終. 結婚しよ キスをしながら、俺の心臓は音が聞こえてきそうなほどにバクバクしていた。どうやらこの先のことに対して緊張しているらしい。セックスそのものは別に初めてじゃないんだが、やっぱり相手が自分の想い人となると気持ちの入れようが全然違う。 ジャンの身体を押し倒すのも、なんだか自然と丁寧になってしまう。いつか山小屋で押し倒したときは興奮のあまり雑になってたっけな。今日はちゃんと理性を保ちつつ、ジャンに無理のないようにしよう。ジャンにとってはたぶん初めての体験だろうしな。 「ジャン、男同士ってどうやるか知ってるか?」 「なんとなくはわかってるよ。で、おまえはオレのケツに入れたいんだろ?」 「まあ、そうだな」 「今回は譲ってやる。けど、今度はオレにも入れさせろよ。女役ばっかなんてまっぴらごめんだ」 「……考えておく」 ジャンにケツを掘られるのなんて考えたことないな。そっちの経験がないわけじゃないんだが、ジャン相手だとやっぱり体格的に俺が女役やるなんて想像がつかない。 まあ、いまはそんなことを考える必要なんてないだろう。今回は俺が男役で、初体験のジャンを優しく気持ちよくしてあげなければならない。そのことに集中しよう。 服の裾から手を入れ、ジャンの腹筋を撫でる。そのままその手を上のほうに持っていき、指先で胸の突起を探った。 「……っ」 ざらりとした感触を指に感じた瞬間、ジャンの身体がぴくりと反応した。やっぱり前に触ったときに思ったとおり、そこはジャンの性感帯で間違いないらしい。つーか、そこを弄って感じてくれなきゃ楽しみが半減するところだ。 「服、脱がすぞ?」 「ああ……」 厚手のセーターとその下のワイシャツを取り去れば、細いが引き締まった身体とともに、あの桃色の乳首が露わになった。いつ見ても綺麗な色だ。穢してしまうのが躊躇われるほどだと思う半面、めちゃくちゃに弄ってやりたいという情欲が身体の奥底から湧き上がってくる。 中心のぷくりとした突起を舌で突くと、ジャンの身体が再び跳ねる。俺も大概乳首を責められると結構やばいんだが、ひょっとしたらジャンは俺以上に敏感かもしれない。 「ぁっ……」 ジャンの口から切なげな声が零れた。堪えきれずに思わず零れた、といった感じだ。 もっと聞きたい。もっと感じてほしい。俺に触られ、乱れる姿をもっと見せてくれ。 「あっ!」 乳首に優しく吸い付けば、ジャンはひときわ大きな声を上げた。それを恥ずかしく思ったのか、手で口を押えて声が零れないようにしようとする。 「声、我慢すんなよ。家の人誰もいないんだろ?」 「嫌だ……恥ずかしくて死んじまう」 「俺しか聞いてないから安心しろ。それに責める側としては、声出してよがってくれないと燃えない」 声が出るのを我慢している姿を見るのもいいかもしれないが、やっぱり俺は喘いでいるのを聞きたいな。 乳首を舌で弄りながら、手でズボンのベルトを外していく。そうしてズボンを脱がしてみれば、この間俺がプレゼントしたビキニタイプの下着が露わになった。 「これ、穿いてくれてたんだな」 「穿かなきゃ意味ねえだろうが」 「まあ、そうだな。やっぱりすごく似合っている」 ぴっちりフィットするタイプの下着だから、勃起と先っぽの染みが目立ってなかなかエロい。手で軽く触れてみると、硬い感触と生々しい温度が布越しに伝わってくる。 「ビンビンだな」 「おまえだってさっきからズボンの前側が大変なことになってんぞ」 ジャンの手が恐る恐るといった感じに俺の股間の膨らみに触れ、軽く撫でるように動いた。 俺も指先に力を入れて、先端の辺りをやわやわと揉んでやる。もちろん乳首を舐めるのも忘れない。 「あっ……うっ」 最初は小さかった下着の染みが、先走りのせいでどんどん広がってきている。あんまり汚すのもあれだから、そろそろ脱がしてもいいだろう。俺はジャンの下着のゴムに手をかけ、すっと脱がした。 勃起したジャンのモノを見るのは初めてだ。勃ってもやっぱり形は綺麗なままで、色も初々しく、穢れのないことを証明しているかのようだった。 「ライナーも脱げよ。さっきから一枚も脱いでねえじゃねえか」 そういえばそうだったな。ジャンの身体を弄るのに夢中ですっかり忘れていた。 服を一枚一枚脱いでいる間、ジャンは食い入るように俺の身体を見つめていた。どうやらちゃんと俺の身体に興味があるらしいことに、密かに安堵する。 パンツを脱いでも、いつかのように汚いものを見せるなとは言わなかった。むしろ「すげえ」と感嘆の声を上げ、勃起したそれに直に触れてくる。 「でけえな……それにすげえ熱い」 「興奮するか?」 「……好きなやつの身体に興奮しねえわけねえだろっ」 恥ずかしそうに言いながら、ジャンはそのまま俺のチンコを優しく扱き始める。 「なんかすげえヌルヌルになってんぞ。どんだけ先走り出してんだよ」 ジャンに触られてるってだけでも結構やばいんだ。そのまま扱かれていると、あっという間にイってしまいそうだ。なんとか平常心を保とうとしていると、なんの前触れもなくジャンが俺のそこをぱくりと飲み込んだ。 「あっ」 思わず変な声が零れてしまう。 「お、おいジャン。あんま無理しなくてもいいんだぞ」 「別に無理なんかしてねえよ」 フェラチオの経験なんてまったくないだろうが、ジャンは俺を気持ちよくさせようと、丁寧にあそこを舐めてくれた。正直に言うと、もっと上手いやつなんて腐るほどいるんだが、ジャンがしてくれているという事実だけで五回はイけそうだ。一生懸命にしゃぶってくれている姿が愛おしくて、短い髪の毛を梳くように撫でる。 「ああっ……」 ジャンの頭の動きに合わせて、俺も腰を動かした。さすがに喉の奥まで突っ込むのは躊躇われたが、まさに口を犯しているという感じがして堪らない。 「ジャン……もう、いい。ありがとう。気持ちよかった」 「なんだよ。別にイってくれてもよかったんだぜ?」 「いや、なんかもったいない気がしてな」 どうせなら全部ジャンの中にぶっ放したいしな。 「今度は俺がジャンのをしゃぶってやるよ」 しばらく放置していたせいか、ジャンのチンコは少しだけ元気をなくしていた。だが、それも指先で我慢汁を塗り広げた途端、すぐに元の硬さを取り戻す。 俺は玉袋を優しく揉みながら、まずは裏筋をゆっくり舐めた。それから亀頭全体をぱくりと咥え、カチカチのそれを唇で締め上げる。 「うあっ……」 感度は良好だ。大げさに湿った音を立てながら頭を動かすたび、ジャンは甘さを孕んだ声を漏らした。 「ぁっ……はあ……あっ……ラ、ライナーっ」 ジャンは俺の腕を掴む。端正な顔立ちは切なげに歪み、その艶めかしさに俺はどうにかなってしまいそうだった。 俺の唾液でぐっしょり濡れた亀頭を時々手で扱きながら、舌で鈴口からカリまでをじっくり舐める。それからまた咥え込んで、ジュポジュポと吸い付きながらしゃぶった。 「ライナーっ、イきそうなんだけど……」 「一回出しとくか?」 無言で頷いたのを確認すると、俺はジャンにラストスパートの扱きをくれてやる。 俺の腕を握る力が強くなった。どうやら限界が近いらしい。 「あっ、あぁ……イクっ、あっ!」 そして身体が硬直し、熱い精液が勢いよく飛び出した。すぐに独特の臭いが部屋に漂い始め、イカせた俺のほうがなんだかくらくらしてしまいそうだった。 手の中のジャンのチンコは、まだビクンビクンと脈打ちながら白濁を溢れさせている。それを手近にあったティッシュで拭いてやり、ベトベトになった自分の手も綺麗にして、俺は息を乱したジャンの隣に寝転がった。 「気持ちよかったか?」 「ああ。かなりやばかった」 「そっか。ジャンもイったことだし、少し休憩しよう」 「おまえはいいのかよ?」 「ああ、まだ大丈夫だ。それにイったばかりの身体を弄られんのは辛いだろ?」 「そうだな……」 そこからはしばらく、抱き合ってキスをしながらジャンの身体が回復するのを待つ。その間俺のチンコは勃ちっぱなしで、ドロドロと溢れ出る我慢汁がジャンの身体を絶えず汚していた。 「――そろそろいいか?」 唇を離して訊ねると、ジャンは静かに頷いた。 セックスをするつもりで来たわけじゃなかったが、こういう展開になることも考えて、一応オイルは持ってきている。それを鞄の中から取り出し、自分の掌に少し垂らした。 「痛かったらすぐに言うんだぞ?」 「ああ……」 膝を抱えさせると、ジャンの後ろの窄まりが露わになる。毛もなくつるつるとしていて、早くそこに入りたいとでも言うかのように、自分のチンコが反応した。 入り口に指を差し込めば、心地いいような熱が伝わってくる。しかし、すごく狭いな。これはじっくりほぐしてやらないと、俺のを入れるのは不可能だろう。 「ふっ……」 ゆっくりと奥に進めていくと、ジャンが辛そうに息を途切れさせた。 「息止めたら余計に辛いぞ。ゆっくり呼吸してみろ」 「わ、わかった……」 指が根元まですっぽり埋まったところで、そのまま穴を広げるようにゆっくりと掻き回す。痛くはないようだが、慣れない感覚にジャンはどうすればいいのかわからないようだった。俺も初めてケツを弄られたときはそんなだったっけな。気持ちいというよりは、妙な不快感があったような覚えがある。けど、ここ――指の関節を少し曲げて上のほうを弄られると、途端に気持ちよくなったのをはっきりと覚えている。 「うぁ……」 案の定、ジャンもそこを責められると身体をピクリと震わせた。 「ここ気持ちいいだろう?」 「なんかすげえゾクゾクする……」 しばらくそこばかりを重点的に責めてやると、ジャンのあそこが触ってもないのに大きくなってきた。人によっては後ろがまったく感じないこともあるらしいが、ジャンは幸いにもいけるようだ。 適度にほぐれてきたところで、今度は指を一本増やし、また中を撹拌する。さすがに三本目は少し痛がったが、それも次第に馴染み始め、最初に比べるとずいぶんと穴が広がっていた。 「ジャン……」 「いいぜ、来いよ。心の準備はできてる」 「そうか。なら遠慮なく入れさせてもらうぞ」 ついにこのときが来たか。何度も妄想してきた、ジャンとのセックスの最終段階。まさか現実のものになるなんて、一か月前の俺なら考えられなかっただろう。 痛いほどにいきり勃った自分のチンコにローションを塗り、散々指で慣らしてやった窄まりにそれを宛がう。なんだかそれだけでもイってしまいそうだった。 ケツに入れるのだって、いままでに何度もしてきたことだ。それなのになんだか緊張してしまって、まるで初めての体験をするかのような感覚がする。やっぱりそれは、自分の気持ちが入っているか、そうでないかの違いなんだろう。ジャンはいままでに出会ったどんな男よりも特別だということだ。 「うっ……」 先端が少しだけ中に入った。途端にジャンは苦しそうな顔をする。 「ジャン、さっきみたいにちゃんと息するんだ」 「わ、わかってるけど……なんか指のときと全然違うぞ」 まあ、指三本よりも太さがあるからな。いっそ四本で慣らしておけばよかったか? 「痛いか?」 「いや、まだ大丈夫だ……」 不安そうな顔をするジャンの手を、俺はそっと握ってやる。力なく握り返してきた感触を愛おしく思いながら、腰を少しずつ前に進めていく。 「う、あ……」 温かくて、ヌルヌルして、最高に気持ちいい。思わず腰を激しく振りたくなるが、さすがにまだジャンにはきついだろう。そもそもまだ最奥にも達してないしな。 繋がった部分を見れば、あともう少しで全部入り切りそうだった。ジャンも痛そうではないし、この分だとたぶん一気に入れても大丈夫だろうが、一応慎重に残り数センチを埋めていった。 「はあ……全部、入った」 いままでに体験したことのないような締めつけだ。たぶん、俺がいままでに相手をしてきたお兄さんたちは、経験豊富でそこが緩んでいたんだろう。それはそれで気持ちよかったが、ジャンの中は吸いつかれている感覚が強烈で、比べ物にならないほどに気持ちいい。 「く、苦しい……」 「痛くはないのか?」 「ああ。けど、おまえのがデカすぎて結構きつい」 「じゃあ、やめとくか? 手でしてくれたっていいんだぞ?」 「馬鹿っ……別にやめろとは言ってねえだろ。このまま続けろよ」 「そうか。じゃあ、もう動かすぞ」 あんまり我慢は続きそうにないしな。腰がうずうずして、変になっちまいそうだ。 俺はゆっくりと律動を始める。するとジャンは俺の手を強く握り込み、それを自分の唇に押し当てた。おい、なんだそれ。可愛すぎて……めちゃくちゃにしてやりたくなるじゃないか。 けど、やっぱり暴れるにはまだ早いだろう。痛みがなさそうだとはいえ、完全に馴染んでいるわけじゃない。もう少しだけ我慢が必要なようだ。 「ぁっ……くっ」 奥を擦るたび、ジャンは気持ちよさそうな声を漏らす。俺にとってその声は媚薬のようなものだ。聞くたびに理性が少しずつ削り取られていくような感覚がしていた。 「ライナーっ」 「なんだ?」 「奥が、熱い。これ、どうにかしろよっ」 「どうにかって……」 「もっと動かせ。そしたらたぶん、当たるから……」 「でも、いいのか? たぶんまだきついと思うぞ」 「焦らされるほうがもっときついんだよっ。だからもっと激しくしやがれ」 「わかった……」 ジャンがそういうなら、我慢をやめて本能のままに腰を振ってやろう。 「もうどうなったって知らないぞ?」 「おまえに壊されるんだったら、文句なんてねえよ。ちゃんと……す、好きなんだからな」 台詞の後半はぼそりと呟くような調子だったが、俺はそれを聞き逃したりはしなかった。そしてそれを聞いた瞬間に、俺の中のスイッチが完全に入ってしまう。 俺はジャンの手を離し、今度は太ももを腕で掴むと、一気に腰の動きを速くする。ジャンの身体を労わる気遣いも、好きなやつと繋がった喜びも、一瞬にしてどこかに吹き飛んでしまったようだ。 グチュグチュと、動かすたびにいやらしい音が部屋に響き渡った。それと一緒に聞こえてくるジャンの喘ぎ声が、理性の吹き飛んだ俺を増々煽る。 「ひっ、あっ、あっ……うぁっ」 いつもは男らしくて鋭い声をしているくせに、喘ぎ声はどこまでも甘くて柔らかい。よく悪人面だのと言われている顔も、いまは快感に襲われて蕩け切っている。 「あ、熱いとこに当たって、気持ちいい……」 「俺も死ぬほど気持ちいぞ。おまえの中、グチョグチョですげえ締めつけてくる」 「んなこと、実況してんじゃねえよ……あっ!」 襞を捲るような動きをすれば、ジャンは半狂乱になって喘いだ。こんなふうにジャンを乱れさせているのが他ならない自分自身なのかと思うと、嬉しいのと同時にすげえ征服感に満たされる。 ふと結合部に目をやると、激しく動いたせいでオイルが白く泡立っていた。まるでそこから精液が溢れ出しているようだと思いながら、ジャンの身体の中を貪っていく。 「ジャン……」 名前を呼ぶと、とろんとした瞳と目が合った。キスをしたい。そう言っているような気がして、俺はそのままジャンの身体に覆い被さり、唇を重ねた。 「んっ……あっ」 後ろを犯しているのと同じような感覚で、口の中も舌で蹂躙してやる。舌を絡ませ、軽く噛み、そして下唇に吸いつく。 「ジャン……好きだ」 「あっ、お、俺も……ライナーが好きっ」 喘ぎながらも、懸命に想いを伝えてくれるジャンが愛おしくて、その身体をきつく抱きしめる。抱きしめながら、ピストンするスピードは決して緩めない。入れて、抜いて、擦りつけて、また入れて――本能のままにジャンを犯し続けた。 切なげに眉を寄せたジャンは、時々声も出ないようで、俺の背中を強く掴んでは唇を噛んでいた。そのしぐさにぞわりと背筋が逆立ち、すっかり忘れていた絶頂感が一気に舞い戻ってくる。 一人でイクのもなんだから、ジャンもイかせてやろう。俺は先走りでヌルヌルになったジャンのチンコを掴み、激しく扱いた。ついでに乳首も弄ってやれば、ジャンは驚いたように目を瞠った。 「あっ、おい! それ、やめっ……変になるから、やめろって!」 「変になればいいだろ。こっちはとっくに、おかしくなってる」 いろいろともう限界だ。いつ爆発してもおかしくない。 「あっ、イク、イク……あっ!」 先にイったのはジャンのほうだった。身体がびくりと痙攣したかと思うと、赤くなった先端から白濁が、一発目に負けないくらいの勢いで飛び出した。 それを見た俺もすぐに限界が訪れ、最高潮の快感に襲われると同時にジャンの中に精のすべてを吐き出した。 ドクドクと自分のチンコが脈打ちながら、精液をジャンの中に注ぎ込む感覚がしばらく続く。互いに息がすっかり荒くなっていて、それが落ち着くのを抱き合いながら待った。 「……なんか、すげえやばかった」 ジャンがぽつりとそう呟く。 「俺も死ぬほど気持ちよかったぞ」 こんなに気持ちよくて、心まで満たされたセックスは初めてだ。想像していたよりもずっと甘くて、温かくて、自分の感情が溢れ出すのを感じた。 「また、しような」 「ああ。今度はオレにも男役やらせろよ」 「おう。あんまり早くイかないよう、鍛えておけよ」 「うっせえ」 息が整い始めて、ようやく嬉しさが込み上げてくる。それを分け合うかのように、そっとキスを交わした。 ジャンは可愛くてカッコイイ。 それは世界の常識であると、俺ことライナー・ブラウンは割と本気で思っている。 ジャンの魅力を上げればきりがねえ。 でも一番はやっぱりあの顔かな。馬面なんて馬鹿にするやつもいるけど、104期生の中じゃ一番男前な面してるじゃねえか。あのきりっとした目とか最高に好きだな。 それからあの胸から腰にかけてのライン。すきっとして細い印象を受けるが、胸や腹にはちゃんと筋肉がついていて、それが俺にはずいぶんと扇情的に感じられた。 あとはケツだな。ズボンの上からじゃあんましわかんねえけど、あいつのケツってプリッとしてて触り心地がよさそうなんだ。いったい何度あのケツに手を伸ばしかけただろうか? そんなジャンに恋をしてるなって気づいたのは、いったいいつだったかもう覚えてねえ。いつの間にか強烈に好きになっていて、いつの間にかオナニーのオカズが常時ジャンになっていて、そしていつの間にかあいつを俺だけのものにしたいと思うようになっていた。 そんな大好きなジャンはいま、俺の腕の中にいる。心地いい体温を身体いっぱいに感じながら、どうしようもないくらいの幸せを噛み締める。 叶うはずなんてないと思っていた恋。馬鹿な恋をしてしまったと、何度後悔したことだろう。だが、それはちゃんと成就した。ジャンは俺と同じ気持ちを返してくれ、二人の間にはちゃんと愛が生まれた。 終わりよければすべてよしというが、まさにそのとおりだと俺は思う。苦しい思いをしたことや、嫉妬心や焦りに苛まれたのだって、いま感じている幸せに比べればなんということもないからな。 「ジャン」 「なんだよ?」 「結婚しよ」 |