ドアをノックする瞬間、俺こと鎌先靖志は俄かに緊張していた。もちろん楽しみにしていた気持ちもあるんだが、なんせこういうのって初めてだから勝手がわからない。いや、まあ始まってしまえば相手に身を任せとけばいいだけなんだろうけど、ファーストコンタクトはどんなときでも緊張するもんだ。 鍵が開錠される音に続いて、ドアがゆっくりと開く。中から顔を覗かせたのは、一人の若い――俺と同い年くらいの男だ。すっきりとした短髪の下の顔は男臭く、いかにも硬派な印象を抱かせる。Tシャツに短パンっつーラフな格好だが、だからこそ鍛えられた身体をしてるんだと一目でわかった。 「こんにちは」 挨拶をした声は想像していたよりも低くく、けどそれがまた男臭さを感じさせて気分が上がる。 「靖志さんですよね?」 「あ、はい、そうっす」 「大地です。今日はわざわざ来て下さってありがとうございます。どうぞ上がってください」 「あ、お邪魔します」 愛想のいい大地くんに促され、俺は部屋の中に足を踏み入れた。外観のとおり中も品のいいマンションの一室って感じで、壁紙や床の色調がシックな雰囲気を出している。俺の住む安いアパートも新しくて綺麗なほうだけど、なんか格の違いみたいなもんを感じるぜ……。 「俺、こんな感じですけど、大丈夫ですか?」 大地くんが自分の顔を指差しながら訊ねてくる。ホームページのスタッフ紹介に大地くんの顔写真は一応あるんだが、軽くモザイクがかけられていてその顔立ちをはっきりと知ることはできなかった。シルエットだけでなんとなくタイプかなと判断して彼を指名したわけだが、実物は期待以上の男前だった。 「正直めちゃくちゃタイプっす。惚れちゃいそう」 思ったことを包み隠さず素直に口にすると、大地くんははにかんだあとに「ありがとうございます」と言った。普通にしてると硬派な男前って感じだけど、そういうふうに笑うと可愛さも兼ね備えているんだと気づかされる。マジで期待以上のいい男だ。 「そっちがバスルームになっているので、まずはシャワーを浴びてきてください。浴び終わったらタオルを巻いてこちらの部屋に入ってきてくださいね」 「了解っす」 言われたとおりに身体を洗おうと手で示されたドアをくぐる。そこは脱衣室になっていて、俺の腰くらいの高さの棚にはわかりやすくバスタオルが置かれている。 俺はパパッと服を脱いでバスルームに入った。熱めの温度にセットしたシャワーを浴びながら、出迎えてくれた大地くんのことを考える。 あの硬派な男前が、きっと今から俺の身体を隅々まで触ってくれる。それを思うと身体の奥底から、マグマみてえに熱い興奮が湧き上がってくるような感覚がした。 さて、そろそろここがどこで、大地くんが何者なのか説明しねえといけねえ頃合いだろう。簡単に言うとここはいわゆるゲイ向けのマッサージ店で、大地くんはそこのスタッフの一人だ。 最近腰やら肩の痛みに悩まされていた俺は(決しておっさん化してるわけじゃねえ)、生まれて初めてマッサージを受けようと思いついたわけだが、どうせ受けるならいい男にしてもらいたい、そんでもってついでにちょっとエロいことなんかできちゃったらいいな、という願望からゲイ向けマッサージを選んだわけである。 さっそくネットで近所のそういう店を検索してみたところ、数件ほどヒットした。それぞれのホームページからスタッフのプロフィールを確認し、さっき言ったようにシルエットで大地くんが一番タイプっぽかったから、この店の彼に決めたのだ。 髪の毛の先から足の爪先まで念入りに洗い、用意してくれたタオルでしっかり拭いて、これまた用意してくれたらしいドライヤーで髪を乾かす。確かタオルを巻いて部屋に来いって言ってたな。そのとおりにしよう。 部屋のドアを開けると、中は明かりが消されていた。けどキャンドルが部屋の至るところに置いてあって、そのおかげで何がどこにあるのかはちゃんと見える。部屋の奥にデカいダブルベッドがあり、大地くんはそこに腰かけていた。 「お疲れ様です。ドリンク用意したんで、ぜひ飲んでください」 そう言って立ち上がった大地くんの姿に、俺は心臓が飛び出すんじゃねえかってくらい驚いた。なぜかって、上から下まで何も身にまとっていない、完全なる全裸だったからだ。 その身体は筋肉マニアの俺から見てもなかなかのものと言えた。強靭だがマッチョすぎず、まさに芸術作品さながらの美しさを兼ね備えた完璧な身体がそこにはあった。割れた腹筋も膨らんだ胸筋も、男なら誰もが憧れるような猛々しさだ。 「靖志さん、すごくいい身体してますね」 「いや、大地くんのほうがすげえと思うっすよ。正直負けたっす」 俺も筋肉にはそれなりに自信あったんだけどな……。 「でも俺が今まで施術してきたお客さんの中では、間違いなく靖志さんが一番ですよ」 「マジで? 社交辞令とかじゃないっすか?」 「本当ですって」 またまたーと言いつつかなり嬉しい俺である。 筋トレちょっとかじってる程度のやつの中には、上半身ばっか鍛えてて下半身がおろそかになってる輩が結構いるんだが、大地くんは脚にもしっかりと筋肉が付いている。チンポもなかなかのものをお持ちだ。……ってやべえ、あんま見てると勃起しちまいそうだ。まだそのときじゃねえっての。 サイドテーブルに用意してあったドリンクを飲んで心を落ち着かせる。そんな俺の心の中など知ったことかと言うように、大地くんはベッドを整えながらチンポやこれまた引き締まったケツを目の前に晒している。ひょっとしてわざとやってんのか? 「こちらはいつでも大丈夫なんで、靖志さんの準備がよければ施術始めますね」 「あ、俺もオッケーっす」 「じゃあ、ベッドにうつ伏せに寝てください。あ、その前にタオル預かりますね」 言われて俺は自分で腰に巻いていたタオルを取ろうとしたんだが、それよりも早く大地くんの手がタオルを掴んできた。サッと取り去られ、俺も大地くんと同じく生まれたままの姿になる。 上がったベッドはスプリングの柔らかさがちょうどいい感じで、うつ伏せになると心地よくて全身の力が抜けちまいそうだった。大地くんもベッドに上がってきて、スプリングが沈む。 「これ、鼻で吸ってください。リラックス効果のあるアロマです」 枕元にそっと置かれた小せえ瓶を嗅ぐと、少し甘いような香りが鼻を突き抜けた。確かにリラックス効果はありそうだ。 「それじゃあ始めますね」 大地くんは俺の身体を跨ぐようにして、背中にタオルをかけてその上から手で触れてくる。最初は解すように背中全体を優しく押しされた後、タオルを取ってオイルを塗り広げ、今度はじんわりと強めに圧をかけられた。その力加減はなかなかちょうどいい感じだ。痛さとかは全然なくて、ただ気持ちよさだけを引き出される。 マッサージを受けながら、大地くんと話もした。学生時代のこととか、仕事のこととか……。人相手の仕事をしているだけあって、大地くんは話の繰り出し方や聞き方がなかなか上手い。 「そういや大地くんって、マジで二十三歳なの?」 「そうですよ。あ、やっぱりもっと上に見えますか? 老け顔ってよく言われるんですよね」 「そうじゃなくてさ、今年二十三なら俺と同い年だなーと思って」 「なら同い年ですね。今年の十二月で二十三になるんで」 「ならさ、タメ口でいいよ。敬語使われると変な感じするからさ。名前も“さん”とか付けなくていいから」 「う〜ん……でもお客様ですから。そこはちゃんとしないと」 「そんなの気にしなくていいって。少なくとも俺はもっとフラットなほうがいいから」 「じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな……。えっと、靖志……くん? いきなり呼び捨てはできそうにないや」 まあ、そうだよな。俺だって大地くんのことをいきなり呼び捨てにはできねえし。 話しながらも大地くんの手はしっかり仕事をこなしていく。肩や腕、頭なんかも優しくマッサージされた後、その手は無防備に晒されたケツに辿り着いた。 「え、ケツもやるの?」 「そうだよ。嫌かな?」 「な、中に入れたりはしないよな?」 「入れてほしい人には入れるけど、基本的には入れないから安心して」 なんだ、よかった。俺はタチだからアナルに異物をカムヒアするのはちょっと勘弁だ。いや、でも大地くんならいい気もするけど……。 大地くんの言ったとおり、ケツのマッサージは表面を揉みほぐすだけで俺のバージンが汚されるようなことはなかった。ただ時々谷間を指がスーッと通っていく瞬間は緊張で身体が一瞬硬くなっちまう。まったくけしからん指だ。 ケツが終わると太ももから足の裏まで丹念に揉み解され、そこでうつ伏せから仰向けになるよう促された。薄暗くても大地くんの顔ははっきりと見えて、目が合うと照れたようにはにかんだ。すっかり忘れかけていたけど、そういえばさっきからマッサージしてくれてたのはこんな超タイプの男だったな。あんまりに気持ちいい施術に完全に気を取られてたわ。 「靖志くん、腹筋もすごいな〜。ジムに通ったりしてるの?」 「いんや。筋トレは自分ちでしてるよ。懸垂マシンとかダンベルとかいろいろ持ってっから。大地くんはどこでしてんの?」 「俺も基本的には自分ちだよ。たまにプールに泳ぎに行ったりもしてる」 「へえ。だからそんなバランスいい筋肉の付き方してるんだな。俺も泳ぎに行こうかな〜。どこのプール行ってんの?」 「ほら、山の上に温水プールあるだろ? あそこだよ」 「あそこなら俺んちからもそんな遠くねえわ。今度行ってみようかな。大地くんの水着姿見たいし」 「筋トレのためじゃないのかよ!」 「えー、だってそういうのはやっぱ楽しみがないとつまんねえだろ? 目の保養だってたまには必要だべ」 「確かにそうだけど……でもそうだな、俺も靖志くんの水着姿見てみたいよ」 「マジで? 超きわどい競パン履いて行っても引かない?」 「むしろそのほうが嬉しいな。それに俺もきわどい系の競パンだから。あ、目のとこタオル被せていい? 足から順番にマッサージしていくね」 「了解」 水着の話したけど、よく考えれば今お互い水着以上に恥ずかしい恰好っつーか、むしろ何も着てない状態なんだよな。今更恥ずかしいなんて思わねえけど、うつ伏せのときと違ってチンポをばっちり見られてるっつーのは、なんか変な感じがするわ。 目を閉じて、大地くんの手の感触に集中する。予告どおり足から始まって、うつ伏せのときとは反対に段々上に上がってくる。絶妙な強弱をつけながら太ももをマッサージした後、大地くんの指は足の付け根……つーか股関節? の辺りを通って腰骨まで流れ、また太もものほうに戻っていく。それを何度か繰り返しているうちに、大地くんの指が少しだけ俺のチンポに当たるようになってきた。一瞬の接触だけど、何度もやられると気持ちよくなってきてそこは徐々に鎌首をもたげ始めた。普通のマッサージ屋ならなんとか収めようと必死に努力しなきゃいけねえとこだけど、ここはゲイ向けだからその必要はねえ。本能のままに勃起させる。 「靖志くんの、元気になっちゃったね」 「大地くんが手当ててくるからだろ」 「わざとじゃないよ。どうしてもあれやるときは当たっちゃうんだ。だいたいのお客さんは勃っちゃうけど。それにほら、俺のだって……」 俺のカチカチになったチンポの上に、硬くて熱いものが押し付けられる感触がした。それが何であるかなんて誰に聞かなくったってわかる。大地くんのチンポだ。 「靖志くんの身体触ってると興奮しちゃって……」 「ま、またまた〜。営業トークには騙されねえぞ」 「そんなんじゃないよ。本当にすごく興奮する。靖志くん、今まで見てきたお客さんの中で一番タイプなんだ。嘘じゃない」 大地くんの声は真剣そのものだった。それで今の言葉が営業トークだと疑う気持ちはほとんどなくなっちまう。 「あ、ごめん。いきなりこんなこと言われても困るよね」 「いや……普通に嬉しいけど。最初に言ったろ? 大地くんのことめちゃくちゃタイプだって」 「俺も靖志くんの顔見た瞬間に同じこと思った」 タオルをずらして大地くんを見上げると、大地くんもちょうど俺の顔を見てたみたいで目が合った。何も嘘は言ってない。クリっとした黒目がそう訴えかけているように見えた。 視線を顔から下にゆっくりと下していくと、鍛え上げられた上半身を過ぎたところで男のシンボルに辿り着く。それは感触でわかったとおり、勃起してデカくなっていた。大きさは俺のと同じくらいか? いきり勃ったモノ同士が重なり合う姿は、すげえ卑猥で興奮度が増々上がっていく。 「続き、やっていくね」 そう言って大地くんは施術の続きに戻る。指球で軽く圧をかけながら、ゆっくりと胸の辺りを行ったり来たりする。その通り道にはちょうど乳首があって、大地くんの手が触れるたびに身体が軽く反応しちまう。 「靖志くん、乳首感じるの?」 「あー……まあ、なかなか感じる」 「じゃあ舐めてもいい?」 訊いておきながら大地くんは俺の返事も聞かず、無防備に晒された乳首に舌を這わせてきた。 「うあっ……」 なんの心の準備もできてなかったから、思いっきり甘ったるいような変な声が出ちまう。 円を描くように周りを舐めてから、尖った先端を押し潰すように舌先で弄ったり、優しく噛むようにしたりと、大地くんの責め方は強かでやらしかった。 「ああっ……」 時々強く吸いつかれ、それが気持ちよくて声が零れる。おまけに大地くんがやらしく腰を動かすもんだから、チンポ同士が擦れて頭が痺れるみてえな感覚に陥っちまう。これだけであっという間にイっちまいそうだ。でもまだ我慢。大地くんとのエロい絡みはまだ始まったばっかだ。 「靖志くん、気持ちいい?」 そう訊いてきた大地くんの顔は、今日一番近くまで接近してきていた。ちょこっと俺が頭起こせばキスできる。それくらい近い。 「すげえ気持ちいいよ。大地くんはどう? 俺のチンポと擦れ合うの、気持ちいいのか?」 「うん……すごく気持ちいいし、エロい気分になる」 純粋無垢そうだと思った顔も、今や欲情しきった雄の顔になっていた。その頬っぺたに手を添え、親指で目元を撫でたあと、おもむろにキスをする。最初は一瞬触れただけ、次に触れたときにはもうディープなそれになって、舌と舌を絡め合う。 大地くんはキスも上手かった。これもやっぱ職業柄なんだろうか? 他の男ともこんなふうにキスしたのかと思うと、理不尽だとわかっていながらもすげえ腹が立つ。 「なんかさ、すげえ嫉妬するぜ」 唇が離れた一瞬の隙に、俺はつい不満を口に出していた。 「他の男ともこうやってエロく絡み合って、キスもしてんのかと思うとそいつらぶっ殺したくなるくらい妬ける」 「基本的に俺はお客さんとキスなんかしないし、乳首舐めたりもしないよ。マッサージして、手で抜いてあげるのが普通だから」 「またまたー。絶対嘘だろ」 「嘘じゃない」 大地くんはちょっと怒ったように眉間にしわを寄せた。 「俺だって誰だっていいわけじゃないし、ここは風俗ってわけじゃないから。手で抜くのはまあ、おまけみたいなもんだから仕方ないけど、絡むんだったらやっぱりタイプの人じゃないと嫌だよ。さっきも言ったけど靖志くんはすごくタイプだし、話した感じもすごく好きだから、キスするのも乳首舐めるのは全然嫌じゃない。むしろもっとしたいよ」 可愛いことを言う唇を、俺は衝動的に自分の唇で塞いでいた。俺の上に重なった逞しい身体を強く抱きしめながら、貪るように大地くんの口内を蹂躙する。 「……今の言葉、信じていいのか?」 「うん。俺、そういう営業トークはしないから。全部俺の本心だよ」 「わかった、じゃあ信じる。それと、俺も大地くんの身体責めてえんだけど、いいだろ?」 「もちろん。こんな身体でよければいっぱい触って」 「こんな身体ってな……こんな雄臭くてエロい身体なんぞそうそうお目にかかれねえっての。むしろ御馳走じゃねえか」 俺は大地くんの身体を横に転がして、その上に覆い被さる。ビンビンのままのチンポをもう一回重ね合わせ、擦り合わせながらキスから再開。 耳を舐めると、大地くんはくすぐったそうに身体を捩らせた。しつこくすると可愛い声を零し始め、俺の背中にしがみついてくる。乳首を責めると更に乱れ、その様が可愛くて俺はますますねちっこく責めちまう。 「あっ……靖志くん、しつこいよっ……あんっ」 「でも気持ちいいんだろ? 俺の乳首も丁寧に弄ってくれたことだし、そのお返し」 「俺そこまでしつこくなかっただろっ」 「お返しはやっぱ丹精込めなきゃ、だろ?」 大地くんの泣き言なんぞ完全に無視して、俺は乳首を弄り続けた。一息つく頃にはそこはすっかり赤く腫れ上がっていて、大地くんもすっかり泣きそうになっている。恨みがましそうに睨まれたが、短い髪を撫でて、優しくキスをして宥めた。 「なあ、大地くんのしゃぶっていい?」 俺のもそうだけど、大地くんのも我慢汁でぐっしょり濡れている。 「いいよ。俺も靖志くんのしゃぶりたいから、シックスナインしない?」 「シックスナインなんてまあいやらしい。エロいこと何も知らなさそうな顔してとんでもないヤリチンだわ」 「うるさいよっ」 軽口を叩くと大地くんに頬っぺた抓られた。 ってなわけで大地くんたっての希望により(俺もしたいと思ってたとこだけど)、シックスナインの形でお互いのをしゃぶり合うことになった。上下になるんじゃなくて、横向きになりながらのシックスナインである。上下だと下のやつが位置的に上手くしゃぶれなかったりするしな。 身体同様なかなか逞しい大地くんのチンポに、俺はなんの躊躇いもなくしゃぶりつく。大地くんもすぐに俺のチンポを責めにかかった。お互いに音を立てながらしゃぶり合う。棒だけじゃなくて玉の裏まで丁寧に舐め合い、時々扱いたりしながら声を上げる。 「俺結構イきそうなんだけど、大地くんはどう?」 「俺もイきそう……。このままイく?」 「いや、どうせなら兜合わせで一緒にイきてえ」 「いいよ。じゃあ靖志くんが上に来る?」 「うん」 俺は大地くんの太ももの辺りに跨り、今にも破裂しそうなチンポ同士を重ね合わせた。それをまとめて両手に握り、その上に大地くんがマッサージオイルを垂らしてくれたところで扱き始める。 扱き加減は最初から激しく。手で擦られる刺激とお互いの亀頭が擦れる刺激の両方を受けてやばいくらいに気持ちいい。力を込めると亀頭裏がヌルヌルに擦れ合って、我慢汁が更に溢れた。もうどっちのものなのか、マッサージオイルと我慢汁どっちなのかわからないくらいグチョグチョに濡れて白く泡立っていた。 「ああっ……俺イきそうっ」 「俺もだよ靖志くんっ……イく、イくっ、あっ……」 大地くんの男臭い顔が苦しそうに歪んだ。触れ合った太ももに力が入った感触を感じ取った瞬間、大地くんのチンポから勢いよく精液が飛び出した。同時に俺も限界が来て、頭が真っ白になるような快感に襲われながら射精した。 二人分のを握った手に、お互いのがどくんどくん痙攣してるのが伝わってくる。その手もチンポの先も、熱い精液に塗れてエロい絵図になっていた。 枕元に置いてあったティッシュを適当に何枚か取り、二人分のチンポと大地くんの身体を拭いてやる。二人ともまあまあの飛距離を出していて、大地くんの鎖骨まで拭いたやらなきゃならなかった。 「はあ……」 大地くんの横に寝転がりながら、大きく息をつく。 「すげえ気持ちよかったよ。マッサージもだし、エロも」 「そう言ってもらえると嬉しいよ。少し休憩してもいい? ちょっと疲れちゃった」 「いいぜ。なんなら腕枕しようか?」 「ホント? じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ」 大地くんは素直に俺の身体にぴたりと身体を寄せてくる。その身体をギュッと抱きしめ、後ろ頭を撫でながらデコにキスをした。 「また来てもいい?」 「もちろん。いつでも待ってるよ」 「その……客としてってだけじゃなくてさ、普通に飯行ったり、二人でどっか遊びに行ったり……そういうのは駄目なのか?」 ただの客として終わるのは嫌だった。せっかくこんなタイプな男に出逢えたわけだし、もっと深い関係になりたいと思ってしまう。こんなこと言ったって大地くんは困るだけかもしれない……そう心配したが、おそるおそる窺った大地くんの顔には嬉しそうな笑顔が浮かんでいた。 「俺も同じこと思ってた。もっと靖志くんと話して、靖志くんのこといっぱい知りたいよ。俺のことも知ってほしい」 「じゃああとで連絡先交換しようぜ」 うん、と言って大地くんは更に笑顔を深くする。この笑顔を俺だけのものにしたい。そんな独占欲と一緒に心の奥底から滲み出る、温かいような感情の正体を、俺はちゃんと知っていた。知っていたけど、まだ言葉にはできなかった。 それから二人でシャワーを浴びて、休憩した後に連絡先を交換した。あと三十分もすれば次の客が来ちまうらしい。だから俺は仕方なく部屋を出ることにした。 「本当にありがとうございました。俺も気持ちよくしてもらっちゃって……」 玄関で靴を履くと、大地くんが照れたようにはにかみながらそう言った。 「いいって。こんないい男相手に何も手出さねえなんて俺にはできねえよ」 「とりあえず今日、仕事終わったら連絡するよ。結構遅い時間になっちゃうけど大丈夫かな?」 「ああ。明日まで休みだし何時でもいいぜ」 「わかった」 「じゃあ、またな。外で会うのとここに来るの、どっちが先になるかわかんねえけどよろしく」 「うん。気をつけて」 後ろ髪を引かれる思いをしながらも、俺は大地くんに背中を向けて玄関ドアのノブを握る。それを回したところで、やっぱりこのまま何も言わずには帰れねえなと、強い感情に足を止められてまた大地くんのほうに向き直った。 「あのさ……俺やっぱ大地くんのこと好きだわ」 「えっ……」 自分の気持ちを素直に言葉にして伝えると、大地くんはびっくりしたみてえに目を丸くした。 「会ったばっかなのにこんなこと言うと軽いやつだって思われるかもしんねえけど、でも本気なんだ。すげえ好き。顔だけじゃなくて、話した感じとか、ホント全部好きなんだよ。いきなりごめん……」 「ううん……。正直、めちゃくちゃ嬉しいよ。でもいいのか? 俺はこの仕事が好きだからこれからも続けていくつもりだよ。もちろん将来的には自分の店を持って、抜きとかない一般向けの店を持ちたいって思ってるけど、今すぐには無理だからさ。それまでは他の男のを抜いたりすることになると思う。靖志くんはそれでもいいのか?」 「他の男の触るのは正直死ぬほど嫉妬するけど、でもいいよ。あ、けど今日俺としたみたいなエロい絡みは駄目だけどな! 手で抜くくらいならまあ許さんでもない。それに大地くんの将来の夢邪魔したくねえし。俺はそれなりに心が広いからな。だからまあ……俺と付き合ってくれよ。恋人として」 妥協が必要なことくらい、最初からわかってた。俺なりにちゃんと覚悟は決めたし、決めた以上は宣言通りに広い心でいるつもりだ。 「……俺のこと好きになってくれてありがとう。俺も靖志くんのことすごく好きだよ。だから、よろしくお願いします」 嬉しい返事が返ってくる。もう今すぐ飛び跳ねて踊りたいくらい嬉しい気持ちになりながら、俺はそれを抑え込んであくまでクールを装った。けど残念ながらにやけ面は隠せなかったが。 「じゃあ、今から俺らは恋人だからな。次はちゃんとデートしようぜ」 「うん。楽しみにしてる。今日絶対電話するから、待ってて」 「おう。仕事頑張れよな。じゃあまた夜電話で」 「あ、待って! あ、あの……キスしたい」 大地くんの可愛いお願いを無下にできるわけがなく、俺はもう一回廊下に上がった。そして新しくできた恋人の身体を抱きしめながら、温かくて優しいキスに夢中になるのだった。 |