やあ、ジャン。隣いいかい?

 僕は君の正直すぎるところ、決して嫌いじゃないよ。僕はつい建前ばかり口にしてしまうから、君のそういうところが少し羨ましいとも思う。

 それにジャンと一緒なら、きっと旅もより楽しいものになると思う。

 ジャンの指示は正しかった。だから僕は飛び出し、こうして生きている。

 僕のこと、忘れないでくれよ。

 ジャン、大好きだ。

 また逢おう。



 絶対、巨人を駆逐してみせる。

 それでおまえの分も外の世界をしっかりと見てきてやるよ。

 土産話、たんまり持って行ってやるからな。

 だからそれまで……

 それまで、安らかに眠っていてくれ。


 ◆◆◆


 やっぱりな、と目覚めたジャンは心の中で呟いた。それは起きたら自分が泣いていたことに対してでもあるし、マルコと再会するという甘い夢を見ていたことに対してでもある。
 マルコはもう、どこにもいない。今日もそれは変わらない。
 一日が始まるたびにそれを実感し、いつも世界に絶望していた。だが今日は少し、いつもと気持ちが違う。
 確かにこの世界で彼に逢うことはもうできないのかもしれない。だが、自分が生涯を終えてあちらの世界に行ってしまったとき、胸を張って彼に逢えるように立派に生きよう。そして彼にしてやるのだ。まだ見ぬ外の世界の話を。そのためにもいまから力をつけ、巨人どもを一匹残らず駆逐しなければならない。そんな思いがジャンの胸の中に芽生えていた。

(マルコ……おまえの分も、オレは精一杯生きてやるよ。だから、待っててくれ)

 そうとなればさっそく朝の自主訓練でもしようか。確かエレンが朝はブレードの扱いを練習しているといっていたから、自分も一緒にやってみよう。その前にまずは顔を洗わなければと、ジャンはベッドから降りようとする。
 そのとき、枕元に何か白いものが置かれているのに気づいて、ジャンは何気なくそちらに視線を向けた。

 フリージアの花、だった。


終わり





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