05. 生徒と風呂に入るなんて初めてだ 「ちょっと先生、興奮しすぎですって!」 キョンの台詞にすっかり有頂天になってしまった俺は、やつの身体を抱きしめるだけに留まらず、抵抗してこないのをいいことに頬ずりまでかましてやった。相談に乗ってやったんだから、それくらいのスキンシップは赦してくれてもいいだろ? 「ってか先生、なんか汗臭いっすよ」 「マジか!?」 慌てて自分の腕に鼻を押し当ててみると、確かに酸っぱい臭いがする。そういえばまだ風呂に入ってなかったな。 「そう言うお前こそ少し汗臭かったぞ」 「たぶん、風呂に入らず家からここまで歩いてきて、汗掻いたんだと思います」 「なら一緒に入るか?」 え、とキョンは困ったような顔をする。 「相談に乗ってやったんだから、背中くらい流してくれてもいいだろ?」 「あ……なるほど」 むしろ相談しに来てくれてありがとう、というのが本心だが、せっかくのキョンとの入浴チャンスを逃すわけにはいかない。 「でも男二人で一般家庭の風呂なんて狭いでしょう?」 「それがな、このマンションの風呂はちと広いんだ。だから大丈夫」 でも、となおも遠慮しようとするキョン。ここまで頑なに拒否するということは、よほど自分の身体に自信がないのだろうか? 身体っつーか、むしろ下半身? このままじゃ別々に入る流れになってしまうと察した俺は、おもむろにキョンのTシャツに手をかけた。 「ちょっとー! 脱がさないでくださいよ! ベルトはずさないで!」 「ここまで脱いだんだから、いっそ全部脱いでとっとと風呂行くぞ」 「脱いでるんじゃなくて、先生が脱がしてるんでしょう! 一緒に入りますから、とりあえずパンツから手を離してください!」 ふぅ、ようやく観念しやがったか。パンツ一枚というあられもない姿になってしまったキョンは、恥らうように身体を丸めて上半身を隠す。何それ可愛い。つい二時間ほど前に抜いたばかりの俺のシンボルが再び元気になってしまいそうだ。 「やっぱし細いな、お前」 膝を抱える二の腕には筋肉の盛り上がりなど見られない。まあ、運動部でもなければ高校男子の身体なんてこんなもんか。 脱衣所に着いてもキョンはなかなかパンツを脱ごうとしなかった。これはあれか? 俺がまだ一枚も服を脱いでないから、自分一人だけ全裸になるのが恥ずかしいのか? そう思って俺は身に着けているものをぱぱっと脱ぎ捨て、生まれたままの姿を曝け出す。 「筋肉すごいっすね」 「筋トレが趣味みたいなもんだからな」 軽くポージングを決めてやると、キョンは噴出しやがった。その隙にやつの質素なトランクスを足元までずり下げる。 「ちょっと!」 「お前がさっさと脱がないのが悪い」 目の前に顔を出したキョンのシンボルは、大きくもなければ小さくもなく、まるで本人の平凡さを象徴するかのようなサイズだった。下生えはどちらかというと薄く、玉は夏の暑さに辟易しているかのようにだらりと垂れている。ちなみに皮はちゃんと剥けていた。 「別に恥ずかしがることじゃねーと思うけどな〜。男同士だし」 いますぐにでもむしゃぶりつきたくなる衝動を必死に抑え、思わず勃起してしまわないうちに風呂場に入ることにした。 「先にお前の髪と身体洗ってやるから、そこに座れ」 「自分で洗いますって!」 「遠慮すんなよ」 渋々といった感じで風呂椅子に腰を下ろしたキョンの頭に、俺は湯をばさりとかけてやる。 シャンプーをつけて触れた髪はさらさらしていた。もっと短く梳いてワックスで立ててやったら、いったいどんな感じになるだろう? 初めて出会ったときからずっとこんなぺちゃんこな髪型だったから想像もつかないな。 丁寧に洗ってやったあと、泡を湯で流して、今度はスポンジで身体を綺麗にしていく。 「なんかソープランドみたいだな」 行ったことなんてないけど、という台詞はあえて言わないでおこう。 「一応教師なんですから、生徒の前でそんなこと言わないでくださいよ」 ごもっともだ。PTAや校長なんかに知られた日には緊急会議が行われた上、悪ければクビなんてこともありえなくない。 「お客さん、どの辺が感じるんですか〜? この辺かな〜?」 そんな危機と背中合わせの状況と知りながら、俺はおもむろにスポンジをキョンの乳首に滑らせた。 「ちょっとこら、変態教師!」 「変態で結構」 しかしあんまり執拗に乳首攻めなんてやっていると、キョンより先に俺のほうが勃起してしまいそうだったので、ここらでやめておいたほうがいいだろう。生徒の身体触ってチンコ勃ててる教師なんてさすがのキョンもドン引きだろうしな。 「チンコは自分で洗えよ」 「言われなくてもわかってます」 一通り洗い終え、泡を流したら洗う側と洗われる側を交代だ。 キョンは最初、遠慮がちに俺の髪に触れ、軽い力で頭皮を刺激してくる。 「天辺のほうが痒い」 「うっす」 人に髪を洗ってもらうってのは実に気持ちいいな。ましてや洗ってくれるのが俺の大好きなキョンともなると、触れてくる指先を強く意識してしまい、なんだかゾクゾクしてしまう。 続いては身体だ。泡だったスポンジが背中に押し当てられ、ゆっくりと擦っていく。それから首、腕、胸と上から順に下りてきて、下腹部を通りすぎるかと思いきや、細い指が項垂れた鎌首に触れてきた。 「ってキョン!」 「相談に乗ってくれたお礼です」 いやいやいや、いくらお礼と言ってもノンケが他人のチンコなんて触らないだろ。 最初は少し濃い目の陰毛を、髪を洗う要領で洗い、そのまま亀頭に指の腹を滑らせてきた。カリと竿の溝を擦る指は丁寧なものだったが、敏感なそこは柔らかな刺激も快感だと捉えてしまい、少しずつ容積を増していく。 「ストップ! ストップ!」 このままじゃキョンの手の中でフル勃起してしまう。危機をいち早く察知した俺は慌ててキョンの手を引き剥がした。 「半勃ちですね」 「うるせーよ」 不敵な笑みを浮かべたキョンを鏡越しに一瞥し、さっさと下半身を洗うよう促す。でないといい加減俺の理性が持たなくなってしまうからな。 そのあとはそれぞれ自分の顔を洗い、二人一緒に湯船に浸かる。最初に言った、浴槽が広いという話は決してキョンを誘い入れるための虚言ではなく、実際に大人の男二人でも少し余裕があるくらいに広い。 「生徒と風呂に入るなんて初めてだ」 「意外ですね。ハンド部の合宿で一緒に入ったりしないんですか?」 「あいつらは顧問なんかと一緒に入りたくないだろう。だからやつらが上がってから入ることにしてる」 人数も多いし、なんと言っても裸を見たくなるような好みの男子がいないからな。 「俺もまさか担任の先生と風呂に入る日が来るなんて思ってなかったっすよ」 「まあ、普通はそんな機会ないからな。どんな気分だ?」 「なんか不思議っすね。もっと緊張するものかと思ってたけど、結構落ち着いてます」 そりゃよかった。さっきから結構積極的に身体触りにいってたから、貞操の危機でも感じていないかと少し不安に思っていた。 「入る前はあんなに嫌がってたのにな」 「一度脱いでしまえばなんとやらですよ。先生の脱ぎっぷりもよかったですし、恥ずかしがってるのも馬鹿らしくなりました」 俺の作戦勝ちと言ったところか。 「ところでキョン、お前週に何回オナニーする?」 そんな話題を投下した理由は興味本位以外の何物でもない。いささか唐突かとも思ったが、こいつが俺に対して変な警戒心を抱いてないこともわかったし、いい加減懐柔されてきた頃合いだろう。 「いきなりですね……。そこはプライベートゾーンでしょ?」 「そのくらいダチとだって話すだろ? 確かに俺はダチじゃねーけど、同じ男なんだからそういう話もしたくなるんだよ」 オナニー談義で盛り上がるような歳じゃないことは重々承知しているが、男はいくつになっても下ネタが大好きな生き物だ。 キョンは言おうか否か迷うように視線をさまよわせたあと、苦笑とともに俺を見上げた。 「ほぼ毎日っすけど」 「男子高校生たるもの、やっぱりそうだよな〜」 「そういう先生はどうなんですか?」 「俺もほぼ毎日だが?」 キョンは軽く噴出した。 「先生はもう高校生じゃないでしょう?」 「うるせーな。まだまだ若いってことだよ。それに独り身だしな」 すいません、と謝罪しながらも笑い続けるキョンに軽くデコピンをくらわせ、俺はしばらく湯に包まれた感覚を味わう。いったいどんなものをオカズにし、どんなふうにオナニーするのか訊きたいところだったが、こいつが一人でしているのを想像すると勃起しそうだったのでやめておいた。 キョンもひとしきり笑うと同じように黙り込み、二人の間に心地いい沈黙が舞い下りる。密かに触れ合った足の感触を少し意識しながら、それは浴槽を出るまで続くのだった。 続く…… |