後輩たちに迫られまくってるんですけど!! 物陰から恐る恐る向こう側を覗くと、まるで飢えた猛獣が餌を探してるような目をした後輩たちの姿があった。あれは間違いなく俺を探してるんだろう。 昨日まで平和だった俺――日向順平の日常は、今日突然崩壊した。そして可愛い後輩たちは突然欲望のままに動く獣――というか、ケダモノになり、俺に襲いかかってくるという非常事態に陥ったのだった。 すべてのきっかけは、部室で河原が生徒手帳を落としたことだった。 「河原、手帳落ちてるぞ」 たまたま着替え中の河原の後ろを通ろうとしていた俺は、素通りするのも感じが悪い気がしてそれを拾ってやる。しかし、掴み取った瞬間に中から写真がばらばらと落ちてきて、人のものと知りながらつい何が写っているのか見てしまう。 「あれ、これ……」 一番上の写真には、寝ている俺が写っていた。どうやら移動中の車の中で撮られたらしく、寝ているのに眉間に皺が寄っているのが自分で笑えた。 二枚目の写真も俺だった。休憩中にぼうっとどこかを眺めている顔は少しアホ臭い。 三枚目にも俺が写っていて……と、そこで嫌な予感に捉われた。恐る恐る次の写真を捲るとそこにも俺がいて、五枚目、六枚目も、何枚捲っても俺しか写っていない。 全身が総毛立つのがわかった。明らかな異常を目の当たりにして、俺の思考回路は完全に凍りついてしまう。 「あ〜あ、見られちゃった」 底の見えねえ悪意を滲ませた声が背中から聞こえた。 「俺のキャプテンコレクション。ずっと秘密にするつもりだったのに」 いったい河原はいまどんな顔をしてるんだろう? どういう目で固まった俺を見ているんだろう? 気になるけど怖くて後ろを振り返ることができねえ。 「でも、それを見られたってことは、もう何をしても怖くないや」 いきなり肩を掴まれ、俺は心臓が飛び出すんじゃないかってくらい驚いた。同時に防衛本能がこのままでは危険だと警鐘を鳴らし、一目散に部室を飛び出した。 「待ってくださいよキャプテン!」 「追って来んじゃねえええええ!!」 とりあえず人のいるところまで逃げねえと、何をされるかわかったもんじゃねえ。ああいう陰湿なことをするやつはかなり危険だ。つーか、なんでこういう日に限って他の部員は来るのが遅せえんだよ!? 仕方ねえからグランドまで出て来たが、そこでようやく人の姿を発見する。 「福田〜!」 「ど、どうしたんですかキャプテン!?」 俺のただならぬ様子を察してくれたのだろう。後輩の福田は慌てて駆け寄って来てくれる。 「河原に追われてんだ」 「河原に? なんでまた?」 「まあ、ちょっとやばいもん見ちまって。とにかくいまのあいつは危ねえから、どっか隠れねえと」 「それならこっちっす!」 助っ人魂に火でも点いたんだろうか。福田は真剣な顔になって俺の腕を掴み、駆け出した。 後輩に手を引いてもらうなんて普段の俺なら考えられねえけど、いまは正直河原のあの異常な空気にびびちまってて、誰でもいいから助けてくれって心境だった。 「ここなら大丈夫っすよ」 福田が俺を連れて来たのは、校庭の隅にあるトイレの個室だ。ようやく河原の目が届かねえ場所に来られて、安堵の息が思わず零れる。 「体育館はまだ誰も来てないんすか?」 「ああ。俺と河原の二人だけだ」 「じゃあ、もうちょい人増えるまで待ちましょう」 ああ、なんか福田がすっげえ頼もしく見えてきたわ。 全力で走りっぱなしだったせいで乱れていた呼吸が、徐々に落ち着きを取り戻してきた。まあ、そばに福田がいてくれるおかげでもあるんだろうけど、さすがに口に出してやるのは悔しい……っつーか、恥ずかしい。 「それで、河原のやばいものってなんなんっすか?」 「わりい、ショックすぎていまはまだ言えそうにないわ」 河原が落とした写真の中には、私服の俺が写っているものもあった。ってことは部活外、ひいては学校外でもどっかから撮ってるってことだよな? それはもうかなりやばい領域に入ったストーカーだ。 「キャプテンがそんな切羽詰ってるところ、初めて見たっすよ」 「そうか? 試合中は結構焦ってること多いけどな」 「そういうのと違って、いまはなんかちょっと怖がってるっすよね? それが新鮮っていうか、可愛いっす!」 可愛い……だと? さすがにこの歳になって、しかも年下の野郎に言われても嬉しくねえよ。むしろ屈辱的ですらあるな。そんな思いを込めて背後の福田を睨もうとしたのだが、振り返る直前にいきなり福田の身体が密着してきてそれは叶わなかった。 「密室でキャプテンと二人きり……なんかドキドキするっす」 福田の腕が脇腹から伸びてきて、俺の身体をがっちりと抱きしめる。 「なんのつもりだ、ダアホ!」 「いや、そういう空気かな〜と思って」 「いったいどこにそんな空気が漂ってたんだよ!?」 「え〜、だってキャプテンに危機が迫ってるところじゃないっすか〜。それで、キャプテンちょっと怯えてるじゃないっすか〜。息も荒くなってるじゃないっすか〜。そしたら優しく抱きしめるでしょう、普通」 「普通じゃねえよ! 誰がどう考えたっておかしいだろ! っつか、いい加減離せ!」 福田の腕を引きはがそうとするが、思っていたよりもずっと力が強くてなかなか抜け出すことができねえ。まあ、福田のほうが体格いいから力負けすんのも無理ねえけど。だからって諦めるわけにはいかねえ。いまの福田からはさっきの河原と同じ空気を感じるぞ。つまりかなり危険ってことだ。 「キャプテンの匂いすっげえ好きだな〜」 じたばたと暴れているうちに、福田の手がTシャツの中に忍び込んでくる。最初は腹筋をなぞるように指を動かしたあと、脇腹をよじ登って、ない胸を揉み始めた。 「ちょ、何してんだ!? 冗談じゃ済まされねえぞ!?」 「いや、俺本気っすから。こんなこと冗談でなんかしないっすよ」 「俺の胸には女みたく夢なんて詰まってねえし、揉まれたところで何一つ嬉しくねえよ!」 そんな主張に福田は聞く耳を持たず、今度は指先で乳首に触れてきた。 「……っ!」 「あ、いまぴくってなった。キャプテン、乳首感じるんっすね!」 「べ、別に感じねえし」 「そんなに強がらなくてもいいんすよ? 声だって我慢せずにいっぱい出して下さい。どうせこんなところに人なんて来やしませんから」 指の腹で乳首を擦られるたび、全身が総毛立つような変な感覚に襲われる。それを快感だと認めるのが悔しくて、唇を噛みしめて堪えていると、福田の指の動きはどんどん激しくなってきた。 「ほら、乳首立ってきたじゃないっすか。素直になってくださいよ」 「てめ……調子乗んじゃ、ねえよ。マジで離せって」 福田の息が荒くなってきている。それこそ獲物を前にした猛獣みたく、タカがはずれかけているみてえだ。いや、もうはずれてんのか? このままだとマジでやばい。こんな人の乳首弄りながらハアハアしてるやつがこの程度で満足するようには思えねえ。 俺は想像でしか知らないこれ以上の行為を頭に思い浮かべて、それだけは死んでも嫌だと気を奮い立たせる。そして防衛本能は持てるすべての力を引出し、渾身の肘打ちを福田の鳩尾に叩き込んだ。 「ぐへあっ!?」 背中に密着していた身体が、力をなくしてその場にくずおれる。どうやら相当なダメージを与えたらしいが、倒れた福田の心配なんてしてる余裕はない。すぐに個室から飛び出し、再びグランドを駆け抜ける。 とりあえず体育館に戻ろう。そろそろ誰か来る頃だろうし、とにかくいまは福田からできるだけ離れたい。 念のためどっかから河原が飛び出して来ないか注意しながら、体育館のエントランスに足を踏み入れる。 「――キャプテン!」 その瞬間、横方向から小柄な影が突然飛び出してきて、俺の身体に体当たり――じゃねえ、抱きついてきた。 「降旗!?」 一瞬小金井かと思ったが、俺の胸に頬を擦りつけている顔は後輩のそれだ。それにコガなら俺のことキャプテンなんて呼ばねえよな。 「いきなり何すんだダアホ! 離れろ気持ち悪い!」 「え〜、だって河原たちと結んだ和平条約が崩壊しちゃったから、もうキャプテンのこと好きにしようと思って」 「和平条約? なんの話だ、それ? つーか、さりげなくケツ揉んでんじゃねえ!」 河原と福田だけじゃなくて、どうやら降旗もおかしくなっちまったらしい。つーか、この感じだとバスケ部員全員おかしくなってんじゃねえだろうか? うわ、なんかすげえ怖くなってきた。 「――何してんだ、降旗」 今日という日に絶望しかけたとき、威圧感のある声が俺の背後から降りかかった。振り返らずとも、このひしひしと伝わってくる存在感は誰なのかすぐにわかる。 「か、火神!?」 焦ったような声でそいつの名前を口にしたのは降旗だ。 「何キャプテンに抱きついてんだよ」 「こ、これはだな、その……て、テヘペロ☆」 しどろもどろになりながら、降旗はかなり引きつったテヘペロをつくり、まるで猫のようにぴょんと跳ねながら体育館の中へと逃げていった。 「……サンキュー火神。助かった」 礼を言いながら振り向いて、俺はなぜ降旗が一目散に逃げて出したのかを理解した。 火神は元々目つきが悪いが、いまはいつにも増して鋭くなっていた。それこそ人一人平然と殺しちまうんじゃねえかってくらいの覇気が感じられる。 「キャプテン、ちょっと来てくれ……ださい」 そんな顔で腕を掴まれたもんだから、俺は情けなくも腰を抜かしそうになっちまった。抗おうにも思うように力を出せず――いや、全力を出したって火神の力には勝てねえけど――引っ張られるがままに体育館裏まで連れて行かれる。 「な、なんだよっ……」 いったい何されるんだ!? 殴られるのか!? 殴られる理由なんて見当たらねえんだけど!? 「あんた、無防備すぎんだろ!」 「……は?」 いろんな悪い予感が頭をよぎる中、火神はいきなり意味不明なことを言い出した。 「あんたが誰彼かまわず色気振りまいてっから、さっきみたいなことになるんだよ」 「はあああ!? 俺がいつどこで色気振りまいたっつーんだよ! お前の目は節穴か!」 「節穴じゃねえよ! ちゃんと可愛いってこと自覚してくれ……です」 「俺のどこが可愛いってんだ、ダアホ!」 くそ、やっぱし火神までおかしくなっちまったのかよ。俺が可愛いとか福田と同じレベルの狂いようだ。 「め、眼鏡とか眼鏡とか、あと眼鏡が可愛いっす」 「眼鏡だけかよ! つーか、眼鏡が本体みたいに言うんじゃねえよ! だったら眼鏡外せばいいんだな? わかった、外してやるよ! これで俺の魅力はゼロだ!」 自分で言ってて少し虚しくなったが、野郎どもに盛られるよりはよっぽどマシだ。 眼鏡を外すと、まるで別世界のように視界がぼやけた。さすがに至近距離の火神の顔はわかるが、それ以外は霞んでよく見えねえ。 「どうだ! これで可愛い部分なんてなくなったぞ!」 火神はしばらくの間硬直していた。どうやら効果は抜群のようだ。 「やべえ……やべえよ、キャプテン! それ可愛いすぎだろ!」 ……と思ったのはどうやら大きな間違いらしい。火神は何やら興奮したような声を上げると、両手で俺の頬に触れてきた。 「その顔、絶対他の奴らには見せんな……ですよ! キャプテンはオレのものなんっすから!」 「ダアホ! 俺がいつお前のもんになったんだ! 離せ、キモい!」 逞しい腕を引き剥がそうとするも、やっぱ火神相手だとびくともしねえ。このまま福田のときみたいに卑猥な展開に持ち込まれたら、今度こそ最後までヤられちまう! 童貞喪失の前に処女喪失とかマジ勘弁してくれ! 俺の頬に添えられた火神の手に更に力が入る。そしてちょっと屈んだかと思うと、男臭いが決して悪くない顔立ちが唇を突き出して、俺の顔に近づいてくる。 「ちょっ、早まんなよ火神! 俺は男で、しかもこんなだぞ!」 火神はもう何も聞いちゃいなかった。手で顔を押し返そうとしても距離は縮んでいくばかりで、最終手段として自分の唇を手で塞いだが、いとも簡単に剥がされちまった。 もうすぐ唇と唇が触れ合っちまう。ファーストキスの相手はどんな女だろうと思い浮かべていた夢が、いまこの瞬間ぶち壊される。でも火神ならいい男だし、不器用だけど一生懸命に俺を愛してくれそうだから、受け入れてもいい……なんて思うわけねえだろ、ダアホ! だがもう、俺に残された逃げ道はねえ。このまま火神のキスを受け入れるしかねえのか……? 「――日向〜!」 いや、どうやら神は俺を見捨ててなどなかったらしい。聞き覚えのある声が向こうからした瞬間、俺の手首を掴む火神の手の力が一瞬だけ抜け、その隙に俺は固い拘束から上手く逃れることができた。 その直後、体育館の玄関のほうから木吉がぬっと姿を現し、俺らを見つけて安堵したような顔をした。 「こんなとこで二人で何してんだ? リコが練習始めようかって言ってるぞ?」 「……うっす」 さっきまでの気迫がまるで嘘のように大人しくなった火神が、小走りに玄関へと向かって行った。ようやく最大の危機から逃れられたと、俺は大仰に安堵の息を漏らした。 「火神と何してたんだよ? しかも日向、裸足だし」 「あっ……」 木吉に言われてようやく自分が裸足だっつーことに気がついた。あんまりにも逃げることに必死でまったく気に止まらなかったぜ。 「足洗ってバッシュ履いて来いよ。もうみんなそろってっから」 「ああ。……お前は普通なんだな」 ここで木吉まで俺に迫ってくるようなら、もはやバスケ部には味方なんていねえと言っても過言じゃねえだろう。 「普通? なんの話だ?」 「いや、なんでもねえ」 体育館に入ると、俺を除いた部員たちがシュート練習に励んでいた。河原や福田といった一年組もさっきまでの奇行が嘘のように、いつもどおりの雰囲気に戻っている。それが逆に不気味でもあるが、この人数じゃ襲われるようなこともないだろう……たぶん。 とりあえず靴下とバッシュ履いて、今日の練習始めっとすっか。誰もいない更衣室に入り、出しっぱなしにしていた自分のバッグから必要なものを取り出す。 「――おはようございます、キャプテン」 「うわああああああああああ!?」 何の前触れもなく降りかかってきた挨拶に、俺は驚いて素っ頓狂な声を上げちまった。振り返ると、黒子が不思議そうな顔で俺を見ていた。 「い、いたのかよ黒子!?」 「はい。最初からいました」 すっかりお馴染みになってしまったやり取りを交わし、俺は跳ね上がった鼓動を落ち着かせようと深呼吸する。 黒子は着替えている途中だったらしく、上半身裸の状態だった。相変わらず無駄な肉どころか必要な肉まで少ない貧相な身体で、本当にちゃんと飯を食っているのかと心配になる。 「今日は珍しく遅かったんですね」 「ああ。来て早々いろいろあってな」 「いろいろ?」 「ああ、うん。ちょっと思い出したくない」 男たちに追っかけられ、抱きしめられ、乳首を弄られ、キスされかけ……思い返せばちょっとしたトラウマどころの騒ぎじゃねえな。 黒子は俺の気持ちを察したのか、それ以上は何も訊いてこなかった。淡々と練習着に着替え、バッシュを履き始める。 「あ、キャプテン腕のとこ怪我してますよ」 「うっそマジ!? どこ?」 さっきからなんか腕に違和感あると思ってたら、怪我してたのか。いつどこでやっちまったのかまったく覚えてねえけど、絆創膏いるようだったら貼っとくか。そう思って自分の腕を確認するのだが、その怪我がどこにあるのかわからねえ。 黒子はそれを見兼ねたのだろう。俺のほうに近づいてきて、手で傷の場所を示してくれる……のかと思ったら、違った。ポケットからひものようなものを取り出したかと思うと、魔法のような鮮やかな手つきで俺の両腕を拘束した。 「く、黒子!?」 しまった、油断した! さっき木吉がまともだったからこいつも大丈夫だと信じて疑わなかった。しかもあの黒子だぜ? まさか俺を襲うような真似をするなんて思わねえだろ。 恐る恐る黒子の顔に目をやれば、そこには溢れんばかりの邪悪さを放つ笑顔があった。 「これでキャプテンはボクのものボクのものボクのものボクのものボクのものボクのものボクのものボクのものボクのものボクのものボクのものボクのものボクのもの」 「ぎゃああああああああああああああ!!!!!!」 世界中に響き渡るんじゃねえかってくらいの叫び声を上げた瞬間、俺の頭に軽い衝撃が走った。それが自分のベッドから落ちたせいだと気がついて、俺は急速に現実へと引き戻された。 「夢、だったのか……」 いつもと変わらない、自分の部屋。後輩に襲われかけたのがすべて夢の中の話だったと理解して、俺はホッと胸を撫で下ろした。 そうしていつものように身支度を整え、部活のために学校へと向かう。 身体がだるい。とんでもねえ夢を見たせいで、十分な睡眠時間を確保したはずなのになんか疲れちまった。 今日も部活一番乗りのつもりで来たのだが、体育館と部室はすでに開錠されていた。どうやら誰かに先を越されたらしい。 「って、河原じゃねえか。こんなに早いなんて珍しいな」 部室に入ると、河原の一番わかりやすい特徴である坊主頭が目に入り、声をかけた。 「はよございます、キャプテン。ちょっとシュート練しようと思って、早く来ました」 「いい心がけじゃねえか。他の一年にも見習ってほしいくらいだな。……っと、お前手帳落としてるぞ」 着替え中の河原の後ろを通ろうとしていた俺は、素通りするのも感じが悪い気がしてそれを拾ってやる。しかし、掴み取った瞬間に中から写真がばらばらと落ちてきて、人のものと知りながらつい何が写っているのか見てしまう。……ってあれ、なんか既視感あるんだけど、気のせいか? 「あれ、これ……」 一番上の写真には、寝ている俺が写っていた。どうやら移動中の車の中で撮られたらしく、寝ているのに眉間に皺が寄っているのが自分で笑えた。 二枚目の写真も俺だった。休憩中にぼうっとどこかを眺めている顔は少しアホ臭い。 三枚目にも俺が写っていて……と、そこで嫌な予感に捉われた。恐る恐る次の写真を捲るとそこにも俺がいて、五枚目、六枚目も、何枚捲っても俺しか写っていない。 全身が総毛立つのがわかった。明らかな異常を目の当たりにして、俺の思考回路は完全に凍りついてしまう。 そうして俺の悪夢は、現実へと転化するのだった。 |