終. 愛してるの蕾

 締まりきった一護の蕾に俺は指を入れる。
 熱を持ったそこは異物の新入を防ごうと収縮するが、それを強引に押し開いて奥に進む。

「いっ……!」

 一護の顔に苦悶の色が浮かんだ。やっぱりローションみたいな潤滑剤がないときついらしい。それでもやめるなと言うから指を弱く動かして様子を見る。

「やめたくなったら言えよ」
「やめたくなんて、なんねえよ」

 指一本でもきつそうなんだ。実際に俺のモノを入れたらどうなるんだろうかと心配になる。
 抜き差しを繰り返しているうちに一護はやがて苦しそうにしなくなった。どうやらそこは痛みを感じない程度に広がったらしい。一度奥まで入れた中指を一気に引き抜き、今度は人差し指を足して再び挿入する。

「いった……」

 中間地点までは順調だったが、直腸が近くなると一護は小さく悲鳴を上げた。

「大丈夫か?」

 大丈夫、と答えた声はあんまり大丈夫そうじゃない。
 奥に入れたままの指を掻き混ぜるように回し、グチュ、グチュ、といういやらしい音をわざと立てる。

「な、なんか……嫌」
「何が?」
「音、気持ち悪い……」
「気にするな」

 音のことだけを指摘して、やっぱり指を抜けとは一言も言わない。意地張って無理しているのかと思ったが、浮かぶ表情が苦悶とは少し違うなんだか切なげな色を灯していた。

「一護、お前感じてんのか?」

 それ以外にそんな顔をする理由がない。

「そんなこと分かんねえよ。でもなんかさっきと違う」

 痛みを感じない程度にほぐれてきてはいるが、モノを入れるのにはまだ不安がある。だから指でいじるのをやめなかったが、一護の一言で気が変わった。

「そんなのいいから、早く入れろよ」

 言葉こそ乱暴だが、色っぽい顔で欲しいと言われれば俺も敵わない。

「……ホントにいいのか? お前の童貞を実の親父に奪われるんだぞ?」
「親父だからいいんだよ。他の奴なんかとしたくない」
「分かった。じゃあ、マジで入れる」

 俺のそこは何の刺激も与えていないのに先走りの蜜を溢れさせていた。それ気づいた一護にエロいと指摘され、苦笑する。

「お前の表情のエロさに比べれば可愛いもんだ」
「はっ!?」

 すでに準備万端のそれを、エロい表情をしているという自覚のない一護の蕾にあてがう。

「やっ……」

 ゆっくりと体内に侵入していくに連れ、一護の表情が険しくなる。指より太くて大きいそれはやっぱ想像以上にキツかったらしい。

「痛くねえか?」
「大丈夫っ」
「息は止めないほうがいい」

 入れる俺も結構きつかった。女に入れるときよりもひだがそれの侵入を阻んで――だがその締めつけが最高に気持ちいい。

「いっ……!」

 苦悶の声を上げた一護に俺は一旦止まる。

「いっぺん抜くか?」
「いい……そのまま」

 あと少しで根元まで入り切るっつーところでじっと動かぬまま、一護のそこが慣れるのを待った。無理して切れ痔にでもなったら大変だからな。

「も、いいよ。奥まで」

 来て、と誘う声に俺はようやく最後の数センチを挿入する。

「んあっ……」

 今の表情、最高にいい。苦悶の中に儚げな色を混ぜた、なんとも萌え心くすぐる表情。

「お前ん中、すげえあったけえ」

 すっかり乾いてしまった唇と唇を重ね、ゆっくりと腰を動かす。
 少し動いただけで感じる確かな刺激。女の中より断然気持ちいいそこを貪るように掘った。

「ぁっ、ぁっ、ぁあ……」

 一護のすべてを支配してしまいたい、俺だけのものにしたい。我ままな気持ちを独占欲が渦巻く心が解放されて、すでに歯止めが効かなくなっていた。

「ぁんっ…はあ……んぁっ」

 徐々に滑りやすくなってきたのはたぶん俺の先走りの蜜のおかげだ。滑りやすくなったっつっても女のみたいに内分泌液が出るわけじゃねえからまだ少し動きにくいが。

「ぁっ、んっ」

 一度一護の身体を抱き起こし、ももに乗せて動いてみる。すると一護は自分から腰を動かし出して、その姿があんまりにも卑猥ひわいなもんだから顔がニヤけてしまう。
 ああ、俺のすべてをこいつの仲にぶちまけてえ。急にそんな射精したい衝動に駆られた。

「一護っ」

 絶え間なく喘ぎを漏らす口を口で塞ぎ、舌を絡ませる。

「んっ……」

 銀糸を引いて唇が触れる瞬間、いやらしい表情をした一護の目と目が合って、どちらともなくまた吸い寄せられるようにキスをした。

「あっ……親父っ……」

 俺の背中に強くしがみついた一護が喘ぎに混ぜえて何度も俺を呼ぶ。その声は行為の淫らさを表すように甘ったるく、それに意識を奪われて返事を返せなかった。

「ぁあっ……ぁんっ、あ……」

 俺はそのまま仰向けに寝て一護の卑猥な姿を眺める。身体に出入りする俺のモノと、動くたびに上下に揺れる一護のモノ――繋がっていることの嬉しさを実感する半面で自分たちのヤってることのエロさを今更ながら思い知った。

「あんま動くとイっちまうぞ」
「いいぜっ。俺の中で、出せよ」

 初めてでいきなり中出しか。まあ俺は別にいいんだが。
 押し寄せてくる快感の波をひしひしと覚えつつ、俺は上下に揺れ動く一護のモノを扱く。数時間前に一護イった割にそこは蜜を溢れさせて二度目の絶頂を待ち望んでいた。

「ああっ……気持ちいっ……親父っ」
「あん?」

 イきたい、と一護は言った。だけど俺は懇願するその声をもう一度聞きたくて、

「聞こえねえな。なんだって?」

 そんな意地悪を仕掛けてやる。

「莫迦っ、聞こえたくせに! イかせろつったんだよ!」
「イかせてください、だろ?」

 怒りと悔しさを混合した目を向けて、一護は半ばやけくそになりながら羞恥に満ちた台詞を口にする。

「イかせて下さい」
「分かった。イかせてやる」

 恥ずかしさで苺みたいに赤くなった一護が最高に可愛かった。
 そして希望どおりに、俺は扱く手を強めてこいつをイかせるのに専念する。

「やべっ……近いかも」

 そりゃ、あんだけ激しく揺れてりゃ限界も近くなるわな。
 いっそう激しくなった喘ぎに扱く手を強める。

「あっ! イくっ……も、出る……あっ――」

 一護のモノから白い液体がほとばしると同時に、俺を包み込んだ穴がぎゅっと締まってそのまま中に出してしまった。久々の中出しは最高に気持ちよくて、相手が一護だから余計にそう思う。
 快感の余韻も束の間のこと、すぐに脱力感が全身に満ちて俺は一護の身体に倒れこんだ。

「はあ……」
「ふう……」

 穴に入れたままのモノを引き抜き、肩で息をしている一護の頭を撫でると、力のない腕が背中に回ってくる。

「……親父」
「あん?」
「浮気すんなよ」
「ばーか。するわけねえだろ」

 この世で俺が性的な意味合いを含めて愛せるのはお前だけだから。ようやく掴んだ大事な宝から目を逸らすわけがない。それにこれ以上の宝なんかどこにも存在しねえから。

「愛してるぜ、一護」

 腕の中に抱き込んだ俺の宝は、「俺も」と小さく漏らして静かに眠りについた。でもきっとこいつの「愛してる」はまだ蕾程度で、他に魅かれるものがあればそっちに気がいってしまうかもしれない。だから俺はその気持ちがいつか花を咲かせるくらいに成長するようしっかり抱きしめて、半端に開いた唇に自分のそれを重ねた。



終わり


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