04.


 ごつくてザラザラしてて、とてもじゃねえけど綺麗とは言えねえ手をしているのに、岡部の触り方はどこまでも優しかった。後頭部を撫でるのも、チンコを揉むのも、腫れ物にでも触るかのような慎重さが窺える。
 気持ちいいけど、そんな触り方じゃどこか物足りないと感じた俺は、パンツの中に手を忍ばせて岡部のチンコを直に触った。すると岡部はそれに答えるように俺のケツを強く揉みしだき始める。

「エロガキめ。俺にもっと激しくしてほしくて、生でチンコ触りやがって」

 自分の意思が見透かされたことに恥じらいなんて感じることなく、俺はにやりと笑ってやる。

「先生だって、エロいほうが好きだろ?」
「まあ、な。でも、適度に無知で純粋なほうが上がるんだぜ?」

 岡部もまた悪戯っぽく笑って、俺のパンツを脱がしにかかる。そんで自分のも脱いで俺の上に覆い被さり、硬くなったモノをぐりぐりと擦りつけてきた。

「なあ、ケツも使えんのか?」
「一応は」
「そっか。なら駄目って言ってもあとで入れてやる」

 さっき手で触った感じだと岡部のは結構なデカさをしているはずだ。それが俺のケツにちゃんと入るのか心配になりながらも、受け入れたらどうしようもねえくらいに気持ちよくなると本能がわかっている。

「これだけでもイケそうになるな」

 耳元で吐かれる、乱れた息。それを感じた途端にじんと熱くなった耳朶を岡部は甘く噛んできた。

「ぁっ……」

 裏返った声が思わず零れ、岡部の舌から逃れようと顔の向きを変えても、結局反対側の耳を責められるだけで何も変わらない。しかも今度は逃げられないように頭を押さえられ、くすぐったいような、それでいて気持ちいい感覚を強制的に与え続けられる。

「くすぐってえよっ……も、やめて」

 岡部は聞く耳を持たない状態で、執拗に耳を舐め続ける。空いた手はそっと乳首に触れてきて、指先で優しく擦ってきた。

「すげえ。触る前から乳首勃ってるぞ。ホントエロガキだな」

 そう言いながら今度は乳首を舐め始める。

「しかも遊んでるくせになんでこんな綺麗なピンクなんだよ?」
「し、知らねえしっ……あっ!」

 軽く吸いつかれれば全身が跳ね上がるくらいに感じちまって、覆い被さっている岡部の身体にぶつかるが、もちろんそれで岡部がやめるわけがねえ。舌でそこを責め続けつつ、暇になった手は俺のチンコを弄ぶ。

「ヌルヌルだな〜。そんなに気持ちいいのか?」
「先生だって、さっきから俺の太ももに先走りっぽいものが付いてんだけど」
「おまえがいやらしいから、俺までいやらしくなっちゃったんだよ」
「元からいやらしいくせに……あっ!」

 なんだか俺が悪いみたいな言い方に反論すれば、生意気だと言われて乳首を抓られた。

「ほら、抓っただけでいやらしい声が出る」
「う、うるせー」

 やられっぱなしはなんだか悔しくて、俺は岡部の身体をなんとか押しのけ、その上にシックスナインの形で跨る。
 手で触ったときに感じたとおり、岡部のチンコは普通の人間よりも少しデカかった。二十センチくらいあるんじゃねえかって長さに、指何本分だよっていう太さだ。
 熱くなったそれを口に入れようとするが、大きくて奥まで入れることはできなかった。それでも岡部は気持ちよかったらしく、微かに声を漏らしてゆっくりと腰を動かし始める。
 俺のチンコをフェラすることも忘れちゃいない。最初は舌で亀頭を濡らしていき、ある程度までしたら口で扱く。
 両手は俺のケツを鷲掴みにし、強く揉みしだきながら親指を穴の表面に滑らせてきた。

「んっ……」

 擦られただけなのに、腰がびくりと反応する。それを誤魔化すようにフェラするのに集中すれば、湿った指が少しだけ身体の中に入ってきた。

「あっ!」

 思わず零れた嬌声に自分で恥ずかしくなり、身体を固まらせていると岡部が心配そうに声をかけてくる。

「痛かったか?」
「いや、大丈夫っ……だから、続けて」

 そこを使うのは久々だが、指一本くらいなら何の問題もない。ただ最初の内はやっぱり快感よりも異物感のほうが勝って、身体がどうにも緊張しちまう。岡部もそれを察したのか、突っ込んだ指を動かさずにゆっくりと広がるのを待ってくれた。

「もう、二本にして大丈夫」
「そうか? あんまし無理はすんなよ」

 一本目のときと違って二本目はずいぶんと慎重に侵入してくる。さすがに入る瞬間は少し痛かったが、すぐに解れて更に奥へと受け入れた。そして指は三本に増え、そろそろ本物を入れても大丈夫そうだと思った頃に岡部が切羽詰った声を上げる。

「もう入れていいだろ? いい加減、我慢の限界だ。こんなに度アップでケツなんか見てたらやっぱり犯したくなるな」
「いまの台詞なんかおっさん臭かったっすよ」
「おっさんだからいいんだよ。ほら、こっち向け」

 身体の向きを反対にすると、岡部の目と視線が交わる。どこか野獣めいた獰猛さの滲んだそれに男を感じ、見惚れていると岡部は照れたように苦笑した。

「俺に惚れたか?」
「まだ惚れてねえし……」

 でもなんだか惚れちまうのも時間の問題な気がしてきた。岡部はカッコイイ。どうしようもねえくらいエロいけど、どうしようもねえくらいに優しい。この人なら絶対に幸せにしてくれるって確信しちまうくらい、温かいものが注ぎ込まれてくる。

「そのまま上に乗って、自分で入れてみろ。そのほうがたぶん楽と思うから」

 熱くて硬くて、大きい。サイズ的になんだか入れるのが怖いけど、ひくひくと早く入りたそうに脈打つのを手に感じ、覚悟を決めて自分のケツにそれを宛がう。
 ゆっくりと腰を下ろしていけば、強烈な圧迫感に苦しめられるが、ある程度進むとあとは意外なほどすんなりと入り、根元まですっぽりと飲み込んだ。

「先生のデカくてやばい……」

 慣らすのがよっぽど上手かったのか、痛みがない分じんじんと伝わる快感に意識が集中できる。だが、最初はなんとなく慎重になってゆっくりと腰を動かし、全然平気だとわかれば激しく身体を揺らした。

「うあっ、なんかっ……やばいっ、やばいって」
「俺だってやばい。おまえん中気持ちよすぎて頭真っ白になりそうだ。ケツになんか細工してんのか?」
「してねーし! 先生こそ、チンコに何か細工してんじゃねえのか!? あんっ」

 口答えすれば岡部が自分で腰を動かしてきて、一番奥まで深く貫かれた。

「バーカ。これは列記とした天然ものだ」
「ちょっ……ま、待って! もうちょっと、自分でするからっあっ」
「悪い。もう我慢はできそうにない」

 下から激しく突き上げられ、あまりの気持ちよさに意識が飛びそうになるのを岡部の手を握って抑えながら、自分もまた激しい律動に合わせて腰を振る。
 こんなに気持ちいいセックス、したことねえ。身体の相性がいいって思える相手はいたにはいたけど、比べものにならねえくらいに激しくて、快感のすべてを引きずり出される感覚がした。

「せんせ、激しすぎっ……なんか、出るっ……!」

 一番奥で深く噛み合った瞬間、意識が吹っ飛びかけるくらいの快感がケツから脳に伝わり、それがチンコから白濁となって溢れ出る。いつもはもっと勢いよく射精するんだが、なぜかこのときは飛ばずにドロドロと零れた。

「すげえな。ケツだけでイクやつなんて初めて見た」
「お、俺だって初めての経験なんだけど」

 トコロテンなんてAVの中だけの話だと思っていたけど、真に相性がよければちゃんと現実にあり得るらしい。イったあとなのに俺のチンコはまだびんびんで、ケツももっと刺激がほしいと疼いている。

「続けても大丈夫か? 辛かったらここでやめとくぞ?」
「大丈夫っす。さすがにこんだけで終わりなんて俺も嫌っすよ」

 岡部は上体を起こし、俺の背中を強く抱きしめたままキスをしてくる。そのままゆっくりと腰を動かし始め、対面座位からのセックスの再開となった。

「あっ……あん、あっ、あっ……せんせ、気持ちいい?」
「ああ。トロトロで温かくて気持ちいいぞ」

 掠れた声が耳を撫で、それすらも気持ちいいと身体が反応してしまう。

「せんせ、俺えっちでごめんねっ……こんな、やらしくてごめんっ」
「おまえがえっちだって言うんなら、俺はドスケベだな。谷口が乱れてるのを見て、結構来てる」

 何が来ているのか訊く前に俺は繋がったまま仰向けに寝かされ、岡部が俺の膝を抱える。

「もう滅茶苦茶にしていいか? 破裂寸前なんだよ」

 熱い吐息とともに吐き出された余裕のねえ声。俺の身体で気持ちよくなってくれていることがひどく嬉しくて、何の迷いもなく頷いた。

「先生の好きにして」

 俺が言葉を返した瞬間、岡部は大きく息を吐き出すと、いままで以上に激しく腰を動かし始めた。

「あっあっあっ……あっんっ……ぁぁ」

 繋がった部分がどうしようもねえくらい熱い。本当にケツが壊れちまうんじゃねえかってくらいに激しく犯され、イったばかりの自分のチンコがたちまち絶頂に近くなるのを感じた。

「あんっ、激しすぎっ……あっ」

 肉がぶつかり合う音が部屋に響くくらい奥まで入り込み、それが一気に入り口まで引き戻され、再び深く飲み込まれる。鮮明に感じるその感触に甲高い声を零しながら、もっと気持ちよくなりたくて自分で腰を振った。

「先生っ……」
「その呼び方いいな。すげえ、上がる。もっと呼べよ」
「あっ、岡部せんせっ、せんせっ」
「谷口っ」

 手を伸ばせば、岡部は身体を曲げてキスをしてくる。下半身の動きはすげえ激しいのに、なぜかそのキスは甘くて優しかった。

「谷口、俺のこと好きになれよ。そしたら絶対に幸せにするから」
「なるから! 好きに、なるから! 俺のこと離さないでくれっ」
「そんなこと言われたら、嫌つっても離さなくなるぞ」

 心も身体も、俺の持っているすべてがいま、岡部という一人の男に引き込まれている。そのまま捕まえていてくれたなら、敗れた恋も捨てられなかった想いも全部昇華していくのかもしれねえ。

「中に、出していいか? そろそろ限界だ」
「いい、から。出していいからっ……あっ!」

 俺のチンコが弾けたのと、身体の中に熱いものが叩きつけられる感覚がしたのは、ほぼ同時だった。


 ◆◆◆


「――まさか谷口に先を越されるなんて思ってもみなかったわ」

 待ち合わせの喫茶店にて、俺の顔を見るなり涼宮ハルヒは眉を顰めてそんな一声を放った。

「まあ、俺自身、驚天動地だと思ってるからな」

 キョンの結婚式があった夜、俺はともに酒を交わした涼宮と約束をしていた。互いに恋人ができたら報告し合う、という変な約束。元々涼宮とはそんなに親しい仲ではなかったんだが、あのときは同じ相手に失恋したことからなんだか仲間意識が芽生え、そんな約束を交わしたのだった。

「あ〜、ムカつく! 絶対私のほうが先に恋人つくって、あんたにドンペリでも奢らせようとしてたのに! 私、勝負と名のつくものに負けたことないから、いますっごく悔しいわ」
「いつから勝負になってたんだよ! つーか、ドンペリとかマジ懐的に勘弁してくれ!」

 あの日、俺は岡部の提案を受け入れた。ただ、少し慎重になってその日のうちに返事はせず、三日よく考えてから付き合うことを決意した。
 いままでも俺と付き合いたいと言ってくれた男はいたが、いつも心が動かなかった。キョンに対しての可能性を捨て切れなくて、無駄な期待をしちまって、他の人の気持ちになんか興味がなかったんだ。
 けど、岡部は違った。もちろんキョンが結婚しちまったことも、変わろうと決められた一つの要因になったんだろうけど、それがなくても岡部はどうしようもねえくらいに魅力に溢れていた。男らしくて、優しくて、セックスが上手い。何より俺のことをわかってくれて、心が弱くなったとき電話をすれば、わざわざ車で駆けつけて抱きしめてくれるような人だ。
 そこまでされて、好きにならないほうがおかしいと思わねえか? 見た目もタイプだし、いまのところ非の打ちどころがねえ。
 もちろんずっと一緒に歩いて行けるとも限らねえけどな。もしかしたらどこかで衝突することがあって、その結果別れることもあるのかもしれねえ。でも、もしそうだとしても俺は岡部と一緒にいたいと心の底から思った。
 付き合い始めたのが男だとは伝えたが、相手が岡部であるということは涼宮には伝えてねえ。まさか相手がかつての担任だとは思ってもみねえことだろう。

「実は今日ここに呼んでんだ。もうちょいしたら来るってさっきメールあった」
「私の前で見せつけるつもり!? いや、よく考えたら男同士でいちゃいちゃしてても何も羨ましくないわ」
「そうかよ。ちなみにおまえが知ってるやつだから」
「ってことは、まさか国木田!?」

 ああ、涼宮が知ってる俺の身近な人間と言えば、キョン以外なら国木田だよな〜。

「違うっつの。もっとこう、がっしりしててだな……」
「あ、いま入ってきたの、岡部じゃない?」

 涼宮の指差したほうを見れば、入り口のほうで店内を見回している俺の恋人がいた。岡部は俺たちに気づいてこちらに歩いてくる。

「よう、涼宮。キョンの結婚式以来だな」
「こんにちは。あのときはロクに挨拶もしなくて申し訳ありませんでした。先生、もしかして彼女とここで待ち合わせですか?」
「彼女っつーか、なんっつーか……なあ、谷口。そこは任せるぞ」

 困ったように苦笑した岡部に俺は笑い返す。

「えっとだな、涼宮。紹介しとくぜ」

 この台詞を口にしたら、涼宮はいったいどんなリアクションをするだろうか? 想像するとどうしても笑いが零れちまう。ああ、そういえば悪戯をするときの気分ってこんなだったな。

「俺の恋人の岡部先生だ」

 席の前に突っ立っている男前の紹介をすると、涼宮は飲みかけのコーヒーを盛大に噴出した。




HAPPY END?





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