「あの、相談したいことがあるんですけど……」

 そう言った澤村の顔は、いつになく険しかった。困ったような顔はたまにしてるけど、こんな顔は試合中に追い詰められたとき以外じゃ初めて見る気がする。たぶん重い内容なんだろうと、俺こと烏養繋心は心の準備をしておいた。

「なんだよ? 練習内容のことか?」
「いえ、あの、部活のことじゃなくて俺自身のことなんですけど、駄目ですか? 他に相談できる人がいなくて……」

 澤村自身のことってなんだ? タメのやつらを差し置いて俺に持ちかけてくるってことは、相当根深い悩みなんだろうか?

「いいけど、俺でいいのか? お悩み相談は先生のほうが得意そうだけど」
「先生はちょっとそういうのには疎そうに見えるので……」

 ってことはひょっとして恋愛相談か? だったら先生じゃなくて俺を選んだのも納得がいく。見た目の勝手なイメージだけど、あの先生が恋愛経験豊富なようにはとてもじゃねえけど見えねえしな。

「ここじゃ他の人に聞かれそうだし、今日部活が終わったら先生のところに行ってもいいですか?」
「おう、いいぞ。店のほうで待ってっから、お前の都合のいいタイミングで来いよ」
「わかりました。お願いします」

 ぺこりと頭を下げて、澤村は休憩中の他の部員たちのところに戻って行った。
 にしても澤村が恋愛相談か。堅物でそういうことにはあんま興味なさそうに見えるけど、やっぱあいつも高校生なんだな。可愛いところもあるじゃねえか。
 でも実際、あいつは結構モテるんだろう。本人がそれをわかってるかどうかは知らねえけど、顔は男前だし、中身だってしっかりしてて頼りがいがある。いっそ俺がお前と付き合いたいくらいだよ。どんな女を好きになったのか知らねえが、ちょっとそいつが羨ましい……とか思ってしまう俺はやべえな。
 まあ、その辺はもう仕方ねえ。別に俺も本気で澤村をモノにしちまおうなんて思ってたわけじゃねえし、ここは年上の男として素直にあいつの恋を応援してやろう。離れていく背中を眺めながら、心ん中で俺はそんなことを呟いていた。



 嘘から始まる恋の話



 部活が終わってから、俺はすぐに家に帰って店番をしながら澤村が来るのを待っていた。この時間は部活帰りの高校生どもが結構うちに寄り道して帰る。バレー部のやつらも例外じゃなかったが、今日はその中に澤村の姿はなかった。ひょっとしたら一度家に帰ったのかもしれねえ。
 高校生の波が収まると、さっきまで忙しかったのが嘘みてえに退屈な時間がやって来る。いつものように雑誌を広げると、煙草を吸いながらそれを読むことにした。
 ガラッと入り口の戸の開く音がしたのは、それから三十分くらいしてからだった。

「遅くなってすいません」

 やって来たのは澤村だった。制服じゃなくて私服を着てるから、やっぱり家に帰って来たみたいだ。

「ちょうど烏野のやつらが捌けたとこだったぜ。とりあえず先に店閉めっから、ここ座っててくれよ」
「あ、手伝います」
「いいって。シャッター閉めるだけだから」

 俺はちゃっちゃとシャッターを閉めると、隅のほうに置いてあったパイプ椅子を澤村の座った椅子の隣に持ってくる。向かい合うように座ると、澤村は「よろしくお願いします」と丁寧に頭を下げた。

「で、相談ってなんだよ? もしかして好きな女でもできたんか?」

 話を切り出しやすいようにこちらからカマをかけると、澤村は慌てて首を横に振った。

「そ、そういうんじゃないですよ」
「なんだ、違うのか。俺はてっきりそういう系の話かと思ってワクワクしちまったぜ」
「期待させちゃってすいません……。相談っていうのは、俺の身体のことでちょっと……」
「身体? どっか悪いのか? 膝? 肩?」
「それが……」

 澤村は言いにくそうに顔を曇らせる。ってことはひょっとして、今後の練習とか試合に響くような、厄介な不調なんだろうか? あと一カ月もすれば春高が始まる。澤村はチームの精神的支柱だし、レシーブの要でもある。こいつがコートの中にいるときの安心感ときたら半端ねえ。そんな存在が怪我で出られねえってことになると、チームとしては結構なマイナスになっちまうだろう。何より澤村自身が悔しいはずだ。

「すぐに治らねえもんなのか?」
「それはちょっとわかんなくて……。あ、でも別にバレーするのにはなんの問題もないことですよ」
「なんだ、そうなのか……。俺はてっきり試合とか練習に響く怪我でもしちまったのかと思ったぜ。けどそういうんじゃねえならなんなんだ? 俺に相談しに来るってことはそれなりに深刻なことなんじゃねえのか?」
「えっと……その……下半身にちょっと問題があって」
「下半身?」

 何気なく復唱すると、澤村の顔が一瞬にしてゆでだこみてえに赤くなった。
 下半身……つーと、やっぱチンポのことだよな? この澤村の反応を見る限りそうに違いねえ。そんでチンポの悩みっつーと、サイズのこととか早漏のこととかだよな? そんなことで一人悩んでいて、俺に相談しに来るなんて可愛いとこもあるもんだ。いつもはどっちかっつーと大人びた雰囲気してるのに。

「誰にも言わねえから、恥ずかしがらずに言ってみろよ。俺に解決できるかどうかはわかんねえけど、なんか助けにはなるかもしれねえし」

 こう言っておけば澤村も言いやすくなるだろう。あとは本人が覚悟を決めるのを待つだけだ。決して急かしたりせず、澤村が悩みの種を打ち明けるのをただ静かに待った。
 そのうち澤村は意を決したように表情を引き締めて、ゆっくりと重要な部分を語り始める。

「その、部活とか勉強で忙しくて、最近自分でしてなかったんです」
「おう」
「それでこの間久々にやろうとしたら……」
「したら?」
「た、勃たなかったんです……」
「……は?」
「どれだけ触っても反応ないし、動画観てても全然駄目で……これってインポですよね?」
「いや、お前高校生だろ? 高校生っつったらやりたい盛りで一番そこが元気な時期じゃねえか。インポってことはねえだろ」
「でもホントに全然駄目なんです。どんな動画観ても、擦ってみても全然……」
「マジか……」

 二十六歳の俺でもやろうと思えば毎日オナれるのに、十八歳――いや、まだぎり十七だっけ? の澤村がインポだなんて……信じられねえけど、ホントのことなんだろう。澤村の顔は真剣そのものだ。でもちょっと恥ずかしげでもある。可愛い。
 そんなレアな表情はとりあえず目に焼きつけておくとして、問題は澤村の悩みをどう解決するかだ。元気すぎて困ったことはあっても、インポになったことなんて今までねえから、解決法がまるでわからん。……いや、思い当たる方法がないわけじゃねえけど、高校生の澤村相手にそれをやるのは拙い。余裕で犯罪になるだろうよ。
 頭の中であれこれ考えながら、なんとなく澤村の顔を見やる。クリッとした目が救いを求めるように俺を見つめていた。そりゃあ、勃たねえってのは男にとっちゃ大問題だしな。縋れるものにはなんでも縋りたくなるだろうよ。ここで俺が何もわかりませんって答えたりしたら、こいつはさぞがっかりして、トボトボと重い足取りで家に帰ることになるんだろう。
 こいつの悩みを解決してやりたい。その方法になりうる行為も知っている。でもそれは犯罪だ。最低の行為だ。だからやっちゃ駄目だ。でも澤村の助けになりたい。こいつにとっての頼れる男でありたい。……そんな感じで一人葛藤している中で、隠れていた下心が顔を覗かせる。こいつに触りたいっていう、正直な欲望が。

「……なあ、お前付き合ってる彼女とかいんの?」

 口が勝手に動いていた。澤村に触れてもいい理由をつくるために、言葉がポンと飛び出してくる。

「え、いや、いませんけど」
「インポ、どうしても治したいんだよな?」
「はい。勃たないままだったら、いつか絶対困ると思うし……」
「一応俺は治療法を知ってる。つっても百パーセント完治するような方法でもないけどな」
「たとえ完治の可能性が一パーセントくらいしかないんだとしても、今はチャレンジしてみたいです」
「じゃあそれがすげえ恥ずかしいことでもできるのか?」
「は、恥ずかしいこと……なんですか?」
「おう。まあその恥晒すのも俺の前でだけだし、二人だけの秘密にしとくから安心しろよ。それでも恥ずかしいのが嫌ってんなら、もう俺にできることはねえ」

 澤村は迷うように目を泳がせたが、その時間は十秒にも満たなかった。

「わかりました。問題箇所が箇所だし、恥ずかしいのはもうしょうがないですよね。それにコーチにはもうインポのこと言っちゃったわけだから、これ以上恥かいても一緒のことだと思います。どんな治療法でも受け入れますよ」
「男に二言はねえな?」
「ありません」

 獲物がかかった。思わずにんまりしてしまいそうになるのを必死に堪えながら、「そうだろう」と適当に返事を返す。
 どんな治療法でも受け入れるとこいつは言った。これで俺にはこいつに触れる理由ができたわけである。あとは実際にそれをやるのみだ。

「じゃあ俺の部屋に行くか。ここじゃうちの家族がひょっこり出てくるかもしれねえし。あんま綺麗じゃねえけどまあそこは大目に見ろよ」
「わかりました」

 澤村は、今から自分が何をされるのかまるでわかってないような顔で笑った。



「ホントにあんまり綺麗じゃないですね……」

 俺の部屋に入って早々、澤村が苦笑しながら正直な感想を述べやがった。

「だから先に言っといただろ。ちょっと片づけるから待ってろ」
「手伝いましょうか?」
「客にやらせるわけにはいかねえだろうが。お前はベッドに座っとけ」

 ベッド周りだけは奇跡的に綺麗だった。シーツもタイミングよく今日替えてくれたみてえだ。
 綺麗じゃねえっつってもゴミがそこかしこに落ちてるわけじゃなくて、床を覆ってるのは主に雑誌の類だ。バレー関係の雑誌だったり、他の趣味の雑誌だったり、種類はいろいろある。それらを俺は部屋の隅のほうに移動させた。それだけでもずいぶんと部屋が広くなったように感じられた。

「はあ……。こういうのは普段からちゃんと整理しとくべきだな。まとめてやると重労働だ」
「重労働って……雑誌をちょっと移動させただけじゃないですか。確かに量はすごいけど」
「澤村の部屋は綺麗そうだよな。塵一つ落ちてなさそう」
「さすがにそれはないですけど、コーチの部屋よりは綺麗ですよ」
「一言多いんだよ、この」

 澤村の短い髪をぐしゃぐしゃにしてやってから、俺は隣に座った。いつも割と近い距離にいることが多いのに、場所がベッドの上ってだけで異常なほど気持ちが盛り上がる。このまま肩を引き寄せてイチャコラといきたいところだけど、インポの治療が目的だと言ってる以上、そういう余計な手出しは厳禁だ。

「じゃあ本題に入るか」
「よろしくお願いします」
「とりあえず下全部脱いで横になれよ」
「はい……って、えっ!?」
「なんで驚くんだよ。治療なんだから見たり触ったりしねえと駄目だろ?」
「さ、触るんですか?」
「ちょっとな。嫌か?」
「は、恥ずかしいことってそういうことだったんですね……。わかりました、脱ぎます」

 澤村は俺に背中を向けて、まずはジーンズを脱ぎ始めた。それを足から抜き去ると、今度は黒くて地味なボクサーパンツに手をかける。躊躇いながらパンツを下げていく様は、まるでストリップショーでもしているみたいで変に興奮しちまった。それに拍車をかけるようにプリッとした形のいいケツが目の前に現れる。やべえ、すげえエロいケツだ。引き締まってるし、十代だけあって張りもある。今すぐ揉みしだいてやりたいけど、ここはグッと我慢だ。

「ぬ、脱ぎましたけど……」
「じゃあベッドに仰向けに寝てみろ」
「はい……」

 澤村は股間を手で隠しながらベッドに横になる。

「手、邪魔。隠してたら見れないだろうが」
「やっぱり見るんですか?」
「見るし触るぞ。さっきもそう言っただろ?」
「ううっ……わかりました」

 治療が進まないと澤村もわかってくれたみたいで、大人しく手を除けてくれる。
 陰毛は薄いがへその下から繋がっていて、ワイルドなエロさを醸し出している。その下にふてぶてしくぶら下がるチンポはズル剥けで形がよかった。サイズは標準よりちょっとデカいくらいか? すでに大人になりきったモノって感じだった。

「あんまりジロジロ見ないで下さいよ」
「見ねえことには何もわかんねえだろうが」

 まあ見ても全然わかんねえけどな。見れば見るほど興奮するだけだ。

「じゃあ次、触るぞ」
「素手じゃ気持ち悪くないですか?」
「別に。素手じゃねえと感触がよくわかんねえしな」

 手を伸ばすと、指先に亀頭が触れる。これが澤村のチンポの感触。男子高校生の、たぶん未使用の童貞チンポだ。柔らけえそれの先端を人差し指でそっと撫でたあと、軽く握って扱いてみる。

「なんか感じるか?」
「ちょっと気持ちいいような感じはするけど、あんまり……」

 澤村は顔を真っ赤にしていた。なんだこの可愛い生き物は。いっそ食っちまいたい。
 ノンケでもそこを擦られれば、相手が男だとわかっていてもうっかり勃っちまうもんだけど、澤村のは少しも反応を示さねえ。本当にインポで間違いないんだろう。むしろ俺のチンポのほうが元気になっちまったぜ。生ケツ見たときから反応し始めていたのが、今じゃすっかり完勃ちだ。それを澤村からは見えないように上手く足で隠しながら、勃ち上がる気配のないフニャチンをしばらく弄んだ。

「マジでインポなんだな」
「すいません……」
「別に謝ることじゃねえけど。それを治すためにこうして診てるわけだしな。他人に触られるとエロい気分になってうっかり勃っちまうかと思ったけど、駄目か。ってことで本格的な治療法に入るぞ。澤村、前立腺って知ってるか?」
「聞いたことはあるけど、具体的にはよく知りません」
「そこを刺激するとチンポに触らなくても勃起してイけることがあるらしい。まあ効き目があるかどうかは人に寄りけりらしいけどよ。俺の知ってるインポの治療法つったらそんくらいだ。だから今からそれを試す」
「前立腺ってどこにあるんですか?」
「チンポのちょうど真裏っつったらいいのかなー。外からは刺激できねえから、ケツに指突っ込むことになるぞ」
「そうなんですね……ってええ!?」

 やっぱりそういうリアクションするよな。ケツに指突っ込むなんて未知の領域だろうし、嫌悪感すら持っちまうだろうよ。でも前立腺への刺激が勃起を促すのはホントのことだし、ケツの中からしか刺激できねえってのも嘘じゃねえ。

「だ、駄目ですよ。そんなの汚いです」
「汚くねえよ。さっき風呂入って来たんだろ? だったら綺麗だ」
「で、でも……」
「どんな治療法でも受け入れる。男に二言はねえ。そう言ったのはお前だろうが。それともインポが治らなくてもいいのか?」
「それは……」

 澤村は押しに弱い。まあそれはこいつの中にインポを治したいっていう根強い思いがあるからだろうけど、こんなふうに迷ったときは最終的にこっちの指示に従う。ほら、今度もまた頷いた。

「でも痛くないんですか?」
「ローションあるし、指一本くらいなら大丈夫だろ。それに人によってはチンポ扱くよりも気持ちいいらしいぞ」
「そうなんだ……」

 高校生らしく気持ちいいことには興味があるらしい。戸惑う気配をまだ少しだけ漂わせながらも、お願いしますと言ってくる。
 とりあえず澤村のケツの下にバスタオルを敷いて、いつも使ってるローションを持って来て準備は完了だ。今からついに澤村のケツに指を突っ込む。現役男子高校生のケツを弄るなんて夢のような話だけど、夢じゃねえ。治療目的とは言ってもセックスの前戯と変わんねえから、やっぱり犯罪をするような気分になるぜ……。
 伸ばされた澤村の両足を曲げてケツが見えるような態勢にする。誰にも触られたことがないであろうそこが丸見えになった。澤村は男臭い顔をしている割に全身の体毛は薄く、そこの周りも生えてはいるがかなり薄い。

「コ、コーチっ、そんなとこあんまり見ないでくださいっ」
「見たって別に減るもんじゃねえだろ」
「俺の精神力がすり減ります!」
「わかった、わかった。じゃあさっそく入れっから、力抜いとけ」
「はい……」

 ついにこのときが来た。澤村の中に挿入……つっても指だけど。男相手に何度もやってきたことなのに、やっぱ現役高校生が相手だと変に緊張しちまう。けど俺以上に澤村は緊張してんだろうな。
 ローションを直接そこに垂らして、それを指ですくい取るようにして入り口に塗り広げる。澤村はピクッと身体を震わせた。軽くそこを抑えただけでも、すげえ力が入ってるのがよくわかる。

「澤村、力抜けよ。じゃねえと入れられねえ」
「ち、力抜くってどうすれば……」
「とりあえず息止めんな。ゆっくり息して、身体楽にしろ」

 澤村は言われたとおりにゆっくりと息をし始めた。するとそこがわずかに緩くなる。その隙を見て俺はゆっくりと中指の先っぽを押し込んだ。

「ちょっとでも痛かったらすぐ言えよ」
「はい……今のところ大丈夫そうです」

 まあ指一本くらいならそこを使ったことがなくても余裕だろうよ。それでも一応慎重になりながら、徐々に指を埋めていく。けど根元まで埋める必要はねえ。前立腺ってのはそんなに奥にあるもんじゃなくて、指の第二関節くらいまで入れりゃあ十分に刺激できる。だから半分くらい入ったところで一度引き返し、ローションを少し足してまた同じところまで突っ込む。それを何回か繰り返し、解れてきたところで突っ込んだ指を鉤爪状に折り曲げた。すると少しこんもりしたような感触に行き当たった。この奥に前立腺があるわけだ。俺はそれを優しく押し上げるようにして刺激する。

「痛くねえか?」
「はい……でもなんかすごく変な感じが」
「変な感じって、どんな感じだよ?」
「なんかざわざわするっていうか、ちょっと気持ちいいような感じが……」

 へえ、気持ちいいのか。人によっちゃ全然感じねえこともあるみてえだけど、澤村は素質ありだな。安心したぜ。
 俺はそのまま前立腺への刺激を続けた。焦らずゆっくりと、澤村に痛い思いをさせねえよう気をつけながら何度も押し上げる。すると触っても何の反応もなかった澤村のフニャチンが、嘘みてえにデカくなり始めた。しばらくすると男子高校生のチンポらしく天井に真っ直ぐと伸びた完全勃起の状態になり、俺の提案した前立腺マッサージは見事に成功することができたみてえだ。

「ほら澤村、ビンビンになったぞ」
「ホ、ホントだ……」
「このままイかせてやるから、大人しく寝てろよ」
「えっ!? それはさすがに申し訳ないですよ」
「気にすんな。ここまで付き合ってやったんだし、もうついでだよ」

 いや、本当は俺の手でイかせたくて堪らなかっただけだけど。本音を言うとこのすっかり元気になったチンポにしゃぶりつきたかったし、指を突っ込んでるケツには、パンツの中で苦しそうに勃起してる俺のチンポを突っ込みたかった。けどそれだけは駄目だ。澤村はそこまでのことは望んじゃいねえだろうし、マジで犯罪になっちまう。ここは我慢だ。
 触れた澤村のチンポはカチカチだった。その先端にローションを垂らし、優しく握り込んで上下に扱き始める。

「あっ、コーチっ……」
「気持ちいいだろ?」
「はい……ああっ、やばっ、変な声が」
「この部屋の近くには家族誰もいねえから、声我慢しなくていいぞ」
「でも俺の声、気持ち悪くないですか?」
「全然気持ち悪くなんかねえよ。むしろエロ可愛くてやべえ」
「エロ可愛いって……あっ、駄目っ……それすぐイっちゃいそうになりますっ」
「いいぜ、イけよ。最近出してなかったんだろ? 出してすっきりすりゃあいい」
「でもそれじゃコーチの手汚して……」
「んなの今更気にしねえよ。つーかケツの中に指突っ込んどいて精液は駄目ってことはねえだろ。んなもんは洗えばどうにでもなる。だから大人しく感じとけ」
「はい、あんっ、ああっ…あっ、あっ」

 澤村の色っぽい声と亀頭を扱く湿った音が部屋の中に響く。先っぽを手のひらで包み込むようにしてこねくり回すと、澤村は身悶えた。もちろん前立腺への刺激も忘れちゃいねえ。敏感な二か所を責められ続けた澤村は、すぐに白旗を挙げた。

「コーチっ、イク、イっちゃいますっ……ああっ、あっ、あっ――!!」

 ビュって音がしそうなくらいの勢いで、澤村の勃起チンポから精液が飛び出した。第一射は澤村の頭を通り越してベッドの端まで飛び、続いて澤村のでこ、胸、腹と徐々に飛距離を縮めていったが、しばらくは噴水みてえに溢れ続けていた。

「すげえな……」

 思わず感動しちまうような、それほどまでに豪快な射精だった。こんなすげえのは初めて見たぜ……。

「待ってろよ。すぐ拭いてやるから」

 澤村は放心状態みてえになっていた。マラソンでもしてきたみてえに肩で息をしながら、自分の身体のあっちこっちに飛び散った精液をじっと眺めていた。そんな澤村の代わりに俺はティッシュで残滓を拭き取ってやる。

「ああ、こりゃ拭き切れねえな。澤村、シャワーで身体洗って来い。部屋出て右に曲がったところにあるから」
「す、すいません……。あ、ベッドも汚しちゃってすいません……」
「いいって。そっちはすぐ取れたから。ほら、洗って来いよ。カピカピになっちまうぞ」

 わかりました、と言って澤村は部屋を出て行った。それを見送ってから俺はすかさずトイレに向かった。そして今にもはち切れんばかりに勃起した自分のチンポをパンツの中から出してやる。
 全然触ってねえのに、先っぽからは結構な量の我慢汁が垂れていた。それをローション代わりに扱く。さっきの澤村の声や顔、扱いてやったチンポやケツの感触を思い出しながらしていると、あっという間にイっちまった。
 澤村……マジですげえエロかった。そんで可愛かった。よくも最後まで襲わずにいられたな、俺。すげえ褒め称えてえよ。
 トイレから出て、部屋に戻るとすぐに澤村も戻ってきた。すでに服を全部着ている。

「あの、本当に今日はありがとうございました」
「どういたしまして。気持ちよかったか?」
「は、はい。すげえ気持ちよかったです。でもコーチにはすごく嫌なことさせちゃったな……」
「別にいいって」

 むしろ何度でもやってやりてえよ。

「俺、そろそろ帰ります。お世話になりました」
「もう夜だし送ってく。軽トラあるからチャリも載せられるしな」
「それは悪いですよ……」
「男つっても高校生を一人で夜道歩かせるわけにはいかねえよ。ここは大人しく甘えとけ」
「わかりました。じゃあお言葉に甘えて送ってもらっちゃいます」

 そんなわけで俺は澤村を車で送っておくことにした。家のだいたいの場所は前にちらっと聞いたことがあった。車だと七、八分ってとこだな。
 車の中では主に部活の話をした。どういう練習が必要だとか、こういう作戦はどうだろうかとか。さっきまでエロいことしていたのが嘘みてえに、いつもどおりのコーチとキャプテンに戻っていた。
 そして澤村の家の前に到着する。自転車を下してやると、澤村は再び「ありがとうございました」と頭を下げてきた。

「スッキリしたから、練習にも勉強にももう少し集中できそうです」
「そりゃよかった。まあ、またなんかあったら遠慮なく俺を頼れよ。いつでも相談に乗ってやる」
「はい。じゃあ、おやすみなさい」

 笑顔で手を振りながら、澤村は家の敷地に入っていった。ああ、守りたいあの笑顔。そう思うと同時に、汚したいとも思ってしまう俺はもはや犯罪者予備軍だ。
 さっきトイレで一発抜いたけど、それだけじゃ収まりがつかなくて家に帰ってからもまたオナった。しかも立て続けに二回だ。一日に三発も抜くとか一体何年ぶりだよ……。
 どれもこれも澤村が悪いんだ。あんなお悩みを俺のとこに持ってきて、俺の下心なんか気づかずに裸になって、ケツもチンポも触らせやがって……。
 わかってる。一番悪いのは俺だ。けどゲイであることなんか今更どうしようもねえし、澤村のことがタイプなのももう本能的な問題だ。
 はあ、でもあんなふうに澤村に触れるのもあれが最初で最後だったんだろうな。インポの問題もあれで一応解決したことだし、俺にはもう澤村に触れる理由がねえ。それならもっとじっくりゆっくりやってやりゃよかったと、今更遅い後悔に苛まれた。



 次の日、部活で出会った澤村は何事もなかったかのような何食わぬ顔で俺に挨拶をしてきた。まあ、こいつにとっちゃケツ弄られたのもチンポ扱かれたのも、マジでインポの治療の一環って感じだったんだろう。エロいことしたって思ってるのは俺だけみてえだ。なんかムカつく。
 けど逆に変な気まずさがなくてよかったのかもしれねえ。一応お互いにチームをまとめる役なわけだし、その二人に変な距離ができたりするとチーム全体の雰囲気が悪くなるかもしれねえからな。
 つーわけで、俺も変に意識すんのはやめにしよう。しばらくはオナネタに使わせてもらうけど、それもきっとそのうち飽きるだろう。

 そう心に決めたのに……。
 その三日後に、澤村が再び思いつめたような顔で俺の元にやって来やがった。



「あの、コーチ」
「どうした? そんな顔してるってことは、また深刻な悩みか?」
「はい。その、この間の続きになるんですけど、やっぱりインポ治ってないみたいで……。触ってみても全然反応なかったから、コーチがしてくれたみたいにう、後ろのほうも弄ってみたけど自分じゃどの辺がいいのかよくわかりませんでした。だからえっと……コーチが嫌じゃなかったら、もう一回してくれませんか?」

 なんてこった。まさかもう一度澤村の身体に触れるチャンスが来るなんて思いもしなかった。頭ん中に焼きつけた澤村の感じている顔や声をネタに何度シコっただろう。もう二度とできねえと思ってたあの治療と称したエロい行為を、もう一度できる。嬉しくて思わず顔がにやけちまいそうだった。

「別に嫌じゃねえよ。してほしけりゃ何回でもしてやるべ。じゃあ今日部活終わったら俺んち来るか?」
「はい、お願いします」

 約束は取り付けた。あとは部活が終わるのを待つだけだ。澤村と早く事に及びたいがために、早めに部活を切り上げようなんて浅ましいことを思っちまったけど、欲望を抑えてそこは最後まできっちりやりこなした。ただずっとこの後のことを想像して勃起しちまいそうだったけどな。



 澤村が来たのはこの間とほぼ同じ時間だった。店を閉め、部屋まで上げると服を脱ぐよう促した。

「この瞬間はやっぱり恥ずかしいですね」

 地味なボクサーパンツを脱ぎながら、澤村は恥ずかしげにはにかんだ。

「男同士だし、二度目だろ。何を恥ずかしがることがあるんだよ」
「それでもやっぱり恥ずかしいですよ。さ、触られたりするわけだし」

 こいつのこういう初心な感じはホント可愛いな。抱きしめてキスしまくりたい。
 ベッドに横たわらせ、膝を持ち上げさせるとこの間散々指で弄ってやった穴が露わになる。そこにローションを垂らし、表面に塗り広げていると逞しい身体がピクッと震えた。

「入れるから力抜けよ」
「はい……」

 そして中指をそっと中に挿し込んでいく。確かあれから自分で少し弄ってみたって言ってたよな。そのおかげか、初めて入れたときに比べてずいぶんと抵抗感が小さくなってる。第二関節まで痛がる様子もなくすんなりと入れることができた。

「あっ……」

 指の腹で上のほうを押すと、澤村は甘ったるいような声を上げた。気持ちよさそうに細めた目。男子高校生らしからぬ怪しい色気に当てられて、澤村よりも先に俺のほうがフル勃起しちまった。
 優しくマッサージするような感覚でそこを撫でていると、俺に少し遅れて澤村のチンポが勃起した。つーかこいつってチンポでけえよな。皮も剥けてるしなかなかご立派だ。ひょっとして俺負けてるんじゃねえか? いや、そんなはずねえ! ……たぶん。
 この間みてえに先っぽにローションを垂らし、ゆっくり扱いてやると澤村は更に喘いだ。俺も今すぐ自分のチンポ扱きてえよ。兜合わせとかして澤村と一緒にイきてえ。でもそんなことはできねえから妄想だけで済ませることにする。
 今日はじっくり澤村の身体を弄るつもりだったけど、残念なことに澤村はあっという間にイっちまった。まったく高校生らしいぜ。勢いはこの間ほどじゃなかったけど、肩まで飛ぶってのは羨ましいな。

「気持ちよかったか?」

 飛び散った精液を拭いてやりながら訊く。

「はい。今日もすげえ気持ちよかったです。コーチってこういうの慣れてるんですか? なんかすげえ上手いし」
「べ、別に慣れてるわけじゃねえよ」

 いや、まあそれなりに数こなしてきたけどな。もう二十六だし。

「シャワー浴びてくるか? ローションしっかり洗い流せよ」

 そんで俺はまたトイレで抜いてくるべ。ちょっと寂しいけどな……。
 とりあえず澤村がシャワーに行ってくれねえと、チンポ勃起してんのばれるから座って待っている。けど今日の澤村はなかなかベッドから起き上がらなかった。どうしたんだろうかと顔を見れば、ちょっと驚いたような顔をしたあとに目を逸らす。なんだその反応は?

「澤村、どうかしたか? ひょっとしてケツ痛かったのか?」
「いや、ケツは大丈夫です。むしろすごく気持ちよかったし……」
「じゃあ疲れたのか? ならそのまま横になっててもいいけどよ」
「そうじゃなくて、あの、その……俺、何かお礼しないとってずっと思ってたんです。こんなことに付き合わせてすごく申し訳なかったし。でも小遣いあんまりもらってないから何か買うってのはちょっと厳しいし、それに何を差し上げたらコーチが喜ぶのかもよくわからなくて……。ならいっそ、身体でお礼しようかなって思いつきました」
「はっ……?」

 言葉の意味をすぐに理解できなくてまじまじと澤村の顔を見返せば、男くせえ顔が一瞬のうちに真っ赤に染まった。

「こ、こんなのお礼になるかどうかわからないけど、今の俺にはこれしかありません。だからコーチが嫌じゃなかったら、俺のケツにコーチのを入れて気持ちよくなってください」

 澤村のケツに俺のを入れる……何を入れるかなんて訊かなくてもわかるし、澤村だってちゃんとわかってるんだろう。そんな誘いが澤村からかかってくるなんて思いもしなかった俺は、しばらくフリーズしちまった。

「澤村、自分が何言ってるかわかってんのか? それはもう治療とかじゃなくて……ただのセックスになるんだぞ」

 もうなんの言い訳も効かない、男同士のアナルセックスだ。まあ前立腺マッサージもぎりぎりアウトだった気がしないでもねえけど、今度はぎりぎりどころかかなりアウトだ。ラインズマンも迷いなく旗を上げるだろうよ。

「わかってます。でも俺はそれくらいしないと気が済まないし、コーチが気持ちよくなってくれるならすごく嬉しいです」
「あのなあ……お前はまだ高校生だぞ? 高校生相手にそんなことしたら俺は犯罪者になっちまう」
「誰にも言わなければ犯罪になんてなりません」
「そうかもしれねえけど……」

 正直に言うなら澤村とセックスしてえよ。こいつのことすげえ可愛いって思ってるし、ケツを弄りながら何度もそこに自分のチンポを突っ込むことを想像した。その妄想だけで三発は余裕で抜ける。
 でも駄目だろ。その一線を越えることだけは絶対にしちゃいけねえ。それに礼代わりに身体を差し出すなんてまるで援交じゃねえか。俺はそういうふうに澤村を抱きたくない。ちゃんと対等な立場にあって、お互いに何かしらの“情”があるならよかったのかもしれねえけど、澤村の提言はあくまで“施しとその対価だ”。セックス自体は気持ちいいかもしれねえけど、たぶん終わったあとの寂しさはとんでもねえくらい大きくなるんだろう。

「お前ってセックスしたことあんのか?」
「ないです……」
「だったらそれは好きなやつとするときのために取っておけよ。初めてのセックスの相手が俺みてえな男で、しかも童貞より先に処女なくすとか絶対後で後悔すんぞ」
「後悔なんか絶対にしません」
「いや、するに決まってる。自分の身体を安売りすんのはやめろ。お前にはもっとふわさしい相手がいるんだよ。今はまだいなくても、いつかそういうやつがポッと出てくるんだよ」
「そんな顔も知らないような相手よりも、今はコーチとしたいです。だって俺、コーチのことすごく好きだから……」

 澤村の声は尻すぼみ気味だったが、それでもなんて言ったかはちゃんと聞き取れた。

「マ、マジで言ってんのか……?」

 一応確認のためにそう訊くと、澤村は泣きそうな顔をしながら頷いた。

「すいません。お礼に身体を差し出すっ言ったのは託けで、そう言えばコーチに抱いてもらえるかもって思ったから……。いや、元を辿ればインポっていうのも嘘なんです」
「はあ!?」
「何か悩みがあればコーチと二人きりになれるかもしれないし、それがインポならひょっとしたら触ってもらえるかもって思ったりして……騙すようなことをしてすいませんでした」
「ちょ、ちょっと待てよ。最初にお前のチンポ扱いたとき、全然勃たなかったじゃねえか」
「婆ちゃんのこと想像したりして必死に我慢しました」
「マジか……」

 とんだ策士だな。俺が罠に嵌めたっつーか、欲望のままに澤村の身体を触っていたとばかり思っていたのに、全部澤村の思惑どおりに事は運んでいたのか。なんか軽くショックだ。いや、ショック受けてる場合じゃねえよ。軽く流しちまったけど、俺今こいつに告られたんだぞ。現役高校生にすごく好きなんて言われたんだぞ。夢でも見てるんじゃねえかって錯覚しちまいそうだ。

「マジで俺のこと好きなのか?」
「好きです」
「俺、お前より八歳も年上なんだぞ?」
「歳なんて関係ありません。コーチはカッコよくて優しくて、すごく頼りになる人です。俺にとっては魅力がいっぱいです」

 歯の浮くような台詞を真剣な顔で言ったあと、澤村は俺の腕をそっと掴んだ。

「それともやっぱり男は駄目ですか? それとも俺が駄目なんですか?」

 駄目な訳がねえ。生粋のゲイだから男にしか興味ねえし、お前のことは正直すげえ好きだよ。確かに澤村の言ったとおり、ここでセックスしたとしても誰にも言わなければ犯罪にはならないのかもしれねえ。ってことは、何も迷うことなんてねえってことだ。

「卒業まで待てそうにねえのか?」
「もう待てません。今まで結構待ったんですから」
「そっか。じゃあこれ以上待たせるわけにはいかねえよな……」

 覚悟は決めた。つーか澤村にここまで言わせておいて、それでも駄目なんて振ったら罰が当たるだろうよ。何よりお互いに好き合ってるんだったら、断る理由なんかねえよな。立場なんてもんは、今は考えなくてもいいんだ。
 俺は澤村に身体を寄せた。無防備な裸に腕を伸ばし、ギュッと抱きしめる。澤村の身体は少しだけ冷えていた。

「俺もお前が好きだよ。お前がインポって嘘ついてたって言うなら、俺もそれを利用して嘘ついてた。治療って抜かしながら本当はお前の身体に触りたかったんだ」
「そ、そうなんですか?」
「ああ。俺だって我慢したべ。お前のケツ弄りながら、ここにチンポ突っ込んだらどれだけ気持ちいいだろうって、そればっか考えてた。もう我慢しねえ。誘ってきたのはお前なんだから、途中でやめるとか言っても絶対やめてやらねえぞ」
「そ、そんなこと言いませんよ。俺すげえしたかったんだから」

 顔を赤くする様子は初々しくて可愛かった。そのデコにキスをして、頬っぺたにキスをして、最後に口にする。そして高校生にしちゃあ筋肉のよく乗った身体を、ゆっくりとベッドに押し倒した。



 前立腺マッサージとは違って、アナルセックスとなると奥深いところまで入れることになる。だから改めて指を根元まで突っ込み、じっくりとほぐして入れる準備を整える。頃合いを見計らって入り口にチンポを押し当てると、澤村の身体が強張るのがわかった。

「澤村、指入れるときみたいにちゃんと息しろ」
「す、すいません。なんかちょっと怖くて……」
「痛かったらすぐ抜いてやるから大丈夫だ」

 大丈夫だと宥めるように頭を撫でると、そこが少しだけ緩くなった。そのままゆっくりと腰を押し進め、澤村の身体の中に入っていく。
 根元まですっぽり収まっても、澤村は痛いとは言わなかったし、そういう顔もしなかった。念入りにほぐしたかいがあったみてえだ。

「澤村、俺が中に入ってるのわかるか?」
「はい……」
「どんな感じする?」
「すごく熱くて、ちょっと苦しい感じがします」

 チンポ受け入れるのなんて初めてだから、苦しくて当然だよな。痛みがないだけでも順調にいってるようなもんだ。

「ゆっくり動くから、痛いの我慢すんなよ」
「はい……」

 左手で澤村の肩膝を掴み、もう片方の手で無防備に投げ出された澤村の手を握る。暖房を強めにしたおかげかさっきみてえな冷たい感触はしない。そのことにちょっと安心しながら、根元まで入れたそれを今度は先端まで引き抜いた。

「うあっ……」

 もう一度押し込めば、澤村が可愛い声を上げた。散々弄った前立腺にいい感じに擦れているらしい。指はいいけどチンポはいまいちってやつもたまにいるから、そうじゃなかったことにホッとした。

「あんっ、コーチっ……あっ」

 俺を呼ぶ口にキスをして、出し入れする動きを徐々に速めていく。身体を重ねると、反り返った澤村のチンポが腹の辺りに当たった。それがわざと擦れるように上手く腰を振ると、澤村はどうしようもないくらいに乱れた。

「あっ、あっ……あんっ、あぁっ……」
「チンポ擦れるのとケツ突かれるの、どっちが気持ちいいんだ?」
「ど、どっちも気持ちいい……あっ……コーチっ」
「こういうときは名前で呼ぶんだよ。俺の名前知ってるだろ?」
「繋心さんっ」

 澤村は俺の名前を呼びながら顔を赤くした。恥じるような表情に愛しさが込み上げてきて、噛み付くようにまたキスをする。

「大地は可愛いな〜。こんな可愛い大地、他のやつらには見せられねえな」
「当たり前ですっ。こんな恥ずかしいとこ繋心さん以外には絶対見られたくない」

 男気溢れるキャプテンが、俺の前だけではエロ可愛い男子高校生になる。そんな男を独り占めしているのかと思うと、なんだかすげえ優越感を覚えた。

「絶対他のやつらに見せんなよ。お前は俺だけのもんなんだからな」
「繋心さんだって、他のやつらにこんなことしないでくださいよ。したら俺……死んじゃいます」

 可愛いことを言う大地の頬っぺたにキスをして、身体を抱きしめながら耳元で囁く。

「安心しろ。俺はこう見えてすげえ一途だから。お前が死ぬようなことには絶対ならねえよ」
「その言葉、信じてますよ。俺だけだって信じてます」

 俺の背中に回ってくる腕。強く抱きついてくるそれに愛おしさが増す。深くキスをしたあとに律動を再開し、大地の中を夢中で貪った。

「あぁっ……あっ、あんっ……あっ、あっ」

 抉るように腰を繰り入れると、大地はガクガクと身体を震わせながら喘いだ。そのたびに俺も強く絞めつけられ、頭が真っ白になっちまいそうなほどの快感を味わった。余裕なんてものはもうねえよ。ただただそのいやらしく絡みついてくる内襞を掻き混ぜ、突き上げ、溜まった欲望を吐き出そうと激しく腰を振った。

「あんっ、あっ……繋心さんっ、気持ちいいっ」
「俺も気持ちいいよ大地っ。お前ん中すげえトロトロでグチョグチョになってる」

 露骨な言葉を並べても、もう羞恥なんて感じねえくらいに大地はぶっ飛んでるみたいだった。けど好きだと囁けば、その言葉に反応して極まったような表情を見せる。

「俺も好きっ……すごく好きですっ」
「何がだよ? お前の中に入ってるチンポのことか?」
「違っ……繋心さんがっ、繋心さんの全部が好きっ……あっ!」
「俺も大地の全部が好きだ。その顔も男らしい声も、真面目で優しい性格だって全部好きだ。だから全部渡せよ。心も身体も全部俺に渡せ」

 締めつけが一際きつくなって、もうそろそろ限界だなと感じた。俺の腹に擦れた大地のチンポも我慢汁で濡れまくってすぐにでもイけそうだった。

「大地っ……そろそろイくぞっ」
「あっ、俺もイっちゃうっ……あっ、あんっ、あんっ」
「大地っ、中に出していいか? お前ん中でイきてえ」
「いいっ、出してっ。俺の中に出してっ……あああんっ!」
「……っ」

 俺のチンポをちぎるんじゃねえかってくらい締めつけが強くなって、大地がイったんだとわかった。俺も一瞬遅れて熱い身体の中に欲望の塊をぶっ放した。
 クリっとした目が俺を見上げる。その視線には好きって気持ちが滲み出ていた。引き寄せられるように顔を近づけ、もう何度目かわかんねえキスをそっと落とした。



「ありがとうございました」

 軽トラを停めると大地がすぐに礼を言ってきたが、車を降りようとはしなかった。俺も降りてほしくなかったから何も言わないでいる。

「……ケツ痛くないか?」
「ちょっと痛いです。でも歩くのとかは全然平気ですよ」
「そっか。ならいい」

 会話はそこで止まる。けど別に気まずいような沈黙じゃなくて、黙っていてもなんだか満たされたような気持ちになった。
 外から見えないのをいいことに、大地の手をそっと握る。大地は少し驚いたけど、嫌がる様子はなくむしろ握り返してくれた。

「はあ……帰したくねえなあ」

 思わず本音が零れた。正直に言うなら朝まで一緒にいてえよ。大地を抱きしめたまま眠りてえ。

「じゃあこのままどっか行っちゃいますか?」

 本気とも冗談ともつかねえような声で大地はそう言った。

「……駄目だ。親御さんが心配するからちゃんと帰れ。それに明日またすぐに会えるべ」
「明日になっても、俺たち恋人同士ですよね?」
「当たり前だろ。あ、でも部活のときお前だけ贔屓したりはしねえからな」
「わかってますって」

 車のドアが開く。大地が外に出て、今度はバタンと閉まる。その音がなんだかすげえ寂しげに響いた。
 外に出た大地は運転席側に歩いてきた。何か言いたげな顔をしていたから、窓を開ける。

「おやすみなさい」
「おう」
「気をつけてくださいね」
「ありがとな。じゃあまた明日」
「はい」

 名残惜しいけど、俺がここにいると大地がいつまでも家に入りそうになかったから、帰ろうと思って窓の開閉ハンドルに手をかける。その瞬間に大地が俺の名前を呼んだ。
 顔を上げた瞬間に、唇に温かくて柔らかいものが触れた。大地の唇だ。一瞬のうちに離れていったけど、その感触がひどく鮮明に唇に残った。

「大好きです」

 そう言った顔は照れたようにはにかんでいた。可愛すぎてやべえ。やっぱり家に連れ帰って一晩中抱きしめていてえよ。そんな気持ちを必死に我慢しながら、俺は大地の言葉に自分の気持ちを返した。

「俺も大好きだぜ」



 おしまい




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