二章  記憶を辿って


キミは誰……?


私を見つめる真っ赤な瞳

炎のような 真っ赤な瞳

キミは誰……?


嗚呼 キミは人間じゃないんだね

だって 犬のような耳がついているもん

それにその姿

嗚呼 本当に犬のみたい


私 キミと話したことあるよね?

私の故郷の話とか この世界の話とか

いつでもキミは優しかった

私を包んでくれるような温かさが

キミにはあった


キミは誰……?


この知らない世界に迷い込んで

困り果てている私を助けてくれたのはキミだったね

最初は本当に恐かったんだ

元の世界では見たことのない生き物だったから

食べられちゃうかとも思ったよ

けど それは間違いであって

キミは人間を食べたりしない

キミは人間が好きだから

それに 優しいから

それとも私が美味しそうに見えなかっただけ?


キミは誰……?


一度だけ 私がキミを助けたことがあったね

莫迦な人間たちがキミを襲っていて

とっさに私は男たちに殴りかかって

完全勝利を収めたんだっけ

だって キミはとても大切な存在だったから

私の傍にいてくれないと 寂しいから


嗚呼 私はキミを思い出したよ


キミは 私の大好きな


フェンリルだよね


ごめんね

今まで 思い出せなかった

あんなによくしてもらったのに

まったく思い出せなかった

でも もう思い出したから大丈夫


キミのこと ずっと忘れないよ






キミは誰……?


黒色の髪の毛に

漆黒の瞳

まるで夜の闇を思わせるような


キミは誰……?


甘い微笑みを見せてくれる

いつも優しく笑ってくれる

嗚呼 キミの傍はとても温かかったな

キミの優しさが 冷めた私を温かく包み込んでくれる


キミは誰……?


この世界のことを知らない私に

いろいろなことを教えてくれるキミは誰?

嗚呼 またキミは微笑む

その微笑を見る度に 私の心は癒される

甘い微笑が 私の心を掴んで離さないの


思い出せないよ

私によくしてくれたのに

また 思い出せない


キミは誰……?


そうだ キミの傍らには 黒竜がいた

わたしは黒竜に乗ったんだ

キミと一緒に

何処かを目指して


あの日は雨が降っていて 風も凄くて

前が見えない中を ひたすら進んだんだ

そう わたしたちはセルク王国という国を目指して

旅をしていたんだ

嗚呼 どうして思い出せなかったんだろう
















そう 雨の中 突然にして姿を現した敵


クジャと銀竜


その襲撃に遭って わたしは離れ離れになってしまったんだ

ごめんなさい 今までずっと忘れてました

お世話になったのに

わたしは召喚士様のことを忘れてました

召喚士様 無事だということを信じています

私は助けられました

だから 心配しないで

わたしは一人で セルク王国に向かいます

嗚呼 また会える日は来るのかな……














わたしはすべてを思い出しました

これから セルク王国に向かいます

自立した生活ができるように

そして 召喚士様と再び会うために





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