慢汁をペロっと舐め取った。普段の真面目な大地くんからは想像もつかないような行動に、オレはびっくりすると同時に、これまでに感じたことのないくらいの興奮を覚えた。 そして大地くんがついに、オレのチンポに唇を寄せる。さっきオレがしたみたいに最初はチロチロと先っぽのほうを舐めて、そのまま口に含んだ。 「ああっ……やばっ」 大地くんの口の中は、手よりももっと熱かった。柔らかい粘膜に包まれるみたいな感じで亀頭全体を刺激され、想像していた以上の気持ちよさにオレの口から思わず甘ったるいような声が漏れてしまう。 「あっ、あっ……気持ちいっ……」 オレは無意識の内に大地くんの髪の毛に触れていた。短くて、どっちかっつーと硬い感触のするそれを、梳くように何度も撫でる。 「大地くんっ……オレそろそろイっちゃうっ」 「いいぞ。口の中に出していいから」 そう言って大地くんは最後の追い込みと言わんばかりに強く吸いついてきた。 「あんっ、イク、イクっ……あっ!」 そしてすでに発射寸前だったオレのチンポは、あっという間に大地くんの口の中で弾けて、そのまま精液をだくだくと注ぎ込んだ。 今までのオナニーがしょぼく思えちゃうくらいに気持ちいい射精だった。全身の力が一気に抜けて、オレは起こしていた上半身をベッドに倒れさせる。 「おえ、これ本当にひどい味だな……」 「そう言っただろ。なんで口の中で出させたんだよ?」 「そりゃあ、遊児が出させてくれたのに俺がそうさせてやらないわけにはいかないだろ」 「別にいいのに……」 でも死ぬほど気持ちよかったからいいけどな。 「とりあえず手洗ってうがいするか」 「そうだね。口の中まだイガイガしてるよ」 オレたちはそそくさとパンツとズボンを履くと、二人で洗面所に向かった。その途中で母さんと鉢合わせして、油断していたオレたちは必要以上にびっくりしてしまった。 「あら、二人してどうしたのよ?」 「べ、別になんも! ちょっとあれだよ、ね、大地くん」 「ああ、うん。ちょっと手に汗掻いたから洗いに」 「二人して? 手に汗掻くなんて何してたの?」 「う、腕相撲だよ!」 「そうそう!」 苦しい言い訳だったけど、母さんは「そう」とだけ言ってリビングのほうに消えた。 「……なんかめっちゃ焦っちゃった」 「俺もだよ。変に思われなかったかな?」 「たぶん大丈夫だと思うけど……」 まあ、普通は自分の子どもたちがチンポの舐め合いしてたなんて疑ったりしねえよな……。そう思うことにして、洗面所でうがいと手洗いを済ませる。 部屋に帰ると、オレたちは当たり前のように同じベッドに入って、ごく自然な感じで抱き合った。大地くんに頭を撫でられたかと思うと、デコに優しいキスが降ってくる。 「しちゃったな」 独り言のように、大地くんがぽつんと零した。 「しちゃったね。でもオレは全然嫌じゃなかったし、後悔もしてないよ。……大地くんはやっぱ嫌だった?」 「嫌だったら口に出させたりしないぞ。そもそも触ったりもしないし、触られるのだって拒否してる。遊児だから全部許したんだよ」 「それって、オレだけ特別ってことでいいの? オ、オレのこと好き?」 「好きだよ。可愛いのも、素直なのも、全部好きだ。兄弟だってわかってても、好きになるのを止められなかった」 オレと同じだ。まさか同じ気持ちを大地くんも持ってくれているなんて想像もしてなかったから、夢を見てるんじゃないかって疑いたくなってしまう。でも抱きしめた大地くんの身体からはちゃんといつもの温かさが沁み込んでくるし、オレの背中に回った腕の感触も本物だ。 「オレも大地くんが好きだよ」 「それは知ってるよ。俺ってそういうの鈍いほうだけど、遊児のは結構あからさまだったからな〜。いつも一緒にいたがるし、甘えたがるし、たぶん俺のこと好きなんだろうなってわかってたよ」 確かにオレの態度はあからさまだったけどさ……。まあ結果大地くんがオレを好きになってくれるきっかけになったみたいだから、結果オーライだ。 「弟でもいいのか?」 「うん。弟っつっても、ついこの間までは他人だったわけだしな。遊児こそ相手が兄貴でいいのか?」 「好きな人が兄貴で彼氏なんて、一石二鳥っつーか、一粒で二度美味しいじゃん」 「でも父さんたちには言えないな」 「父さんたちどころか、誰にも言えないよ。いろいろ禁断要素多すぎっしょ」 オレたちの恋を応援してくれる人なんて、たぶんどこにもいないんだろう。ずっと隠しながら生きていって、たまには肩身の狭いような思いをすることがあるのかもしれない。それでもオレは大地くんと一緒にいることを選びたい。 「またしような」 「うん。でも今度はもっとすごいことしたいな」 「このエロ遊児」 「大地くんだってエロ大地じゃん。顔に似合わずエロエロじゃん」 「うるさいよ」 大地くんと一緒にいると楽しい。抱きしめられると安心する。触られるとどうしようもなくドキドキする。初めて逢ったとき、オレはこの人を好きになる予感がしていた。そしてそれは現実になって、オレはいま大地くんに――たった一人の兄貴に、恋をしていた。 |